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傷ついた経験から自分を守るためのルールを作り、それに従うことで安全・安心に生きようとするものの、その状態はまだまだ痛みが残っているものですから、“副作用”のようなものも同時にたくさん出てくるものです。
それを手放していくプロセスを今日は紹介したいと思います。
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昨日のお話で出てきた「観念」について「もっとしゃべらせろ!」と私が言っているので今日は「自分のやり方」についてお話です。
あるできごとで傷つくと辛くて悲しいから二度とそんな思いをしたくない!と心の中で誓います。
そうして二度と傷つかないように私たちは「ルール」を作ります。
それが「観念」と呼ばれるものであり、「ビリーフ」「自分ルール」などとも呼ばれるものです。
そのルールは自分を守るために作られたので安全・安心を手に入れられるのですが、同時に、自分自身を窮屈にしたり、身動きが取れなくなったり、タイミングを逃してしまったり、いろいろな“副作用”をもたらすことも多いものです。
それでも、やはり傷つことよりはマシなのでそのルールに従って生きようとするのですが、それはまるで「鎧を身に着けて生きる」ようなものですから、多方面で影響が出てしまうものです。
また、あるときは役に立ったルールも、別の場面では逆に足かせになることもあり、何かと苦しい思いをもたらすものになってしまうのですね。
だから、そのルールを作った心の傷を癒し、そのルール自体を手放していこう!というのが私たちからの提案になるのです。
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Aさんは高校時代、親友と言える友達がいました。
とても気が合い、なんでも話せる貴重な相手で、毎日学校帰りにたくさんおしゃべりをしてきました。
うれしいことも辛いこともお互いシェアして「一生の友達!」(いわゆる「ずっ友」って言葉が流行った時代のお話ね)と思っていました。
ところがその友達、“スピーカー”という種類の人で、Aさんが話したことを次の日には学校で周りの子に尾ひれを付けてしゃべっちゃう子だったんです。
「Aちゃんって、○○先生のことが嫌いみたい」とか「ああ見えて、料理とかするらしいよ」みたいな他愛のないものであれば問題なかったのですが、あるときAさんが片思いしている男の子の名前をバラしちゃったんですね。
当然、恋に興味津々のクラスメイト達は沸き立ちます。
しかも、その好きな男の子というのが同じクラスの子だったからなおさら。
女子だけでなく、男子までもその話を知ることになりました。
当然、すぐにAさんの耳にその話が入ります。
そして、その瞬間から彼女の人生は一変してしまうわけです。
恥ずかしくて、悲しくて、辛くて、学校に行けなくなりました。
大好きだった親友に裏切られた痛みで、どうしていいか分からず、生きてる意味もわからなくなってしまったんです。
親御さんも心配して声をかけてくれますが、事情は話せません。
あるとき、その親友がAさんの家を訪ねてきました。
謝罪のためです。
でも、彼女は親友に会うこともできませんでした。
玄関先で、泣きながらAさんのお母さんに謝罪する親友の声が部屋まで聞こえてきます。
けれど、彼女は布団をかぶってその声を聞かないようにしました。
そこでようやく娘が学校に行かなくなった理由を理解したお母さんは彼女を優しくなだめようとしますが、お母さんにも知られてしまったことで一層、心を閉ざしてしまうことになりました。
結局彼女は学校に行けないまま卒業を迎えてしまいます。
一応、何とか卒業だけはさせてもらいましたが当然、大学受験もできず、ただただ部屋に引きこもるばかりでした。
家族の支えもあり、何とか一浪して大学に入りますが、もう人を信じられない彼女は友達を作ることもなく、誰かと仲良くならないように気を使いながら生活することになります。
ずっと無気力で、自分なりに楽しいことを探そうと思っていても、人が怖くなってしまったので何もできません。
元々明るい性格で、前向きで、誰とでも仲良くなれるコミュ力高めの女子だったのに、今は大人しく、暗く、ずっと自分の殻に閉じこもるようになってしまったのです。
25歳になり、彼女がカウンセリングに来られたのはその「もう人を信じない」「人と仲良くなんてしない」というルールがあまりに窮屈になってしまったからです。
