「こっちおいでぇ~」
いとおしい声がリビングのソファから響いてきます。
甘えたような、でも、しっかりとした響きを持って。
しょうがないなあ・・・と笑顔で近づくと、彼女も笑って抱きついてきます。
首筋に手を回し、ぎゅっと僕に抱きついた後、
「おしっこ~」
とトイレに連れて行くよう、命じるのです。
後ろで妻のため息が聞こえます。
しかし、僕の頬に当たる彼女の肌はとてもすべすべして、呆れ顔の妻の存在は即刻目に入らなくなります。
そして、つい、その時間を慈しむように、トイレへの10歩を歩むのです。
この瞬間が永久に続けばいいのに・・・
それくらいほっぺフェチの僕には完璧なる仕様にて彼女は迫ってきます。
そして、彼女が小用を済ます間、扉の外で空を見上げるかのような素振りで、僕は待っているのです。
そういえば、かつて、こんな風にして恋人を待ったなあ・・・とは思いませんけど。
そして、再び、抱っこをせがむ5歳児を抱え、ソファへと連れて行くのです。
もちろん、ご褒美はほっぺぶちゅ。
最近は嫌がる奴を押さえ込み、わきの下の急所をこちょこちょしながら、その獲物を楽しんでいる僕がいます。
そして、満腹感と共に、中座した食事の続きを頂いたりするのです。
それにしても最近は、ソファの下に寝っ転がり、手をひらひらさせて僕を呼ぶのです。
もはや、「こっちおいでぇ」というのも面倒になったのでしょうか?