「あるもの」に価値が感じられず「ないもの」ばかりを理想としてしまう心理~ふつうの人になりたいと思う自立系な人たちへ~



無価値感、理想主義、完璧主義、プライド。これらは自分が持っているものに価値を感じさせず、ないものにばかり価値を感じるように仕向けます。
そして、常に自分にダメ出しをし続ける「一人SMごっこ」を作り出すのです。
とはいえ、いきなり「自己肯定感」を目指しても挫折するだけなので、もう少し本質的な質問から入っていくと効果的なんじゃないかと思うのです。

初めまして、根本さん。私は今年31になる女です。初めてメールさせていただきます。
この記事『自分らしい生き方をするには、自分にできないこと、向いてないことを受け入れるのがいいのかもしれない』を読ませていただいた時、複雑な気持ちになりました。
私もAさんと同じ「べき論」の女です。展覧会は開けませんが私も絵を描いたり文章を書いたりするのが好きなのでアーティスト気質です。(現在は広報関係の仕事をしてます)
なぜ複雑な気持ちになったかと言いますと、もっと器用に世の中を生きたいと思っていたからです。自信がない故、プライドが高いので向いてないと言われるとムキになります。
そんな私ですが、私は絵が描けます、文章を書くのも好きで料理も人並みにできます、物を作ることも好きです。
でも手先が器用だったとしても、それが現実でそこまで役立つのかというと微妙な気がするのです。
現実を見れば世渡り上手というか、対人関係をうまく築ける方がどうしても得をしているような気がしてしまいます。
根本さんの「誰かに任せる」という許可を出せれば自分をカバーしてくれる人が現れるというのは頭ではわかりますし、そうできればいいなという思いはありますが、自信がないので誰かに任せるとか頼ることができません。
自分で何でもできるようにならないとものすごく不安なのです。誰かに任せたり、頼ったりしたらその人に甘えてダメになってしまう気がします。
できる自分が相手を助けたい…、相手に頼られることで自分の存在価値を感じたいという心理があります。
相手に頼る、任せるということも必要だと感じますし、いい人間関係を築きたい気持ちもあります。しかし、相手に委ねることが本当に怖いです。恋愛も不器用なため本当に苦手です。
これも自分に自信がないからだと思うのですが、スペックの高い人ばかりを求めますし、すぐに男性を恋愛対象として見てしまう割に、何も行動に移せず終わります。
なので男性と付き合ったこともなく、アプローチを受けても既婚者とかタイプでないとか自分が好きになれない人ばかり。
もう30だというのにそんな不器用極まりない自分が本当に情けないです。いい加減、情けない不器用な自分から卒業したいです。
自覚はあってもそれを受け入れられません。周りをしらけさせ、空気読めてないと感じる時もあります。
そういう自分は他人をイライラさせてしまうのではと不安になり人と付き合うのも本当に疲れます。何かアドバイスいただけたら嬉しいです。
(Aさん)

「完璧主義」って言葉、聞いたことありますでしょうか?
何でも完璧にしようとする心理ですが、完璧にしようと思っても完璧にできることなんて何一つないので、そういう方は「自分には何もない」あるいは「自分は何をやっても中途半端」という思いを抱いています。

また、「理想主義」と言って、自分にないものを持った人たちを「理想」とし、今の自分を否定し、そんな自分にならねば!と思って自分に鞭を入れるプレイがあります。

これらの要素があると「自分にあるものは価値がなく、意味もなく、何も役に立たない」と思うようになり、「自分にないものこそ価値があり、意味があり、役に立つもの」と思うようになります。

それで、いつもないものねだりをするように「自分はあれができない、これがない。だからダメなんだ」という定型文によって自分を責めることを繰り返すものです。

そういう行為を私のブログでは敬意をもって「一人SMごっこ」と呼んでおります。

なお、これに似た現象に「現状否定の法則」というのもありまして、「今の自分じゃダメなんだ!と夕日に向かって叫びつつ、自分にないものを渇望し続ける」というプレイです。もう少しきれいな表現を使うと「青い鳥症候群」とも言います。

因みにこれも「一人SMごっこ」の一種です。

さて、Aさんの文章はツッコミどころが満載ゆえ、どこをどう切り取ろうかニヤニヤしてしまうのですが(悪い趣味です。)、まずは、こんな話から始めていきましょう。

>そんな私ですが、私は絵が描けます、文章を書くのも好きで料理も人並みにできます、物を作ることも好きです。
>でも手先が器用だったとしても、それが現実でそこまで役立つのかというと微妙な気がするのです。

これらがAさんにとっての「あるもの」ですが、プライドが高くて理想主義で完璧主義になっちまうと、当然ながらこれらに価値は感じられません。

「そこまで役に立つもの?意味ないんじゃね?そんなの持ってても微妙なんじゃね?」と疑ったり、否定したりするわけですけれど、そこでAさんが見落としているのは、「それらの要素を持たない私を私は知らない」という現実です。

つまり、Aさんにとっては絵が描け、文章が書け、料理もできるってことは「当たり前」になっているで価値を感じられないんですけれど、一方で、絵が描けない、文章が苦手、料理はもっと苦手、という人生をAさんは体験できません。

