「鳥かごの鳥」にしておく理由、なっておく理由。



鳥かごに入れておかないときっとこの鳥は逃げていくだろう、と飼い主は考えます。
このかごがなければ自分は一人でやっていけないだろう、と鳥は考えます。
しかし、その関係はお互いにお互いを束縛する共依存を作るのです。

相手を束縛して自由を奪っている状態のことを「鳥かごの中の鳥」という表現をします。
パートナーシップなどでよく使われます。

鳥かごの鳥にしておく理由。すなわち、相手を束縛する理由。
それは「怖れ、不安」がもっとも多いのです。


鳥かごに入れておかないと鳥は逃げてしまうと思っています。
そうして束縛し、コントロールしていないと、逃げられてしまうと思っているんです。
それくらい自分には価値がないから、魅力に自信がないから、愛されてると思えないから。
もちろん、鳥に対してそんな思いは出しません。
偉そうに、高圧的に、冷たく、それが当然であるかのように振舞うでしょう。

でも、もし、このかごがなかったら、きっとこの鳥はここに居ないだろう、という不安を強く持っているのです。

一方、鳥かごに入っている鳥は自分を自由を奪われた「鳥」として扱っています。
それくらい力が無い、自由がない、そして、外の世界に出ても一人ではやっていけないだろう、という不安を持っています。
だから、鳥でいることを受け入れます。

そして、飼い主に対して従順であるふりをしつつも、そこに捕らわれている理不尽さを訴えます。
恐怖を与えられることによって、仕方なく自分はここにいるのだ、と主張する者もいます。

こうしてお互いの関係性はバランスが保たれて成り立っているのです。

もし、鳥が自分は鳥ではなく人間であることに気付き、自立し始めることを飼い主は怖れます。
だから、飼い主はいつも自分が主人であることを鳥に主張しなければいけません。
それには膨大なエネルギーを要するので、やがて隙がたくさん生まれます。

鳥にとっては人間に戻るチャンスです。
しかし、そこで葛藤が出てくるのです。
長年このかごの中で守られて生きてきた自分が外の世界に行って大丈夫なのか?生きられるのか?
だから、鳥かごからもう少し広い・・・たとえば、部屋の中での放し飼いを望んだりします。

しかし、飼い主からすれば、そんな取引には応じられません。
もし、窓が少しでも空いていれば、あるいは、自分が部屋に出入りするためにドアを開ければ、鳥は逃げて行く、と思っているからです。

そして、鳥かごを巡る攻防は続きます。

これは“共依存”になります。
“お互いにお互いを”束縛して自由を奪っている状態。
飼い主は常々鳥かごに意識を向けなければならず、鳥は常に飼い主に意識を向けなけれならないからです。

鳥かごから鳥を出して、自由に空を羽ばたかせてあげます。
それでもなお、自分のところに戻って来るであろうことを信頼することが飼い主には求められます。

鳥は飼い主の手を離れて自由に空を飛び回り、そこで起こり得る危険を自分で処理できる力が十分あることに気付く必要があります。

そうして、「自分」と向き合い始めたときに、お互いに鳥かごを手放すことができるのです。
勇気は要りますが、でも、自分の人生を生きるためには必要なことではないでしょうか。

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