○セックスレスのカップルカウンセリング事例



雑誌attiva5・6月合併号(徳間書店)の特別綴じ込み付録「Love Navi セックスレスは女の危機!」に寄せて書き下ろした記事です。



「セックス観の違いとコミュニケーション不足」

セックスレスの原因になるものはたくさんありますが、今回は1回目ということもあり、もっとも基本的なお互いのセックス観の違いやコミュニケーションの不足が主な原因となっているケースをご紹介します。

カウンセリングルームに来られたお二人は少し緊張した面持ちで座っていらっしゃいます。
初めてのカウンセリングということもあり、また、ご相談の内容が少し恥ずかしいことでもあり、なかなか落ち着かない雰囲気です。
彼女の里美さん(仮名、29歳)のたっての希望でカウンセリングを受けようと思ったため、健二さん(仮名、31歳)は少し浮かない表情。
「里美が言うから・・・」という雰囲気がありありです。

カップルカウンセリングでは、まず最初にカウンセリングを受ける目的や今の正直な気持ちをお聞きするようにしています。
里美さんが口火を切られました。
「付き合って2年半くらい経つのですが、ここ1年ほど、だんだんエッチの回数が少なくなってきてきたんです。それまでは会えば必ず・・・といった関係だったのに、その頃から会ってもそのままキスもなくバイバイすることが多くなってきて、最近では月に1、2回程度なんです。仕事で疲れているのも分かるのですが、気持ちが離れてしまったのではないかと不安になってしまって。二人で話をすると、彼は『そんなことないよ。今でも好きだよ』って言ってくれるのですが、だんだん信じられなくなってきてしまったんです。仲は良くて電話やメールもいいのですが・・・。飽きられちゃったのかな・・・と思うこともあって・・・。結婚の話も出ているのですが、なかなか前向きに考えられなくて・・・」

里美さんが話している間に少し苦々しげな表情をしていた健二さんはこうおっしゃいました。
「2年も付き合ってきたら、こんなもんかな・・・と思うんですけど、違うんですかね・・・。仕事もだんだん忙しくなるし、他にもアウトドアの趣味もやりたいし。別に里美のことが嫌いになったわけでもないし、結婚もしたいと思うし。一緒にいるときは仲がいいから、それで問題はないんじゃないかと話をするんですが、里美はどうも納得がいかないようで・・・。カウンセリングを受けるほどのことじゃないと思うのですが、里美がどうしても・・・というので・・・。」

これだけ見ても、二人の心がすれ違ってしまっていることが分かりますね。
お互いに起きている問題というのが、図らずも二人の今の関係を如実に表すものだったりします。
里美さんはセックスが減ってきていることが不安の種になり、そこから心離れを心配しています。
また、健二さんはそんな里美さんの気持ちが理解できない・・・といった様子で、カウンセリングにも後ろ向きな様子です。
そんな恋人の姿を見て、お互いの間に少しずつ溝が広がり始める悪循環が起きてきます。
つまりは、無関心な健二さんを見て里美さんの心には彼への不信感や不安が募るようになり、悩んでいる里美さんを見て、健二さんは彼女を重たく感じるようになります。

そこで、僕はお二人に「お互いにとってセックスってどんなものですか?」とお聞きしてみました。
このセックス観というのは、長年付き合っているカップルでも全然異なっていることがあり、でも、そのコミュニケーションが不十分なために、不必要な我慢や気遣いを重ねてしまうものです。

里美さんはこう答えられました。
「二人の愛情を確かめるもの、かな、と思います。愛し合う行為というか。確かに気持ちいいものですが、それだけじゃない・・・というか、もっと深い精神的なものだと思います。」

一方、健二さんは少し戸惑いながらもこう答えられました。
「確かに愛し合うものだとは思いますが、むしろ、愛情というのは他のもので示すものだと思うんです。セックスと言うと本当はいけないかもしれないけれど、僕にとっては性欲の捌け口という気持ちも強いことは確かです。」

徐々にお互いの間に不穏な空気が流れ始めました。
「え?そんな風に思ってたんだ・・・」という少しショックな雰囲気です。

そこで、もう少しそこを深く掘り下げていくことにしました。
「健二さん、セックスをすること自体が面倒になってしまうことってありませんか?」とお聞きすると、彼は言いにくそうにこんな話をしてくれました。
「正直に言えば、少し面倒くさいというか・・・。飽きちゃったのかな?と思うこともありますね。別に里美が嫌いになったとかそういうんじゃないんだけど、別にしなくてもいいかな・・・という気持ちになることがあるんですよ。仕事で疲れているのも確かだし、休みの日はゆっくり寝たいと思うし・・・。何かこう、義務感でしてるというか、本当に仕事みたいな感じになっちゃうんですよ。マンネリっていうんですかね、こういうの。でも、里美はしたそうにしているし、求めてくることもあるし、だから、仕方なく・・・という面も確かにあります。」

それを聞いていた里美さんの表情がどんどん曇って「え?何がいけなかったの?」と不安な表情になっていきます。
そして、健二さんも申し訳なさそうな表情になっていきます。

