とても特別な彼になってしまう恋。それは過去の誰もが満たしてくれなかったものを与えてもらったと感じたときに起こるものかもしれません。すごく特別に感じ、運命を感じていただけに、そんな恋を失ったとき、人生に大きな影響を与えると同時に、なかなか忘れられない恋になっていっていきます。
今日はそんな話をご紹介したいと思います。
***
いつも明るく振舞ってきたけれど、本当はずっと一人ぼっちで寂しく生きてきた。なかなか心から信頼できる友だちもできず、恋だって、好きだと言ってくれる人を受け入れることが多くて、ほんとうに人を好きになるってどういうことなのか全然分からなかった。
でも、あるとき出会った彼は違った。他の人と同じように近づいてきたけれど、他の人が見てくれないほんとうの私を見てくれた。
「なんか、寂しそうな顔をときどきするよね?」
その一言で、迂闊にも涙を流してしまった。そして、彼の優しさに触れながら、気がつけばほんとうに彼のことが好きになっていった。
彼の笑顔にとても癒されたし、彼のためにいい女になろうと初めて頑張ったし、一緒にいることで、今までの辛いことは全て忘れられた。
初めて“ありのままの自分”という意味が分かったし、そのままでいればいいってことはすごく楽で、楽しかった。
でも、将来のことが二人の中で時々話題になり始めた頃、ちょっと彼の態度が冷たくなった。どうしたんだろう?仕事が大変なのかな?と思っている間にみるみる二人の間の距離が空いて、気がつけばまた一人になっていた。
彼の別れの言葉は「ごめん。結婚したいと思える人ができちゃった」。
もちろん、笑顔で彼を見送った。彼が幸せになるなら、それでいい、と思い込もうとした。今までやってきたことだから苦も無くできるはずだった。
彼に出会えたこと、彼を好きになれたこと、ほんとうに感謝しているし、私をたくさん愛してくれて、生きてて良かったと初めて思えたから凄く幸せだった。
毎日そう必死に思っていた。
でも、もう彼以上の人は絶対に現れないし、きっとあんなに人を好きになることはないと確信している。
でも、時々、それでほんとうにいいのだろうか?と思うことが増えた。周りが結婚し始めて、式に呼ばれるたびに虚しい思いが募った。幼馴染の赤ちゃんを見に行ったときは、おめでとう!と心から言えなかった。がんばって笑顔を作ったけれど。
私にはそんな経験ができるんだろうか?
妥協して結婚すれば、同じような経験もできるかもしれない。
でも、彼に出会ってしまった以上、それは難しいのかもしれない。
***
切ないお話なのですが、この記事を読んでくださってる方の中にも、同じような経験をされた方、少なくないのではないでしょうか?
さらに、辛いことに、こういうケースでは、彼を少しずつ手放せて、楽になってきたかなあ・・・と思ったら、彼との思い出の写真が古い携帯から出てきてパニックになったり、彼ほどではないけど、また好きな人ができてそっちに向かおうと思ったら、彼からいきなり電話がかかってきて一気に執着がぶり返したり、そして、何より辛いのが、もう大丈夫かな?と思い始めた頃に彼の結婚話を聞いて、奈落の底に落とされたり。
カウンセラーとして、こういう一つ一つのプロセスに長くお付き合いしていくと、なんでこんなことがこのタイミングで起こるのかなあ?という思いに駆られることもあります。
「えーっ、ほんまに?そりゃあ、もう、何とも言えないよなあ。このタイミングはきついよなあ・・・」と私がつい嘆いてしまったことも少なくありません。
「いい感じで来てたのに・・・、ここまで頑張ってきたのに・・・」と内心、その状況にイラッとしてしまうことも一度や二度じゃあありません(笑)
だとすると、何か意味があるんだよな・・・と思うわけです。
「神様のテスト」と呼ばれるもの。
このブログでも何度か触れてると思います。
「ほんとうにもう大丈夫?」と神様がテストを出すようなもの。私たちはつい「大丈夫」と思い込みがちですからね。
とはいえ、私の経験上、こうした彼の執着から見事抜け出した方は、ほんとあっさりと次に進まれます。ほんと今までは何だったの?という具合に。
ずーっと何年も引きずっていた彼を何とか手放そうと頑張ってた女性が、好きになれない彼とお付き合いしたり、不倫したりしながらも、最後は会社の研修で出会った人と半年で結婚!なんてこともありました。
その報告を聞きながら、しみじみと「人生、何が起こるか分からんよね?一年前の自分に言ったら絶対信じひんよね?」と語り合ったものです。
実は、失恋の辛さから抜け出そうと、何ヶ月、何年と過ごしていくと、自分では気付かないうちに手放せていることもよくあるんです。
つまり、心はもう自由になっているのに、頭がそれに付いて来てないようなものです。
「彼以上の人は現れないし、ずっと彼のことを好きでいる」と心とはウラハラに“思い込んで”しまってるのかもしれないですね。
とはいえ、どうしたら、そういう状態になれるのでしょう?
