「現実にもっと向き合いたいとき」



*「こんなとき、どうしたらいいの?」にお答えする心の処方箋シリーズ*

私達は思う以上に辛いこと、しんどい状況に陥ると、分かっていても、つい現実から目を逸らし、無かった事にしたくなるものです。
そして、それは意識的にそうしてしまうレベルから、気付かないうちに無意識的にしてしまうレベルまで様々な段階に存在しているものなのです。


現実と向き合うのには、意外に体力・精神力などの“力”を必要とします。
それは辛い現実に伴って、様々な感情が動きます。
例えば、苦しみ、辛さ、痛み、悲しみ、寂しさ、罪悪感、無力感、惨めさ、屈辱、恥ずかしさ、怖れ、不安、といった感情です。

それと同時に、今後、どうすべきか?といった方向性を決める必要性にも迫られます。
乗り越えるのか?逃げるのか?
乗り越えるとすれば、どうやって乗り越えるのか?
一人でできるのか?援助が必要なのか?

これが意外に“力”がいるもので、心に余裕が無いときには、「よいしょ」と声をかけて向き合うべき、この現実になかなか太刀打ちはできません。

そして、さらに厄介なことに、この“力”には個人差があるということなんです。

例えば、ある問題に大してAさんが感じるしんどさと、Bさんが感じるしんどさには当然のように差があります。
仮にAさんは比較的余裕を持って向き合えているとすると、実はいっぱいいっぱいなBさんに対して「何であいつは逃げてるんだ?」という疑問が沸いてしまうのです。

だから、この現実と向き合うには、その現実の重みについても理解を深める必要があるのです。

つまり、他の人はできているのに、自分はできない、という自己攻撃は実は意味がないと言えるのです。

さて、そうした前提の上で、今起きている現実に向き合うにはどうしたらいいでしょう?

私はカウンセリングの中で、この「現実と向き合う」ことをまずは第一に掲げます。
今起きていることをきちんと心のレベルで受け止めることを、です。

そのために、まずは大きく深呼吸をし、そして、しっかりと、胸を張り、お腹に力を入れながら、今起きていることを受け止めるように努めます。
そして、痛みを感じても、辛さに押し潰れそうになっても、ぎりぎりまで、今起きていることをしっかりと見据えようとするのです。

そして、これが一人では辛ければ、やはり誰かに援助してもらうのが良いのです。

現実と向き合うことが、実はとても力のいることと分かれば、その力を他人から分けてもらうことにはそれほど抵抗がなくなるはずです。

カウンセリングにおいて、勇気を持って話してくださって、それを一緒に共有するだけで心が軽くなれるのは、この一緒に向き合うことができた効果とも言えるのです。

もし、今よりもっと現実と向き会いたいとき、ぜひ、誰かと分かち合ってみてください。
それだけで心が軽くなり、力が沸き、乗り越えられる希望が沸いて来るのをきっと感じられるはずです。

心の処方箋

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