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ある程度はうまく行きます。人に慕われたり、信頼されたり、孤立しなかったり。
でも、嫌われないように、という基準で動いて来ると、心は満たされないんです。
幸せではないんです。
だから「嫌われたっていいじゃない」って呪文を今日、覚えましょう。
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カウンセリングでもセミナーでも、私の基本は「なぜ、そう思うんだろう?」「なぜ、そうなってしまうんだろう?」というところを理解していく姿勢です。
つい意地を張ってしまう・・・なぜなんだろう?
初めて会う人に心を開けない・・・なぜなんだろう?
つい気を使って言葉を選んでしまう・・・なぜなんだろう?という具合に。
そうした「なぜ?」を掘り下げていくと、私たちの心の中には
「人に嫌われたくない」
という思いがとても強く眠っているようです。
そりゃ、そうですよね。
嫌われたい人なんてあまりいません。
いるとすれば幸せな変態達くらいです。(そう、私たちが目指す境地ですね)
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子どもの頃は何しても平気でした。
うちの息子(4)は人前でお尻を出すのも平気ですし、電車の中で大声で泣くことだって、スーパーのお菓子売り場で駄々をこねることだって余裕でできます。
年齢の差異はあろうとも、皆さんもかつてはそうだったはず。
しかし、成長するにつれて「周りの目」「社会の目」を皆さんは意識するようになります。
日本人は他人を思いやる「恥」の文化を重んじるため、子どもの頃から「○○が見てるよ」「そんなことしたら恥ずかしいでしょ」「人に迷惑をかけてはいけません」と他人を意識する躾をされることが多いでしょう。
かつ、思春期になれば「個別化」の時代に入り、自然と他人と自分を比べるようになります。
そうすると一層、人目が気になるようになるんですね。
その時、一番恐れるのが「孤立」です。
一人ぼっち。
お昼休み、休憩時間、放課後に「1人」であることを強く怖れるんです。
だから、自分を殺してでも誰かと一緒にいようとします。
その孤立を避けるためには「嫌われてはいけない」のです。
仲間からハブられては困るのです。
そして、私たちは「嫌われないようにする」という習慣を身に着けて来ました。
愛想笑いが得意な人もいるでしょう。
自分の意見を持たないようにして人に合わせてきた人もいるでしょう。
嫌われるのが怖いので、いつもピエロ(道化)をやっている人もいます。
賢いことがバレると嫌われるので、いつもバカなふりをしている人もいます。
また、そういう「演技」が上手な人の中は、人に合わせることが自分の長所のように感じてしまっている人もいます。
凛とした雰囲気の大人な女性がいました。
自立的で、仕事もバリバリこなします。そして、人間関係もとても充実しているように見えました。自分の意見もハキハキ言うし、恋人ともうまく行っているようでした。
「どこに問題があるんだろう?」と思えるような女性です。
でも、彼女は「人に嫌われるのが怖くて、いつも人前で自分を隠してきた」と告白してくれました。
仕事ができるのも、その笑顔も、ハキハキした物言いも、時にきついと評される表現も、恋人への愛情も、友達との付き合いも、そのすべてが「嫌われるのが怖くて作った自分」だと。
もちろん、100%作った自分ではないでしょう。
しかし、彼女が「頑張って」周りが期待する自分を演じてきたことは間違いありません。
そんな自分を辞めたい、もっと素を出したい、と彼女は言いました。
でも、それがすごく怖い、全然自信がない、と。
子ども時代の話を聴けば、彼女がそういう風になってしまうのもとても頷けるものでした。
そんな彼女に聞いてみたんです。
「人に嫌われるのが怖くて、自分を作ってきたのは、人とうまくやるためでしょう?孤立しないように、みんなと仲良くするためでしょう?」
「はい。そうですね。」
「ある意味、それは成功しましたよね。友達も多く、恋人もいて、仕事でも評価されているから」
「ええ。有難いことに本当にいい人に恵まれています。」
「ま、それはあなたがいい人だからなんですけどねっ。受け取れないと思いますけど。ほら、その人を知りたければ友達を見ろって言うでしょ?」
「え、まあ、そうですが・・・。でも、私には勿体ない様な友達ばかりで」
「そう思っちゃうものなんですけど、あ、でも、それは本題じゃないですね。すいません(笑)そうやって人に嫌われるのが怖くて、自分を作って来て、願いどおり人間関係がうまくいっているのですが、幸せじゃないんですよね?」
「そうなんですよ。ほんとこんなこと言っちゃいけないんでしょうけど」
「そういうところがあなたのいいところなんですよね。優しさと言うか気遣いと言うか。あ、また、逸れてしまいました(笑)で、肝心なことなのですが、人に嫌われないようにしてきて、うまく行きましたか?」
「え?あ、いや、確かにうまくは行っていないです」
そう、そこが大事なところなんです。
人に嫌われないように自分を作っていくと、ある程度は成功します。
しかし、残念ながら、それでは幸せを感じられないので、「うまくいった」とは思えないんです。
嫌われないことには成功した。
でも、苦しい。
これでは・・・しんどいですよね。
「今日はね、具体的にどうしてくださいって宿題は出しません。ただ、強く“意識”して生活するようにしてみてください。」
・仕事で同僚や上司・部下と接している時、嫌われるのが怖い?って自分に聞いてください。
・友達と一緒にいるとき、おしゃべりをしているとき、嫌われないようにしてる?って自分に聞いてください。
・恋人と一緒に過ごしている時、これって本当の自分?素直な自分?って聞いてみてください。
・街を歩いている時、嫌われないように笑顔を作ってない?って自分に聞いてください。
「人に嫌われないようにしていない?」って自分に聞くんです。
そして、こう自分に言ってみてください。
「嫌われたっていいじゃない。だって、嫌われないようにしてきたってうまく行かなかったんだもの」
すごい抵抗が心の中で湧き起こるかもしれません。
そう思ったところで何もできないかもしれません。
それでいいんです。
この言葉はあなたの中に革命を起こします。
数週間、数か月後を楽しみにしてください。
「嫌われたっていいから、これは言いたい!」ということが生まれてきますから。