夫もいるけど彼氏もいる問題~アンダーグラウンドとその解放、そして、その先に見るライフワーク~



思春期の頃に表と裏の自分に分離させると裏の自分はそこに留まったまま、表の自分だけが大人になっていきます。
その表を担うのが夫で、裏を刺激してくれるのが彼氏、というわけです。
そうして、その彼氏を使って裏の自分を大人に成長させようという試みがあるのです。

根本先生、はじめまして。アラサー女です。
先生の本に出会い、そしてブログを発見してみなさんの投稿に共感しつつ、根本先生の軽妙で鋭い返しに心が軽くなったりと日参しています。
相談したいことがあるので、よかったらネタとして扱ってください!

私はこれまでの恋愛パターンとしては、いわゆるロックマンや野良猫さんのような方を選びがちでした。
しかし恋愛の痛手を繰り返すのはもうやめにしたいと、仕事や友人と満たされた時間を過ごし余裕がでてきたところ、これまで関わってきた人とは全くタイプの違う、落ち着いて誠実で余裕のある素晴らしい方と出会い、結婚することができました。

しかしそれだけで終わらず、年下の野良猫くんに出会ってしまいました。
自分が幸せだと信じて疑っていなかったので、既婚だと知ってもぐいぐい攻め込んでくる彼に余裕を決め込んでかわしていたのですが、古傷を疼かせようとしてくる彼に、陥落させられてしまいました。
たまにもらう嬉しい言葉やこれまでで一番だと感じられるようなセックスと引き換えに、彼の機嫌をとるような自分がいることに気づきました。
彼を突き放して、寂しくなって縋りつくを繰り返し、ぼろぼろに傷つきながら離れることを決心し実行しましたが、気持ちの収まりがつきません。

野良猫くんは、末っ子長男で女性の感情の機微を察知して言語化するのがとても上手です。あと多分マザコンです(男の人はみんなそうなんですか?)。
私は長女で、家ではわがままな妹や母親の機嫌をとらなきゃと動き、父のことは好きですが、家族の中では飾らない自分ではいられませんでした。
私は夫に対して、きっと父親のようだと感じてしまっているんだと思います。
夫は優しいのですが、良くも悪くも鈍感で、いい意味で私に振り回されすぎません。

夫、野良猫くんのどちらにも違う方法で甘えようとしていた気がします。
夫とは、安定した関係性を築ける気がするのですが、子どもは欲しくならなくて、野良猫くんとの関係性のような、縋りたくて、独占したくて、自分の依存的でだめな部分が全て引き出される関係性に、本当の自分があらわせているような気がして、絶対大変だと思うのに子どもが欲しいと思っちゃうし。

自分が脅かされないで、のびのびといられるのは夫なのに、どうして私は足るを知ることができないのでしょうか。
よかったら、先生の力添えをいただければ幸いです。
(Eさん)

ということで今日も「夫もいるけど彼もいる問題」について語らせていただこうと思う次第です。興味ある方は過去記事を漁っていただくとけっこうな確率で出くわすと思います。

Eさんの場合は何とか離れられたのですが、傷が疼くだけでなく、体が彼を忘れられないって感覚も残っているだろうと思います。性的な意味だけでなく空気感的なものも。

で、だいたいこういう旦那さんというのは「安定・安心・穏やか・優しい」という特徴を持っておりまして、良くも悪くもマイペースだったり、自分の世界を持っていたりします。

そうすると平和で穏やかな日々がやってくるのですが、やはり「刺激」が足りないんですよね。

キリキリするような緊張感、刃の上を歩くようなスリル、脳天まで突き抜けるようなコーフン、とろけるような性的快楽、等々、旦那様では得られないものを与えてくれる存在に恋焦がれ、ダメと分かっていても惹かれてしまうものです。

これはいわばバランスと言いましょうか。
塩辛いものを食った後に甘いものが欲しくなると言いますか。

旦那が「安定・安心・平和」を与えてくれるので、“それをベースに”「刺激・興奮・快楽」を求めていきます。

だから、あまり認めたくないかもしれませんが、旦那さんあっての彼だし、刺激という点は重要なポイントです。

それゆえ、彼のところに飛び込みたい気持ちがあっても実際離婚を考えられなかったり、離婚を考えたとしても踏み切れなかったりするケースが多いですね。(もちろん、離婚する人がいないわけじゃないですけど)

で、カウンセリングでもそうしたネタは山ほど扱っており、結果的に「ライフワーク」に向かうことが多いものです。

すなわち、自分がほんとうにやりたいことを見つけ、そこに向かって邁進し始めると「ああ、すべてに意味があった」と感じられるようになり、「旦那様がやはりベストなパートナーだ」としみじみ思えるようになり、タイミングや辻褄や流れがぴったり合って不思議なご縁も生まれたりして、やがては「なんであたし、あんな野良猫に惹かれてたんやろ?」と思う流れがけっこう多いものです。

今のEさんにとっては信じられないかもしれませんけれど、案外、そんな未来が待っているのかもしれません。

で、

>自分が脅かされないで、のびのびといられるのは夫なのに、どうして私は足るを知ることができないのでしょうか。

という疑問を持たれることはとても良いことですね。

で、ここに何らかの糸口を見出すことができるかもしれません。

足るを知ることができないのではなく、むしろ、脅かされず、のびのびとしていられるからこそ、彼を求めたくなると解釈してみてはいかがでしょうか。

情熱系女子は特にそうですけれど、長年、武闘派として戦場を生きてきた人ほど安定・安心・平和を求める気持ちが強くなるものです。

ところが、いざそれを手に入れると、その環境に喜びや感謝を覚えるものの、その一方で、退屈を覚えます。

例えば、このコロナ禍で都会から自然の多い田舎に引っ越した方がこんなことを話してくれたんです。

「はじめの頃は落ち着いていて気分も良く、引っ越して良かったなあ、と思っていたのですが、徐々になんか物足りないというか、やはり都会には都会の良さがあって、便利さだけでなく、刺激的な面も自分は好きだったんだと気づいたんです。」

