自分はもう幸せになってはいけない、と思い込みを手放したお話



明日発売の『いつも自分のせいにする罪悪感がすーっと消えてなくなる本』にも掲載されている罪悪感とその癒しの物語を今日は紹介させていただこうと思います。

今回の本もできるだけ多くの事例をご紹介して、罪悪感の正体と、それをどう癒していけばいいのかを“体感”していただけるように心がけました。
自分自身に重ね合わせて読んで頂ければ幸いです。

本に掲載されているのは校正済みの文章で、こちらは私が最初に書いた原文そのままなので、ちょっと違うかと思いますが、その違いも含めて楽しんで頂ければと思います。

ある女性の恋愛相談のケースです。
彼女は「こんな私はもう幸せになっちゃいけないような気がするんです」と開口一番おっしゃいました。どういうことかをお聞きするとこんな話をしてくださったのです。

彼女には4年付き合っていた彼氏がいて、結婚も約束していたのですが、数か月前に彼女から別れを告げたのです。「すごくいい人で、優しくて、私を何でも受け止めてくれた人なのに、彼をひどく傷つけてしまったのです。そんな私は幸せになっちゃいけないんです。」と罪悪感を抱えていらっしゃるのです。
さらに話を聴いてみると罪悪感を覚えるのは、それまでの関係性においてもいろいろあったそうです。

優しくていい人である彼に甘えて、何度も感情をぶつけてしまったこと。
彼がせっかく用意してくれたプレゼントを目の前で捨ててしまったこと。
デートを自分の気分で何度もドタキャンしたこと。
会いたくなったら仕事中でも呼び出したこと。
彼が作ってくれた料理に箸をつけることもせずにダメ出ししたこと。
付き合い始めの頃は彼に内緒で何度も元カレに会っていたこと。
彼が海外出張中に男遊びをしていたこと。
そして、結婚を約束し、彼の両親にも挨拶に行ったのに、自分からそれを壊してしまったこと。

彼女の「懺悔」は際限なく続きました。
そして、「彼が幸せになるまでは私は幸せになっちゃいけない」と思い込むようになったのです。
そんな彼女にふと思ったことを私は聞いてみました。
「でも、あなたとは相性が合わなかったんじゃない?けっこう退屈だったんじゃないの?」と聞いてみました。

「えっ?ええ、まあ。確かに彼は優しいけれど大人しくてあまり自分を主張する人じゃないので、デートや何かするときはいつも私が決めていました。もっと引っ張ってくれたらいいのに、っていつも不満に思ってました。」

「じゃあ、しょうがないよね~(笑)」と私は笑顔で伝えたのです。

彼女のしたことは確かにひどいことかもしれないし、私だってそうされるのは嫌です。しかし、「そういうことをしてしまうには、それなりの事情があるんだろう」という考えもあります。だから、なぜそんな態度になってしまったのか?を解き明かしてみたいと思いました。
単に相性が悪いわけではなく、何かもっと大きな原因があると思ったからです。

彼女の両親はずっと不仲でいつもケンカしていました。お金のこと、仕事のこと、家のことで、お母さんは何かとお父さんの文句を言っていて、お父さんはそれに耐えかねてキレて暴れるような日々でした。
それだからか、お父さんが家に帰ってこない日も多く、長女の彼女はいつもお母さんの愚痴を聞いて育ってきたのです。その愚痴はお父さんだけでなく、お姑さんや近所のおばさんまでいろんな人の悪口も含まれていました。
そして、機嫌が悪い日には「あんたたちさえいなきゃ、私はとっくに離婚できていたのに」とまで言っていました。その言葉に彼女が深く傷ついたことは想像に難くありません。

しかし、彼女はそんなお母さんを支えようと一生懸命励まし、笑顔を見せ、気丈に振る舞ってきました。お母さんに心配をかけないようにずっといい子をしてきたんですね。とはいえ、そういう毎日は苦しかったのでその頃の彼女は「早く家を出たい。手に職を就けて早く自立したい」と願うようになりました。

地元の高校に進むと彼女の反抗期はそこから急に激しくなります。お母さんが彼女の服装や行動にあれこれと干渉してくるようになったのです。
ちょっと短いスカートを履くと「まだ子供のくせに色気付いてきて。男でもできたのかしら?」と嫌味を言ってきたり、ちょっと学校からの帰りが遅いと「どこで遊んで来たんだか。不良少女か」などと文句を言われたり。
だんだん彼女も言い返すようになり、お母さんとケンカばかりするようになりました。