「寂しい」
「毎日がつまらない」
「希望が持てない」
そんな話をとつとつとされたのですが、どう見ても彼女の放つ雰囲気と彼女の態度は乖離しているように感じました。
ほんとは元気で明るくて面白くて人懐っこいキャラなんだろうな、というのがその雰囲気から伝わってきます。
けれど、目の前にいる彼女は大人しく、うつむきながらぼそぼそとしゃべっています。
この7,8年、ほんとうに辛い中を生きてきたんだな、ということがひしひしと伝わってきます。
「よく生きて来られましたね?何度もソレを考えませんでした?」
彼女は黙って頷きました。
「家族のことを考えるとさすがにそれはできないと思っていました。」
涙ながらにいろいろと語っていただいたのち、
「そのルールを手放して、もう一度人を信じてみませんか?」
それを目標にすることにしました。
私のカウンセリングは「まずは自分自身、そして、次に対人関係」という風にプロセスを踏むことが多いんですね。
彼女はこの7,8年に心理学の本やブログを読み漁り、そもそも自武女の気があったがゆえに私のブログに沼ってしまい、ずっと私のカウンセリングを受けたかったそうです。
けど、もし、根本先生にも裏切られたら・・・と思ったら怖くなって申込ができなかったそうです。
※なお、Aさんの話をなんでみなさまにシェアしているかというと、のちのちご本人が誰かの役に立つならしゃべってもらってかまいません!とおっしゃってくれたからです。
それで、彼女には次のようなことに取り組んでもらいました。
「とりあえずおしゃれしましょう。もともとファッションは好きでしょう?」
「その親友の子に言いたいことを全部ノートに書いて持ってきてください。」
「お母さんやお父さんに言いたいこともノートに書き出しましょう。」
「今までも散々考えたと思うけど、その事件がなかったらどんな人生だったのか?を想像してノートに書き出してみましょう」
彼女が最も苦痛だったのは4番目の宿題です。
一番考えたくないことだったそうで、「やっぱり根本先生はひどい人だと思いました。」とうれしい感想を次回述べてくださいました。笑
2回目にお会いしたとき、初回とは別人のようなきれいなファッションで来られました。
「おしゃれをしなさい、と言ってもらえて許可が出せたみたいで、服を買うのがほんとうに楽しくて1日中、いろんなお店をめぐっていました。」
そして、そのとき出した宿題がこちらです。
「あなたがこの7、8年で成長したことを考えて書き出してください。」
その発想はなかったようですね。
ずっと時が止まっていたように感じていたから。
「うーん、今は思いつきません・・・」と言いながら「まあ、考えるだけでいいから」とテキトーにお茶を濁しておきました。
たぶん、いっぱいあるんです。成長したところ。
傷ついて苦しいのは、その傷を回復させようとしているから。
いわば、自己治癒能力が働いている証拠。
もう涙もでないほどつらい思いを抱えてきたのは、それだけその親友のことが好きだったから。
だから、そのとき彼女はもう親友のことをほとんど許していました。
それも彼女の成長分です。
それよりもまた誰かと仲良くなるのが怖い、人を信じるのが怖い、という後遺症に苦しんでいる状態でした。
でも、なんでそんな怖いかと言えば、興味があるから、人が好きだから。
彼女はその7,8年で精神的には十分大人になっていたのです。
そして、「まあ、Aちゃんは中身はめっちゃ大人だけど色気が全然ないもんなー。くくく。」と軽口をたたくと、「は?それはこれからだろ?いずれびっくりさせてやるから!」とサクッと返せるくらいのコミュ力を見せるようになっていきます。
その頃になると職場でも明るくなった、元気になった、最近、調子いいね~みたいな評価をもらえるようになっていました。
「もう一度、人を信じましょう、と言われたときは反射的に無理!って思いました。けれど、ほんとうはそれが一番したいことだと気付いていました。それで根本先生をまずは信じてみようと思ったんです。そしたら、職場の人に対しても人それぞれですが信じてもいいかな、と思えるようになってきました。」
それは「信じる/信頼する」という言葉の意味をちゃんと学んだからでした。
盲目的に相手を信じることが、ほんとうの意味での「信じる/信頼する」ではありません。
それは「期待」であり、やがて裏切られるものです。
「信頼する」というのは、「裏切られることも想定した上で、相手を受け入れる覚悟」「自分に都合の悪い言動を相手がしたとしても、その相手を受け入れる覚悟」のことを言います。