Eさんや同志のみなさまもそれとちょっと似た心理なのかもしれません。

ということは、じゃあ、Eさんにとってそれまでの人生ってどうだったの?という点に俄然興味が湧くわけです。

>私は長女で、家ではわがままな妹や母親の機嫌をとらなきゃと動き、父のことは好きですが、家族の中では飾らない自分ではいられませんでした。

という点です。

やっぱお母さんとは色々あったの?
思春期はいろんな葛藤を一人で抱えていたの?
子どもの頃からたくさん我慢してきたの?
恋愛はやっぱりハードモードだった?
仕事頑張り過ぎて疲れたりしてた?

そこで「表に出す自分」と「裏に隠す・抑圧する自分」とが分離してしまったのかもしれません。

バランスという話をすれば「夫」も「彼」もちゃんと必要というか役割があるんですよね。

>夫、野良猫くんのどちらにも違う方法で甘えようとしていた気がします。

という風に気づいたEさんはやっぱり聡い人なわけです。

自分の中に「汚い部分」があるとするでしょう?
依存だったり、弱い部分だったり、感情的だったり、ダメダメな部分だったり。

それを旦那の前で出せばいいと思うのですが、「相手にしてくれない」「分かってもらえない」「共感してもらえない」等々の問題がありますし、そもそも「そんな汚い部分を夫の前で出したら嫌われちゃう」という怖れがある人もいます。

だから、「汚いものは汚いところで出す」のが望ましいわけです。

嫌な自分、ダメな自分、ふだんは隠している自分を出すには、同じように嫌な奴、ダメな奴の前の方が出しやすいわけです。

それを強く抑圧してる分だけ、それを出せる快感ってのは何物にも代えがたいものがありますよね。

「ああ、自分を遠慮なく出せるって素敵!」とときめきを覚えたり、「イヤな自分を出してもOKってすごく解放的!」と自由に目覚めたりすることもよくあります。

それが典型的に出るのがセックスで「彼の前ではものすごく淫らな女になれる」という声をたいへんよく耳にします。

これはとても象徴的な話でもあり、同じように「ふだんはクールに振舞ってるのに、彼の前ではめちゃくちゃ感情的な女になれる。そんな自分が嫌だと思う反面、すごくイキイキしてる自分もいる」みたいな体験をされる方がいます。

つまり、アンダーグラウンドというわけですね。

そうすると「表の部分は夫に、裏の私は彼に満たしてもらう」という役割分担が生まれるんです。

Eさんもお気づきの通り、こういう旦那さんは「理想のパパ」になりやすいですから、「思春期に彼氏がほしくなる心理」が生まれるんです。

で、そうなるとやはり「なんでアンダーグラウンドが必要なの?」という点に俄然注目が集まるわけでして、先ほどの「Eさんは今までどんな人生を歩んできたの?」という質問が再び脚光を浴びるわけです。

どんな自分を隠してきたのか?
どうして隠さざるを得なかったのか?
ほんとうに自分が求めているものは何なのか?

そこに注目していきます。

でも、これってパートナーシップの問題をきっかけに自分の人生を振り返ることになり、過去と向き合うことにもなるので、結果的に「自分ってこういう人間」ということを知ることにつながります。

自分の価値や魅力はこういうところで、どんな才能を持ち、逆に、何が苦手で、できない人なのか?ということを知っていくんです。

これってすなわちライフワークデザインにつながる材料探しと同じことなのですね。
だから、結果的にライフワークを見つけ、そっちにエネルギーを向けるようになるとアンダーグラウンドが解消されていくわけです。

誰でも多少なりともあるのですが、特にEさんのようにしっかり者の長女として振舞ってきた方は思春期に表と裏に自分を分離させるようになります。

表の自分は進学・就職・恋愛などで華々しい活躍を見せるのですが、裏に隠しているもう一人の自分は思春期のまま留まってしまいます。

だから、周りからは「Eさんって大人だよね」と言われたとしても、自分としては「いやいやまだ自分は子どもだ。大人になり切れていない。」とか思っていたりします。

そして、夫との関係で再び思春期を取り戻して裏の自分を大人に成長させようと試みます。ずっと隠していた裏の自分を「彼氏」の前では出すわけです。

そうして表も裏も大人女子として成熟させていくプロセスを経るわけです。

だから、この問題はセクシャリティが必ず絡みますし、その解放が求められていることも確かです。

また、パパである夫の子どもは欲しくないのに、彼の子どもを望むのも、それが思春期の恋だと分かれば理解できますね。

そういうわけでEさんはある意味「育て直し」をしている最中とも言えます。
今まで表に出せなかった思春期の女子が大人になろうとしている時期だと。

だからこそ、過去を振り返りながら自分自身と向き合うことが今のEさんには大変役立つプロセスでして、ライフワークを視野に置いた「これからの生き方」を決めていく時期でもあると思います。

大きな人生の分岐点に来てるわけですから、ここはがっつり腰を据えて向き合っていきましょう!

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