沖縄をたくさん感じた一日。



なんの目的もなく県庁近くの道をぶらぶらと歩いてみる。
沖縄に来ると空を眺める回数が圧倒的に増える。
そこに青が広がっていればそれは幸せで嬉しいけれど、仮に白かったり、灰色だったりしても別にどうってことはない。
空を眺め、コンクリート造りの家々の街並みに目線を落とし、ああ、こうして自分は今、沖縄に帰って来たんだ、ということを感じられたらそれで十分なのである。


ロビーラウンジで温かいお茶を飲みながら仕事をしている。
気が付けば原稿が溜まっているので、私は文章を打ち込む時間を必要しているからだ。
しかし、体がちょっと冷えてきたような気がする。
いや、正直に言えば原稿に行き詰って現実逃避をしたいのである。

ホテルの庭に出てまた空を眺める。
今年の沖縄は心地よい。いつものガツンと来る暑さはなく、ほど良い感じである。
もちろん、風も空の色もパワフルな植物も例年通りでそこは深く安心する。沖縄はこうでなくちゃ、である。

空をただ眺めることって意外と大阪ではやらない。
沖縄に来ると自然とそうなっている。

しばらく休むと右肩下がりな労働意欲との葛藤がまた始まる。

たまたま夫婦で牧志の公設市場を歩いた。
那覇に来たときは必ず行くイタリアンが近くにあるからだ。
今日那覇に到着した妻は隣でひたすら沖縄の素晴らしさを語っている。
私もそれに同意する。私たちにとっては縁も所縁もない沖縄だけど、まるでホームグラウンドに帰って来たかのような感覚を覚える。

わずか10日ほど前、札幌の狸小路で撮った写真である。
牧志のアーケードを見たとき、二人とも狸小路を思い出して、同じアングルで写真を撮ってみた。
あの時は涼しくて長袖を着込んでいる。今は半袖だ。どちらも心地よい。
異常な暑さの大阪を抜け出して今は沖縄にいて、10日前は北海道にいた。

今日もてだこ亭のみどりさんの作る料理は魔法のようだった。
おしゃべりや子どもの世話などで落ち着いて味わうようなシステムではないけれど、いつも印象に残る料理が食べられる。
野菜がとても美味しくてうれしい。前菜は色とりどりで、パスタもクリームも魚介も美味しかった。
アサリのパスタなのだけど、沖縄のアサリは白砂で育つから殻も白っぽいのだそう。しかも、二枚貝はほとんど那覇にまで流通せずに地元で消費されてしまうらしい。小粒な分、濃厚でめちゃ美味しかった。また、今日イチの感動は、ドラゴンフルーツの若い実をソテーしたもの。一見みょうがかと思った。めちゃ美味かった。

壁際に座っていたので頭の上がこんな風になっていて、妻からは「幼稚園児の誕生日会みたい~♪」と喜ばれた。
実は今回、この食事会では出会ってわずか3週間で結婚することが決まった夫婦の事情聴取を行っていた。
追求して罪状を吐かせるつもりが「実は今日で出会ってちょうど半年なの(はあと)」と逆に惚気られる次第であった。
去年会ったときには影も形もなかったのに、今は夫婦になっている不思議。
人生どうなるか、ほんまに分からないものだ。

明日は台風らしい。夕方くらいから急に雨が降っては止み、風が強くなったと思えば止みを繰り返している。
ニュースでは警戒を呼び掛けているが、沖縄の人は「こんどの台風は大したことないし」と鷹揚に構えている。友人も、お店の人も、タクシーの人もみんな。
そして、沖縄に通って10数年。初めて遭遇する台風に我々家族も興味津々である。
たまにはホテルで一日缶詰めになるのも悪くない。
そもそも私たち家族は旅行に来てもロクに観光なんてしないから、沖縄そばを食べに出かけることができない程度の不都合しか生じないはずである。

子どもたちを室内プールに追いやって、私は締め切り迫る原稿書きに精を出そうと思っている。


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