男女の会話がすれ違う訳~感情を話す女性と考えを話す男性~



「どんな気分ですか?」という質問に「考え」を話してしまう男性。
思考的である男性は感情が苦手なんですね。
だから感情が先に立つ女性との話し合いはすれ違うことが増えるのです。

1年くらい前に「男女の違い」を著してからますますそういう質問や意見を耳にすることが増えました。
過日、こんなことがありました。以前からよくあったことなのですが、改めて「そうだよなあ」と思わされたできごとです。

カップルカウンセリングで目の前にはご主人と奥さまが並んで座っていらっしゃいます。
話題は離婚のこと。離婚したいご主人と、回避したい奥さまとの関係についてです。

どういう経緯があったのかをお伺いしていきました。
ご主人はきちんと系統だって話をしてくれます。とても明晰な方なので、分かりやすく経緯、状況について語ってくれました。


奥さまは時々涙ぐみながら、どうして離婚したくないのかを語ってくださいます。

「知らず知らずのうちに主人に甘えていました。この人は私のことを受け入れてくれる、と傲慢になっていたかもしれません。だから、主人が苦しんでいることに気付けず、無理な要求をしていたように思います。」

それを横で聞いているご主人は少し苦しそうな表情をしたので、私は「今の奥さんの話を聞いてどんな気分になりましたか?」とお聞きしました。

すると彼は

「彼女は彼女でよくやってくれていたと思います。だから、彼女が悪いわけではないと思っています。身勝手な私が悪いんだと思います。」

というようなことを答えてくださいました。

それで私は彼に「でも、今、少し苦しそうな表情をされてましたよね。何か辛い気持ち、あるいは、罪悪感などを感じていらっしゃるんでしょうか?」とお聞きしたんです。

彼は

「妻は離婚したくなくて、私は離婚したいわけですから、話が行き違うのは仕方のないことだと思います。」

と答えられるので、私は少し質問を変えて「この場にいるのは苦しいですよね?」と聞いてみたんですね。

彼の答えは「それは仕方がないと思います。」でした。
とても明晰な方で打てば響く感じのご主人でした。でも、こういう会話ってよくあるんですね。

『感情が、分からない。』という。

どんな感じですか?何を感じていますか?という質問に考えやあるべき姿を答えてしまうんです。
自分が苦しそうな表情をしていることも気付いていないのかもしれません。

もしこういう感じで夫婦のやり取りが行われているとしたら、お互い噛み合わないと感じるでしょうし、お互いにイライラしてきますね。

女性は感情で、男性は思考で物事を捉える傾向があるからこそのすれ違いです。
その結果、男性はどこか「評論家」みたいな感じになり、女性からすると「他人事みたいに捉えてる」と思われがちです。

だから、そういう状態で話し合いを重ねてもお互いにすっきりしません。
女性は気持ちが伝わってこない、と言うし、男性は感情論を突き付けられても何も始まらない、と思ったりね。

この奥さんもご主人の話に対して「主人の意見を尊重しようと思うのですが、気持ちが付いて行かなくて」とおっしゃるんです。
でも、どこかで「感情はコントロールすべき」と考えているご主人は、「自分の意見を尊重してくれるのであれば、さっさと別れてくれたらいい。簡単なことじゃないのか」と思うので、「気持ちが付いて行かない」という奥さんの気持ちが理解できないのです。

いい、悪い、ではなく、そういう現実がそこにあるんですね。

私としてはそのお二人の通訳みたいな存在になるわけです。
奥さんには「無理にご主人の意向に従おうとすればするほど感情は反発しますから、気持ちが付いて行かなくなりますよ」と。
ご主人には「奥さんはきっとあなたの“気持ち”を知りたいんだと思います。『愛情が無くなった』という事実ではなく、そのことをご主人がどう感じているのか?を話してあげてはいかがでしょうか」と。

そうするとご主人はようやく合点したようで「妻を苦しめたくはない。それは自分も辛いからだ。彼女には笑っていて欲しいし、自分が別れたい気持ちになったことはすごく申し訳なく思っている」と話してくれました。

それを聞いて奥さんは少しホッとされたようでした。

もちろん、お二人の今後についてその場でどうこう決まったわけではありません。
でも、将来に関わる話ですから、そんな感情面をちゃんとオープンにして話し合うことをお伝えしたんです。

帰り際、ご主人は「こういうことって仕事でも同じですよね。私はついどうあるべきか、どうするのが良いかを考えてそれを実行してきました。だから、部下たちに反発されることもあったんです。私は少し思考的過ぎるのかもしれませんね」とおっしゃってくれました。

「男性って皆、そういう傾向があります。もちろん、私も」とお答えしてお見送りしました。

違いを知って、お互い歩み寄ることが男女のコミュニケーションではとても大切なこと。
そんな意識をして日常を生活してみるだけでも、学びが得られるのではないでしょうか。

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