だから、彼女はその親友のことを「信じていた」のではなく、「自分にとって都合のいい面だけを求めていた」ということに気づいたのです。
まあ、高校生だったら仕方がないですよね。
そうして、彼女は「もう一度人を信じる」「誰かと仲良くなる」ということにチャレンジしていました。
ほんとうに家族の支えが大きかったと思うのですが、徐々に人間関係が良くなり、もっと深く人と関われる仕事をしたいとまで思うようになっていました。
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「ルール」の話からずいぶん話が膨らんでしまったのですが、私たちは傷つかないようにルールを設定し、それによって自分の首を絞める、という「自作自演」の罠に大いにハマってしまってるのかもしれません。
もし、今、人生が思い通りに行っていないのであれば、
あるいは、もし、今、窮屈で、不自由な日々を送っているのであれば、
自分の中にあって当たり前になっている「ルール」に目を向けてみるといいでしょう。
安全・安心を得るために、何かを制限してしまっていることはないでしょうか?
自分が傷つかないように守りに入りすぎて、チャレンジができなかったり、いろいろなことをあきらめちゃったりしていないでしょうか?
もし、その窮屈さを作っているルールに気づいたら、もうそれを手放す時期が来たということかもしれません。
この「ルール」を手放す方法は様々なものがあります。
私以外のカウンセラーやコーチが提供する方法もものすごくたくさんあります。
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Aさんがその傷を解消するために用いた方法はいろいろあります。
その中でもやっぱり「あの当時の自分に会いに行き、その自分を今の自分が抱きしめる」というセラピーは何回かアレンジしてやってみました。
具体的にはこちら。
↓
「過去のトラウマやモヤモヤや痛みを解消するためのイメージワーク~シンプルだけどとても効果的なセルフセラピー~」(1,500円)
当時の辛い気持ちを解放し、また、それにまつわる怒り、悔しさとも向き合い、同時に両親への感謝の気持ちや、頑張って生きてきた自分を承認するプロセスなど、いろいろとセラピーをしていったんです。
そうして、自分の成長を実感し、元々のキャラを思い出し、そして、ファザコンらしく根本先生にあれこれわがままを言えるようになっていったのです。
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もちろん、こうしたセラピーは個人セッションだけでなく、リトリートセミナーでもお届けしていますので、手放したいルールがあり、もっと自由に、自分らしく生きたいと思えば、利用を検討してみてはいかがでしょうか?
◎1DAYリトリートセミナー~ライフワークやパートナーシップと向き合い、自分を深く知る1日を~
・東京:6/22(日)11:00-18:00
https://nemotohiroyuki.jp/schedule-cat/55772
・大阪:7/6(日)11:00-18:00 with ジュンコ
https://nemotohiroyuki.jp/schedule-cat/55777
・オンライン:7/20(日)11:00-18:00
https://nemotohiroyuki.jp/schedule-cat/55860
・東京:8/9(土)11:00-18:00 with 桐山慶子
https://nemotohiroyuki.jp/schedule-cat/55867
◎ザ・リトリートセミナー in 神楽坂~生き方が、人生が、自分自身が変わる3日間~
https://nemotohiroyuki.jp/schedule-cat/51398
●3人の自立系武闘派女子が自分と向き合って幸せになっていく物語。
「ひとりで生きちゃう武闘派女子が頼って甘えて幸せになる50のトレーニング: 「頑張らないこと」を頑張りたいあなたへ」(小学館)
●この記事を読んで「ああ、自分の場合はどうだろう?」と思われた皆さん。そのネタ、聞かせてください!もしかしたらブログ上で回答させていただけるかもしれません!(不採用になっちゃったらごめんなさい!何度でもチャレンジ可!です)
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