そして、二人に僕はこんなお話をさせていただきました。

特に日本の場合、アダルトビデオとかが典型ですが、 “男は女をイかせなきゃいけない”という風潮がありますよね。
男性向け雑誌のセックス特集でも、その方法や道具類を列挙してあったりします。
だから、セックスに対して男性は、愛情表現という気持ちよりもそうしたテクニックに走ってしまいがちなところがあります。
そして、女性をイかせることに喜びを感じようとするわけです(これは一種の“征服感”ですね)。
だから、付き合い始めの頃はそうしたテクニックを使うことも新鮮なのですが、だんだん回数を重ねたり、相手のツボがわかるようになると、手順も決まりきったものになってしまいます。
つまりは、最初にキスをして、次は胸を、次はうなじに、次は・・・という風に、まるでマニュアルどおりにセックスをこなすようになります。
場合によってはセックスをする場所も、誘い文句も、終わったあとの姿勢も固定化してしまう場合があります。
ここでは自分の気持ちではなく、本当に流れ作業のような「お仕事」になってしまうわけですから、お付き合いする期間が長ければ長いほど、セックス自体がうっとおしくなってしまいます。
それは彼女への気持ちが変わったわけではなく、その手順や流れに飽きてしまったことを意味するのです。
もちろん、その気持ちが続けば徐々に彼女への気持ちが変わったり、他の女性を求めて浮気や風俗に出かけたり、なんていうことも起きてきます。

セックスに限らず、パートナーシップではよくマンネリが訪れますが、それはこうした「決まりきった手順・ルール」が作り出すものなんです。
すなわち、変化がないと飽きてしまうのが僕達人間ですから、セックスでも同じようなパターンになってしまうとだんだん興味を失ってしまうんですね。

一方、女性側から見れば、里美さんのようにセックスに精神的なものを求めることが多いので、イクことも大切な一方で、行為そのものが愛情を確かめる手段になります。
そうすると、男性がそのテクニックや手順に「飽きた」状態を見て、まるで自分自身が飽きられてしまったように感じて不安になるわけです。

実は、これは男性が論理的に、女性が感情的に物事を捉える典型的なパターンでもありますね。
こうした物事の捉え方の違いが原因になって誤解が生じることってすごくあるんです。
でも、その違いを理解しておくこと、受け入れようとすることはパートナーシップを成長させていくに従って、とても大切で、効果的なものなのです。

健二さんと里美さんにも、そうした男性と女性の捉え方の違い、そして、セックスに対する考え方の違いをお話していきました。
二人とも「へぇー」を連発して、だんだん目を見開きながら夢中になって聞いてくれました。
それはちょうど僕がお互いの気持ちの代弁者になるような感じでした。
二人で話をしていても、なかなか理解できないことが、第三者を挟むことで理解しあえることがたくさん出てきます。

そして、お二人にはそんな今までのセックスの流れ、やり方を変えていくことを提案しました。
そして、今までのセックスのパターンを確認してみたんです。
セックスというのは恥ずかしさもあって、なかなかそこを突っ込んで話をすることって案外少ないんですよね。
気持ちよければ、イケれば、相性がいい・・・と思い勝ちですから。
でも、それだけではなく、もっと深く愛し合えるにはどうしたらいいのか?自分はパートナーにどうしてあげたいのか?パートナーからどうして欲しいのか?をお互い話し合ってみることがすごく大切なのです。
このセックス・コミュニケーションは、恥ずかしさやプライドを越えて、さらに二人の関係性を深める効果があります。

今回のカウンセリングでは、二人には次のようなテーマで深く話し合ってもらいました。
・ もっとこういう風にして欲しいな・・・と思っていること
・ こんなセックス(シチュエーション、体位など)がしたいな・・・と思っていること
・ こんな風にしてあげたいな・・・と思っていること

健二さんが「たまにはお互いの部屋だけじゃなくて、ホテルにも行きたいし、コスプレなんかもしてみたいと思ってる」と言えば、里美さんは「えー、そんなの恥ずかしいよ(笑)」と言いながら「そうだね。たまにはいいかもしれないね」と答えたり、
里美さんが「たまには本当は私もリードしてみたい」と言えば、健二さんも「なんだ、お前、積極的なんだな。でも、それは嬉しいかも」と答えたり、
だんだんとその場の雰囲気が恥ずかしさを感じさせながらも、テンションがだんだん上がっていくのが僕にも感じられました。

パートナーシップもセックスも、本当はとてもクリエイティブなもので、二人で創り上げていくものなのです。
そして、その創り上げていく作業というのは、わくわく・どきどきした感覚を常にもたらしてくれるので、お互いの関係がマンネリに陥る暇がないんです。

そして、お二人には「じゃあ、今話し合ったセックスを一週間以内に実行してみましょう。」と宿題を出してカウンセリングを終えることにしました。
その後、数日して里見さんからこんなメールを頂きました。
「目から鱗のお話をたくさんありがとうございました。びっくりすることや納得することばかりで、彼も『本当にためになった。行って良かった』と言っていました。あの後、熱覚めやらぬという感じで、夜遅くまで色んなことを話し合いました。あんなに深くて濃い話をしたのは付き合い始めた頃以来じゃないかと思います。それに不思議なことに、エッチの方も付き合い始めた頃のドキドキ感があったんです。本当にありがとうございました。」

お互いの違いを知ること、そして、コミュニケーションを深めることで、付き合い始めた頃の新鮮さを取り戻されたようですね。
私達の心はそんな風に、何かのきっかけで時計を遡ったような感覚を作り出してくれるものなのかもしれません。

根本裕幸

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