カウンセリングは一歩一歩、ほんと少しずつですが、自分の心と素直に向き合う方向で進んでいきます。
まずは、「やっぱり好きなんですよね」という気持ちに素直になりましょう。
実は改めてその気持ちを確認するのはちょっと勇気が要ります。
片想いだけど、好きなものは好きでしょう?それに理由はないはずですからね。
そして、そのまま彼のことを好きでいることを自分に許していきましょう。
恋をするのは素敵なことですから、好きな人がいる喜びを感じられるのが理想です。
だけど、苦しいのは「彼を手に入れたい。側にいたい。」という欲求のせい。
好きでいることが苦しいわけではないんです。
だから「彼のこと好きでいていいんだよ」と呟くように、自分に何度も言ってあげると、不思議と心が軽くなり、温かくなることがあります。
私たちカウンセラーは、好きでいることではなく、その欲求の方を手放す方向を向いています。
つまり、彼の行動を何とかしたい、自分の思い通りにしたい、という欲求を薄めていくわけです。
彼を手に入れたい、という欲求は、好きなんだから当然出てきます。
でも、「彼の行動は彼にしか決められない。私には何もできない」わけですね。それはもう彼に委ねるしかないわけです。
彼が再び私を選ぶのか、それとも他の人を選ぶのか、それは彼にしか選択できません。
それを第三者がコントロールしても意味がないんです。自分の意志ではないですから。
だから、そこではまな板の上の鯉になっておきましょう。焼くなり、煮るなり、好きにしてくれぃ!て心境です。
「自分には彼に対してできることはないよなあ」と思っておくと、また少し心は軽くなります。
悲しい、辛い中にも、少し光が差し込んでくるような感じがするでしょう。
もちろん、すぐにその状態がやってくるわけではありません。
頭ではすぐに理解できても、感情的には難しいものです。
だから、思い出したときに何度も繰り返し、そのメッセージを自分に伝えてあげることが大切です。
それはまるで、駄々をこねる3歳児を宥めるようなものなんですね。なかなか言うこと聞いてくれませんから。
そして、やはり、と言いますか、大事なポイントは「自分を大切にする」ということ。
自分をこれ以上、傷つけない、ということ。
これはちょっと余裕が出てきてから意識してもらえばいいです。辛い最中にはそこまで気が回らないと思いますから。
さて、そんなときは、ちょっと深呼吸して周りを見渡してみましょう。そんなあなたを見ている周りの人はどう感じているでしょう?また、数年後の私は今の私をどう思うでしょう?
失恋の後のほんとうに沈んだような、暗黒の時代を少し抜け出したとき、少し客観的に自分を見てみると楽になれることが多いようです。
こういう時に本当の友だちが誰なのか分かりますしね。
一つ一つ、こうした作業を繰り返していきます。
好きでいることを許し、彼の人生は彼の選択に委ねられていることを知り、周りの友だちや家族を思って自分を大切にしていくことで、心は少しずつ元気を取り戻していくのです。
もちろん、完璧にできなくてもいいです。1日5分でも1分でも、そんな気分になれたらOKです。
そうして、辛い状況を抜け出していくと、彼が自分の人生にもたらしてくれたプラスの影響について、感謝と共に受け取れる日が必ず来ます。
こういう辛い失恋の真っ只中にいる方に、よくこんな話をしています。
「もし、何年か後に、あなたの元に奇跡が起きて、ほんとうに素晴らしい人と結ばれる日が来たとしたら、きっとあの彼に心から感謝できる日がやってきます。『あなたがあのとき振ってくれたから今の彼との出会いがあるの!ほんとうにありがとう!』なんて言えるかもしれません。今はまったく信じられないと思いますが、ほんまかなあ、と思いながら、覚えておいてくださいね」
きっと大丈夫。きっと抜け出して、また素敵な恋ができる、と私たちは信じているのです。