性的トラウマを抱える友人(男性)の心理を理解してあげたい。



性的虐待やいたずらが心身に与える影響はとても大きく、男性・女性としての自分を全否定するようになります。
しかし、「問題の影に才能あり」「才能あるがゆえに試練が与えられる」という言葉にあるように、その人には非常に素晴らしい才能、魅力が冷凍保存されているようなもので、それを解放することでカリスマ性やリーダーシップを発揮できるようになるのです。

根本先生こんにちは、Mと申します。

アルコール依存、ワーカーホリック、不眠、潔癖症の症状がある友人との接し方についてネットで調べておりましたが、やはり根本先生に相談しよう。と思い立ちこちらにお邪魔しました。
よろしくお願いします。

最近になり、その友人には性的虐待を受けた過去があることが分かり、いまは主にそのことについて調べているところです。

友人は男性ですが、日頃の態度を見ていると友人に虐待行為をした人物も男性ではないかと思われます。

何歳頃、どの程度の虐待があったのかは定かではありませんが、女性との性的接触を極端に避ける傾向があり、また、女性らしさを漂わせる女性のことも嫌悪します。

なぜそうなるのか?

男性であれ女性であれ性を匂わせるものを全て避けたいということでしょうか?

そのわりに性的なことに関して興味はとてもあるようで他人の性行為について知りたがります。

興味があるなら勇気を出して自分で経験してみればいい。と思うし、普通に相手をするのなら私は全然ウェルカムなのですが、でも、そうしたくてもトラウマが邪魔をして出来ないということですよね?

そうは言ってもあれこれ聞かれたりこっそり色々見られたりするのはさすがに不信感も募るしストレスです。

それらの異常行動をどう受け止めてあげたらいいのか、友人の精神がどういう状態にあるのかを知りたいです。

性的虐待をうけた過去があると自分を「汚ないものだ」と感じるようになると聞きますが、なぜ、自分を汚く感じるのか?
そこについても詳しく知りたいと思っています。
(Mさん)

性的虐待を受けた年齢とか回数とかも影響するのですが(例えば、それが幼稚園の時に親戚のおじさんから数回、とか、思春期に見知らぬ人から1回とか)、性的じゃなくても虐待と言えることは心身に大きな影響を与えるものです。

そもそも「性的」なものについては思春期にその興味が芽生えるものですから、小学校低学年男子の「おっぱい!!」と中学生の「おっぱい!!」とは同じ言葉でも意味が異なります。
シンプルに言えば「ママのおっぱい!」と「セックスの対象としてのおっぱい!」という違いです。

思春期には自分の中に沸き起こる自然現象である性的な興味に対して自己嫌悪します。そして、その自己嫌悪から恥ずかしさという感情が芽生えます。

なぜ、嫌悪するのか?というと、顕在意識と潜在意識でそれぞれ理由を付けることができます。
思春期以前は男女の性差はそれほど意識していません。
「男の子」「女の子」の違いは認識していても、それが「裕幸くん」と「理加ちゃん」という名前の違い、種類の違いという風に意識するようなものです。

それが小学校低学年くらいから肉体的な違いがあることに気付き始めると純粋にそれに興味が芽生えると同時に、異性としての認識が始まります。
するとそれまで暴れん坊ですぐに男子に蹴りを入れて来る怖い理加ちゃん(実話)に対する見え方が変わってくるんですね。

「同志」だと思ってたのに「違う」見え方になっちゃうんです。
それはある種、「今までハムスターだと思って飼っていた小動物が実は虎だった」的な衝撃を伴うことになり、付き合い方を変えなきゃいけないんだけど、どうしたらいいんだろう?と混乱します。
一般的にはそこで距離を置くことが多く、小学校も高学年になると男子は男子、女子は女子で遊ぶようになります。

その時潜在意識では何が起きているか?というと、心身が「子どもを産み、子孫を残す」ための本能として性的欲求が芽生えます。それが生理だったり、精通だったりして、明らかに異性とは違う反応が体に起こります。

その変化に対して潜在意識では「気持ち悪い」「なんやこれ」「ええ?自分はいったいどうなってしまうんや」などの感情が動きます。

だから、性的なエネルギーが強い人ほど、その感覚が強くなり、嫌悪感も強まりますから、ぐいーッと強い力で抑え込もうとするわけですね。
それで意外と性的なエネルギーが強い人ほど大人になってもその抑圧する癖が残っていて中性的な雰囲気を纏うことも多いのです。

また、性的なエネルギーが強い人ほど性的ないたずらや虐待に遭遇しやすくなりますから、より性的嫌悪感を強めてしまうこともあるのです。

この性的なものに対しては「訳の分からない気持ちの悪いもの」が自分の内面から湧き上がってくるわけですし、体にもそれが現れて来るわけですから、ものすごく嫌悪感が強まります。

それが性的嫌悪の原因となります。

だって、皆さんも今、急にお腹の辺りが膨らみ始めたら気持ち悪いと思うでしょう?
たとえそれが「それって中年太りなのよ!代謝が悪くなるから年を取ればみんなに起こるものよ!おめでとう!」とか言われても、すぐには受け入れられないと思うのです。
(うーん、我ながらあまりいい例えではないなあ、と思いつつ、ハゲを題材にするよりも痛い感じはしないかなと思ったんですけど・・・)

思春期に胸が膨らんだり、勃起したり、生理が始まったり、声変わりしたりという変化は、実はそれくらい怖いものだし、気持ち悪いものなんです。

しかも、日本ではそうした性的なものを「恥ずかしいもの」として隠す傾向にありますから、なおさら嫌悪感も強くなりますね。

そんな時に自分が異性または同性から「性の対象」として見られるとどんな気分になるでしょう?
また、そんな扱いを自分の意志とは関係なく強要されるとしたら、何を感じるでしょう?