それに伴って学校の授業についていけなくなり、サボりがちになります。その間も「早く家を出たい」という思いが強かったので、彼女は実家から離れたところで看護師を目指して勉強しながら、ようやくお母さんの呪縛を逃れられたことを安堵していました。

しかし、彼女が付き合う男性はダメンズや遊び人ばかりで、今度はお母さんの代わりに彼氏たちに振り回される日々だったと言います。中には彼女に暴力を振るうような男性もいたそうです。
そして、彼女が看護師になって何年かした頃、中学時代の同級生である彼と再会し、お付き合いが始まったんです。

そんな彼女の人生を聴いていると様々なことが分かってきます。

彼女は仲の悪い両親を何とか取り持とうと頑張って来たんです。聞き役に回ってお母さんを助けようとしたこともそのひとつ。でも、お母さんは笑顔になるどころか、いつまでも人の悪口や不満ばかりを言っていました。そこで彼女は「私ではお母さんを助けられない」という無力感をたくさん抱えるようになります。この無力感は罪悪感のひとつと考えていいものです。

そして、「あんたたちがいなければ・・・」というお母さんの言葉。本心ではないと思いますが、深く傷つきますよね。自分の存在そのものを否定する言葉は、「生まれて来ちゃいけなかったの?」という悲しみや寂しさと同時に、自分の存在に罪悪感を覚えてしまいます。

「私なんていない方がいいんだ。私なんて愛されるわけがないんだ」

そんな思いが彼女の心に刻まれるようになるのです。

私たちは成長と共にそうした「観念」と呼ばれるものを持つようになります。自分はこういう存在なんだ、という思い込みであり、こういう風にすれば傷つかない、というルールでもあります。

彼女は数々の罪悪感を抱えながら、「私は愛されるわけがない」という観念を強く持つようになったのです。そして、彼女はそれに従って「私を愛してくれない人たち」ばかりと接するようになります。それが問題児ばかりが連なるかつての彼氏たちです。

問題ばかり起こして彼女に頼ってくるダメンズに、調子のいいことばかり言って他の女性とも遊びまわる人だったり、暴言や暴力まで振るう人だったり。彼女はなけなしの貯金をはたいて彼氏の借金を返したこともあるし、自分の家に女を連れ込まれたこともあったそうで、ますます「私なんて愛されるわけがない」という観念を強めていったのです。

そんな時に例の彼と付き合いを始めたわけです。

その彼はとても優しく、いつも彼女の味方をしてくれました。根気強く話を聴いてくれるカウンセラーのような存在であり、同い年だけど、安心して甘えられる兄のような存在でした。

「私は愛されるわけがない」と思っている彼女が、そんな風に優しくされたどうなるでしょう?

そう、たくさんテストしたくなるんです。

「ほんとうに私のこと愛してるの?じゃあ、このハードル飛んで見せてよ!」と彼を試すようなことをたくさんしてしまうのです。

この愛を試すテスト、実は、あの罪悪感が作り出したものに他なりません。

そもそも「私は愛されるわけがない」という思いは罪悪感から来ています。罪悪感は自分を傷つけ、幸せにしない感情です。その思いを強く持っている彼女は、彼から愛されるたびにそれを否定するような態度をとらざるを得なかったのです。

実際、彼にひどいことをしてしまった後は強い罪悪感に襲われ、そして、彼に謝罪したこともあったそうです。彼はそれを「いいよ。僕は大丈夫だから」と許してくれたのですが、自分では自分を許すことができず、どんどん罪悪感が積み重なって行くようになりました。

そして、彼女はまるでお母さんがお父さんにしていたように、また、元カレが彼女自身にしていたように、彼に対して暴言を吐いたり、愚痴や悪口を言ったりするようになります。

彼女は頭のいい方ですので、付き合っているときにそのことに気付いていたそうです。

「気が付けば私はお母さんと同じことをしてしまっているんです。それがものすごく嫌で、それで彼の元を離れたくなったこともありました。」

彼女はお母さんのことをとても嫌っていました。それだけのことをされたんですから。しかし、そんなお母さんと同じことをしている自分に気付いたとき、ますます自分のことも嫌いになってしまいます。