おそらく、仮にAさんが「絵が描けない」とするならば、Aさんは「絵の描けない自分なんて価値がない」と思っていることでしょう。

つまり、絵が描けるからこそ「絵が描けることなんて何の役に立つの?」と言えるんですね。

じゃあ、料理ができない人が「料理ができたって何の役に立つの?」って言ってたら、それは人の耳にはどういう風に聞こえるでしょうか。

負け犬の遠吠え?嫉妬?嫌味?自己嫌悪?あたりでしょうか。

>自分で何でもできるようにならないとものすごく不安なのです。誰かに任せたり、頼ったりしたらその人に甘えてダメになってしまう気がします。

ええ、誰かに頼ることが苦手な方々はみんな同じセリフをおっしゃいます。
そして、自立している人はみんな同じ思いを持ちます。
逆に言えば、任せたり、頼ったりすることを禁止して、なんでも自分一人でやろうとすることを「自立」と言うからです。

で、ほんとうは甘えたいからですよね。
その甘えることを禁止しているから、誰かに任せたり、頼ったりすることができないと思いますし、仮に誰かに頼ってみたとしても、人選か方法を間違えて失敗することがほとんどでしょう。

だから、「私が頼れるのは、私のすべてを受け入れてくれる人だけだ」という思いを持つようになります。
そして、そんな人と出会うことができたら、私はすべてを委ねてしまうだろう!!うきうき!!と思います。けど、それはダメなことだと思っているので、そんな人とは出会わないようにしています。

そして、自分に完璧さを求めるのと同様、相手にも完璧さを求めるんですね。
でも、そんな人なんていないので恋愛や人間関係がうまく行かなくなってしまうわけです。

まあ、これぞ、自立系な方々が自ら葛藤を生み出す「自作自演劇場」と言えるんですけど。

>できる自分が相手を助けたい…、相手に頼られることで自分の存在価値を感じたいという心理があります。

そう、だからほんとは相手を助けたいわけじゃないんです。
助けることで自分の価値を確認したいだけなんです。
つまり、ほんとうに助けたいのは自分自身なんです。

※ちなみにこうした心理を「助けたい症候群」と言います。カウンセラーやセラピストを目指す方の中に意外と多いんです。

また、スペックの高い人ばかりを好きになるのも同じく自分に価値を感じたいからかもしれません。

とはいえ、こういう素直な気持ちを素直に表現できるのは素晴らしいことでし、意外かもしれませんが、Aさんの価値のひとつと言えます。

たぶん、Aさんはとても素直で正直な人なのでしょう。
ウソが付けないし、自分の気持ちが表情や態度に現れてしまう人かもしれません。

そうすると結果的に場の空気が読めなくなったり、相手の地雷を踏ん付けたり、融通が利かなくて怒られる羽目になったり、思ってることをストレートに言いすぎて相手を傷つけたりすることになるかもしれません。

不器用ですよねえ、なんて言うんですけど、果たしてそれが問題なのか?というと、残念ながら問題ではなく、どこまで行っても価値なんです。

「そんな自分でええねや。それがあたしなんやからその生き方を貫くんや!」と自己肯定できれば、たぶん、Aさんが抱えている問題はほとんどが瞬間的になくなるでしょう。

先日のランチセッションにもそのような方々がいらっしゃいましたが、私は「ふつうの人になりたい」とか「人間になりたい」という思いを吐露される“不器用な人間”とよくお会いします。

それはきっと私が徹頭徹尾「ふつうの人間」であるために、「あなたのようになりたいんです」という意図を込めて私にご相談してくださるのだと思うのですが(もし、私がふつうの人でなければ、そんな相談しても意味がないですもんね!!笑)、私からすれば、「そんなあなたが羨ましいです」と思うところは無限にあります。

Aさんは自覚されていますが、アーティスト気質で不器用な方ですから、“私のような”ふつうの人と同じような生き方はたぶんつまらないし、面白くないし、すぐに飽きるんだろうと思います。

でも、アーティスト気質で不器用な自分を否定していたら、“ふつうの人”というか“自分とは違う人”が羨ましくて仕方がなくなります。

なので、そんな自分を否定するんじゃなくて、とりあえず一回認めてみ、許してみ、受け入れてみ、という話になるんですけど、そんなことを言おうものなら「それじゃダメなんです!」という話を延々聞かされることになると思うので、また別の話をします。

〇なぜ、私は自分に価値がないと思い込んでいるのだろう?(無価値感のルーツはどこにあるのだろう?)

〇愛してほしいのに愛してくれなかった人は誰だろう?愛したかったのに、愛せなかった人は誰だろう?

〇私は誰と競争し、誰に嫉妬してきたのだろう?

〇私はいつから人に甘えることを禁止してきたのだろう?

〇私が助けようとして、助けられなかった人は誰だろう?

たぶん、私がAさんをカウンセリングするならこの辺から斬り込んでいくと思うんですよね。そんな完璧主義や理想主義、そして、プライドの高さを作り上げた根っこを扱っていこうと思います。

〇Aさんとお母さんは性格的に似ているでしょうか?それとも真逆なんでしょうか?

〇きょうだいはいらっしゃいますか?幼い頃、そのきょうだいとの関係はどうでしたか?

〇お父さんは甘えさせてくれましたか?それとも遠い存在でしたか?

この辺がカギになってくると思うんです。

ここに挙げた質問に答えていくだけでも少し心が和らいでいくと思います。

最後になりますが、Aさんの本当の問題はたぶん「罪悪感」だと思います。
無価値感やプライド、競争心ってのは表に出ている問題で、それらを作る以前からあった感情は罪悪感だと思うんですよね。

ほんとうは愛情深く、助けたい人ですから、とりあえず中核にある問題ってのは「助けたいのに助けられなかった誰か」に対して抱いている罪悪感なのかな、と思います。

いつかそこもまた見ていきましょうね。

★まさしくそんなAさんやその同志たちのために書き下ろした本。無価値感は7/12のセミナーで扱います。

『「いつも無理してるな」と思った時に読む本』(大和書房)

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