恋人未満の彼からの別れ話



はっきりと付き合ってるわけではないのだけど、でも、会いたいと言われたら会いに行くし、一緒にいると恋人同士のような感じで、もちろん、体の関係もある。
彼に「私たちって付き合ってるのかな?」というニュアンスの言葉を伝えても
「ま、そんなことよりも今が楽しければいいんじゃない?」
「そもそも付き合うってどういうこと?」
「そういうことでいいんじゃない?」
幾度となくそんな答えが返って来てはぐらかされる。

友達にその話をしたら「あんたの気持ちはどうなの?」と言われた。
「正直、わかんないんだよね。もちろん会いたいって気持ちがないわけじゃないけれど、好きかて言われたら微妙。」
そんな風に答えたら、「お互い様じゃん」とスパッと斬られた。
お互い様・・・確かに。お互い都合よく相手を利用している感じ。深入りしない、詮索しない、そんな暗黙の了解がそこにある。


彼には長く付き合っている彼女がいる、という噂も耳にした。けれど、それを敢えて彼に聞こうとは思わない。そうだ、と言われるのも怖いし、違う、と言われても信じられないし。また彼がその答えをはぐらかしたとしても、きっと私はまた彼に会うと思う。

ただ、今まで経験したような“燃えるような”“切ない”“会いたくて仕方がない”“好きって気持ちが次々と湧き上がってくる”という思いはまったくない。だから、自分ではこれは恋ではないと断言できる。
じゃあ、何?セフレ?いや、別にそれを求めているわけでもないし。都合のいい彼女?でも、それを言うなら私も同じだ。
考えても答えは出ないので放置していた。

そんな時、彼から「もう会うの、終わりにする」と言われた。いつものように恋人のような時間を過ごし、地下鉄の駅に降りる階段の手前で。
きっといつかは終わるだろうと心のどこかで思っていたし、その覚悟も十分できてるつもりだったけれど、その言葉に思わぬ動揺を感じている自分がいた。
もちろん、そんな心情は隠して「そう。分かったわ。じゃあね」と答えて一人改札に向かった。
その途中からなぜか涙が溢れて出て来た。すぐに「どうして?なぜ?いったい私は何だったの?」と彼に問い質したい気持ちに駆られた。
携帯を取り出して、電話をかけようとして、でも、どうせまた曖昧な答えしか返って来ないんだろうと気付いてカバンに戻した。それにまずはこの止まらない涙を何とかしなければいけない。

* * *

「ずいぶんと遠慮していませんでしたか?」
「本気で好きになることを怖れていたんじゃないでしょうか?」
「意地を張り合っているところもありませんでした?」

そんな質問をしてみたいな、と思います。

本当は好きな気持ちもあったのかもしれないけれど、それが今までの恋と違うから認めたくなかったり、彼の態度があいまいだから、その彼を好きなことを認めることが屈辱的だから敢えて見ないようにしていたり、そんなところもあったのかもしれません。

「これもちゃんとした“失恋”ですよ。納得いかないかもしれないけれど。元彼とはとても言えないと思いますけれど」

お互い踏み込まない、そんな一見大人の、遠慮しぃな二人の恋の相談もよく頂きます。
そんな彼女の心を見て行くと、やはりそうなってしまうちゃんとした理由が分かってきます。
過去にもっともっと辛い失恋をしてまだその痛みが去っていなかったり、思春期頃からずっと密かな男性不信だったり、結婚に不思議と怖れや嫌悪を抱いていたり、仕事や趣味が中心の生活を築いていたり。
そして、元々相手に合わせてしまうタイプで、あまり自分のことを主張できない性格だったり。

やはり自分自身の問題なんですよね。

「そういう関係って本当は嫌でしょう?やはり付き合うなら付き合うで白黒はっきりさせたいし、告白とかもして欲しいですよね?愛情表現だって欲しいですよね?」

そして、必ずこんな話を伝えると思います。

「もっと自分を大事にしましょう」

すると、100%、こんな質問が返ってきます。

「自分を大事にするってどういうことですか?分からないんです。」

そう、実はここが一番の問題なのかもしれません。
自分を大事にする、ということが分からない・・・
すなわち、無意識に自分を粗末に扱ってしまっている・・・。

望まない関係を続けること、そのこと自体が自分を粗末にしていることではないでしょうか。

「あなたのことを大切にしてくれている人の名前を書き出してもらえませんか?家族、友達、職場の同僚、習い事の仲間たち。」

「その人たちのあなたへの思いを感じてみてもらえませんか?」

こういう曖昧な関係に陥るときって大袈裟に聞こえるかもしれませんが「愛を見失ってる」ことが多いんですよね。
何かの痛みがそうさせてることも多いですし、仕事が忙しすぎて、いわゆる“忙殺”状態だったり。

そこでああ、自分をちゃんと愛してくれている人がいるんだな、ということを思い出すことが、まずは自分を大事にすることになります。

そうして、周りの人の愛情やつながりを再認識すると、曖昧な関係でいることを許せなくなります。

「はっきりしないんだったら、もう会わないよ」
「そういうあいまいな態度が人を傷つけるって知ってる?」
「あなたの寂しさや心の痛みを癒してあげたいと思うけれど、それはちゃんとお付き合いしてからね。」

そんな風にあいまいな彼を突き放すことができるんです。

さて、最初に戻ってそんな恋人未満な彼からの別れについて。
ちゃんとした失恋だと意識的に捉えましょう。ちょっと悔しいかもしれないけれど。
そして、いつも紹介しているように、まずは「別れの手紙」なんぞを書いてみてください。
もし、涙が出て来たのであれば思い切り泣きましょう。

こういうあいまいな関係って、またすぐに戻りやすいんです。
だから、自分できちんとけじめを付けるべく「失恋する」んです。

ラブ・カウンセリング
男と女の心理学

こじれたココロのほぐし方 頑張らなくても愛されて幸せになる方法
 ★好評発売中!根本裕幸の近著。


あわせて読みたい