こうした悪循環が繰り返され、彼女は罪の意識から彼と付き合っていることが苦しくなってしまったんです。

「彼が優しくしてくれるたびに、私は責められているような気持ちがしていました。なんで怒らないの?なんで私を叱らないの?と心のどこかでいつも思っていたんです。」

また、彼のプロポーズを受け入れたのは、今から思えば罪悪感からだったと言います。「これだけひどいことをしたんだもの。結婚しなければいけない」と。

だから、結婚が決まって大喜びしている彼とは真逆で、彼女は一緒にいることがますます苦しくなってしまいました。そして、別れを切り出すことになったのです。

そんな彼女の人生を聞いていると、彼女を責められないなあ、という気持ちになってきます。
だから私はそんな彼女に「あなたはなにも悪くないですよ」と伝えました。
それだけの事情があったんだから、その彼の優しさや愛情が怖くても仕方がありません、と。
そして、「自分では意識していないけれど、彼をテストしてしまう気持ちも無理ないでしょう。そもそも彼と出会うまで、そこまであなたのことを受け入れ、理解し、愛情を示した人がほとんどいなかったのだから、あなたがそういう態度をとってしまうのもほんとうに無理のないことですね」と伝えました。

そして、おそらく一番重要なポイントだろうと思うお話を伝えました。

お母さんと同じことを彼にしてしまった理由は何だと思いますか?それくらい、あなたがあのお母さんを愛していた証拠なのですよ。
今では嫌いになったけど、あなたがお母さんのことを愛していたことは覚えているでしょう?だってあんなにもお母さんを支えてきたんですもの。
毎日愚痴や悪口を聞きながら、お母さんを励ましてきたんでしょう?迷惑をかけないように、と気を使って来たでしょう?それって愛がないとできないことですから。
でも、そんなお母さんを助けられなくてあなたは無力感と罪悪感を抱えてしまったんですよね。
だから、あなたが好きになる人は今まで傷ついた、助けが必要な人ばかりだったでしょう?でも、ほんとうはお母さんを助けたかったんですよね。どれくらい自分があのお母さんを愛していたか、分かりますか?
でも、愛していたがゆえに、お母さんを真似たのかもしれないんです。なんで、あのお母さんがそんなに苦しむのかを理解するのに、お母さんと同じことをするのが一番ですから。

だから、彼に対してお母さんみたいなことをしてしまったんです。
ということは、もうお気づきですよね?あの優しい彼は、かつてのあなた自身だったということ。
彼があなたにしてくれたことを覚えてますよね?あなたもかつてはあんな風に献身的にお母さんに尽くしていたんじゃないでしょうか?嫌味を言われても笑顔で受け止め、暴言を吐かれても相手を心配したんじゃないかな?
そうしたら、お母さんが抱えている膨大な罪悪感も理解できませんか?あなたが彼に対して感じている罪悪感。それはそのまま、お母さんがあなたに対して感じている罪悪感と同じじゃないでしょうか?
お母さん、あなたに愚痴や不満を漏らしながら、今のあなたと同じような気持ちだったんです。
どれくらいお母さんが苦しまれていたのか、もう理解できたんじゃないでしょうか?

話の途中から彼女の頬には大粒の涙が流れてきていました。饒舌な彼女が黙り込み、途中からは嗚咽を漏らし始めます。

お母さんのことを愛していたがゆえに、お母さんと同じような人生を歩んでいた彼女。
そして、その罪悪感ゆえに、自分をとても愛してくれる人を受け入れられなかった経験までも、真似してしまったのです。
「お母さんもこんなに苦しかったんですね。全然そんな風には見えなかったけれど、今の私もそんなに苦しんでるように見えないですもんね。すごく分かりました。けれど、彼には私のせいであんなにひどい目に遭ってしまいました。どうしたらいいんでしょう?」

そう彼女は涙を浮かべた目で私を見つめました。私の答えはシンプルです。

「彼に会いに行ってきたらどうでしょう?そして、もう一度、謝ってきてください。もし、気が向いたら、またやり直してみたらどうでしょうか?」

彼女ははっ!とした表情で私を見て、そのままセッションルームを出て彼の元へと向かいました。

その先は皆さんもご想像の通りです。彼は彼女と別れた後にすぐに別の女性と付き合い始めたのですが、全然うまくいかずに別れてしまっていました。彼もなぜか彼女のことが忘れられずにいたのです。

そのまま幸せになってくれるといいのですが、「便りのないのは良い知らせ」を地で行く職業ですから、ただ、そう祈るばかりです。

***

『いつも自分のせいにする罪悪感がすーっと消えてなくなる本』

出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン
2019/6/14発売。

ISBN-10: 4799324810
ISBN-13: 978-4799324813

1,512円(1,400円+税)

※この本を上梓するにあたり、講演会を企画しています。

6/14大阪、6/21東京、6/26那覇、7/13札幌、7/15仙台、7/21名古屋
https://nemotohiroyuki.jp/event-cat/30756

6/14 Zoom(大阪講演会の模様を生配信します)
https://nemotohiroyuki.jp/event-cat/30804

6/16神戸(スイーツブッフェ付懇親会付)
https://nemotohiroyuki.jp/event-cat/30727

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