「自分自身はとても気持ち悪い存在なんだ」という思い込みがものすごく強くなりますよね。

特にその経験は潜在意識に強いトラウマとして刻まれます。
自分が性的対象として扱われたこと。
自分が望まないことをされたこと。
自分を蔑ろにされたこと。
感情の赴くままに傷つけられたこと。

それは男性でも女性でも著しく自尊心を傷つけ、自分がその程度の価値しかないことを思い知らされます。
そして、それがセルフイメージとして自分の中に刻まれます。

もし同性から辱められたのであれば、自分が同様のことを他人にしてしまうことを強烈に嫌悪することも理解できるでしょう。

Mさんのご友人の中にはそんな心理が隠れているんだろうと思います。

とはいえ、そうした潜在意識のセルフイメージとは別にふつうの男としての性的な成長は続きます。
嫌悪しているのだけど、すごく興味を持つ、というのはそんな心理構造が影響していると考えられるのです。

以前、近親者(男性)から何度も性的虐待を受けた男性からこんな相談を受けたことがあります。
「セックスをすると女性を傷つけてしまうのではないか?という恐怖心がぬぐえない。また、他人とそういう関係を持つ自分を想像すると気持ち悪くて何もできない。
けれど、自分は性的欲求は人一倍強いようで、1日に何度もオナニーをしてしまう。
もちろん、それは男性が女性とセックスしているAVを見ながらで、そういう自分に激しい嫌悪感を感じるのだけどやめられない」

彼は控え目に見てもめちゃくちゃイケメンで、実際、とてもモテるそうです。
しかし、30歳を過ぎても女性経験がなく、お付き合いしたことはあっても相手の女性が性的な関係を匂わせて来ると途端に嫌悪感が沸いて来て関係を切ってしまう、と。

ちなみに私のところに来る前に「男性には相談し辛いので何人かの女性カウンセラーのところに通っていたのけれど、いつしか、彼女たちが自分に興味を持ち始めることが分かり、通い辛くなったので“仕方なく”根本先生のところに来た」そうです。

当然その言葉に対して「うん。○○くんは間違いなく女好きなんだね」と釘を刺したことは言うまでもありません(笑)
もちろん、それは「こんなイケメンに生まれてええなあ」という嫉妬など欠片もなかったことを合わせてご報告する次第です。

さて、私が彼にどんな提案をしたかというと、彼の周りにはおそらく彼を異性として見ているだろうけれど、それを出すと距離を置かれるので“仕方なく”友達として虎視眈々とチャンスを狙いすませている女性たちがいると思ったので、

「その体験や気持ちを信頼できる女性の友人に話すことはどう?」

と話をしました。すると彼はすでにその経験は何度かある、ということ。でも、さすがはイケメンで性格の良い彼ですから、たいていの女性は「じゃあ、私がそのトラウマを癒してあげる」と直接的、もしくは、婉曲的にベッドに誘おうとしてきたそうです。

もちろん、偉大なるカウンセラーである私はその彼の羨ましすぎる境遇に嫉妬の感情などを微塵も感じることなく、

「じゃあ、仕事はどう?楽しめてる?」

と質問の矛先を変えたのでした。
自己否定や嫌悪感が強い人ほど、刺激物を作って自分をハードに追い詰めます。
Mさんのお話にあったようにアルコールや仕事や趣味などを通じて自分を傷つけようとするのです。

もちろん、その彼にもその傾向は見受けられました。
そのカウンセリングの日もほぼ徹夜明けで訪れただけでなく、カウンセリングの後もまた職場に戻る予定だということ。
そして、アルコールもいつも吐くまで呑んでしまうので、ふだんは全く飲まないようにしている、とのことでした。

そこで彼に提案したのは、自己肯定感を高めること、そして、何より自らの男性性、そして、男性的なセクシャリティを許すプロセスでした。
そして、勇気を出して横暴な近親者と心理的に向き合い、許すことを提案するのです。
そこから、彼の持つ才能を解放していくことを目指したのです。

男性は女性よりもずっと自分の心と向き合うのが苦手です。
つい頭で考えてしまい、内面的な部分には抵抗が生まれるのです。

でも、彼は人生を変えたいと思っていたので、勇気を出してそれに向き合ってくれました。

これは性的なトラウマのある人にとっては非常に抵抗があることなのですが、自分がその相手を救いたいと思っていたこと、自分にはそんな才能があるということも受け入れていきます。

また、それくらい性的な魅力(セクシャリティ)が強く、カリスマ性やリーダーシップの才能があることも伝えていきました。

そこで「ライフワークを生きる」ということを目指したのです。

「○○くんが本当にしたいことって何だろう?それを探していきましょう。過去に向き合うことはそのためのアプローチの一つにすぎません」という風に。

彼は男性だけどとても感受性が豊かな人なので、自分と向き合うプロセスの中で何度も涙を流しました。
悔しさや悲しみもあれば、ものすごい嫌悪感もあり、また、その本来持っているパワーから「人を傷つけてはいけないのに、自分には人を傷つけてしまう力がある」ということを感覚的に知っていました。

自分の力を誤解していたのです。
「よく切れる包丁は指もよく切れるよね?それと同じで使い方なんですよね」

それを平和利用しましょう。
人の役に立つような力に変えましょう。
そのために自分のその力を解放しましょう。

「で、あなたが本当にしたいことは何なの?」と。

そのカウンセリングでは最後、彼とハグして終わりました。
「大丈夫、大丈夫。あなたのその痛みはきっと誰かを救うことになる」と。
その瞬間が一番彼が号泣した瞬間でした。

しばらく後、彼からメールを頂きました。ずいぶん前のできごとなのでそのメールを晒してやろうと思って探しましたが、残念ながら残っていませんでした。

彼はその後、仕事を辞めて海外に出ました。
自分を解放するために見知らぬ世界で自分をはっきり見て来たいと。
元々バイクが好きだったので(この辺はほんと男性的だと思うんですね)、バイクに乗って大陸を横断してやろうと思います、と。

途中何度かネットが繋がるタイミングでメールを送ってくれたのですが、どんどん彼が解放されていく姿が見えました。

「帰国したらまたお伺いします。セミナーにも行きます!」と力強く語ってくれたのですが、まだいらっしゃってないということはきっとまだ海外に居るんでしょうねえ???(笑)

Mさんのお話を読んで、久々に彼のことを思い出しました。
Mさんのご友人の気持ちを察する参考にしてもらえればと思います。

で、「じゃあ、私はどうしたらいいのよ!彼はカウンセリングとか行かないタイプだと思うし!!」というMさん始め、多くの同志たちの方が暴れると思うので、最後にその話を。

そういう彼に対して友人としてどう接してあげるのがいいのか?というと、彼のその価値や才能、男性的な魅力について、くどくどと伝え続けることです。

そして、彼がどういう風に生きていくのが幸せになるのか?というのを、プロデュースするつもりで提案したり、見守ってあげたりすることです。

なかなか自分の話はしてくれないと思いますが、それは男性だし、そんな傷を持ってるならなおさらのこと。
また、女性は話すことで気持ちが解放されますが、男性も同じだとは限らないんです。
男性は自分の感情のことを表現することに慣れていないことが多く、そういう方は内面的な話をすることで余計に混乱を招くこともあります。

女性は気持ちの整理が大切ですが、男性は思考の整理の方が大切なことも多いのです。

だから、男性には未来の話をしてあげて欲しいんですね。
「あなたはきっとこういう風に活躍できる」
「本来のあなたはこういう才能を生かした方がみんなが喜ぶ」
「あなたならできるよ!大丈夫!すごい才能の持ち主なんだから」

そうして夢を持ち、前向きに生き始めたときに、彼はトラウマを乗り越えようとします。
すなわち、自分らしく生きるためにはそんな傷を引きずっていてもしょうがない!と「頭で理解した時」に行動に移ります。
その時はセックスにだって勇気をもって飛び込んでくるでしょう。

ま、そうなったときは懇切丁寧に彼をリードしてあげることは皆さん得意でしょうから大丈夫ですね(笑)

この辺のアプローチは女性と男性でちょっと違うんですよね。

もしくは「母親的な存在」になって彼を受け入れることもできます。
彼の全部を受け入れてあげる、という母性を思い切り解放してあげるんです。
そうすることで彼が過去のトラウマを受け入れていくサポートをしていきます。

これは彼を男性として意識してるならばちょっとリスクが伴う方法ですが、先ほど事例で紹介した彼が何人もの女性のカウンセラーのところに通っていた理由はきっとそれを求めてのことでしょう。

性的なトラウマというのは、男性として(女性として)深い傷を負う一方で、同時に素晴らしい才能がある証として見ることができます。

それはとても辛く、苦しいことだけれど、それを乗り越えることですばらしい輝きを持つことができます。

その未来を信頼し、気長に付き合ってあげてはいかがでしょうか。

ちなみに、そんなセックスやセクシャリティをテーマとしたセミナーも開催していますよ。
そう、最後はお決まりのステマでございます。(全然ステマになってないけど(笑))

大阪:2/28(水)13:30-15:30
東京:3/7(水)12:00-14:00
大人の心理学講座「セクシャリティ~あなたが持つ、本当の魅力とは?~」
https://nemotohiroyuki.jp/event-cat/22934


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