権威との葛藤~なぜ、仕事が行き詰るのか?なぜ豊かさを受け取れないのか?~



傷付いた男性性の問題の一つに「権威との葛藤」があります。
これにより職場で対立を招いたり、他者との強い競争心が生まれたりします。
そこでは常に争いがあるため、平和、安らぎ、ぬくもり、安心感、豊かさ、喜びなどが感じられません。
それをどう取り戻していくか?について今日は心理学講座としてお届けします。

心理学用語でセミナーなどでも時々私が使う言葉です。
特に仕事やお金の面で問題となることが多く、

・仕事を頑張ってるのに報われない
・上司や社長に反発してしまう
・仕事で行き詰るのは上司との関係が多い
・仕事を通じてお金を受け取ることに抵抗がある
・十分給料をもらっているはずなのにお金がない問題がある
・そもそも目上の人が苦手
・上司に限らず、講師・先生などに対して苦手意識がある

などの問題として表面化します。

この問題の源流となるのは一般的には家庭内における権威の象徴である「父親」との関係に根付いているのですが、家庭によっては父親が権威を喪失して「母親」がその役目を担っていたり、古い家では「祖父」がそのポジションに就いていることもあります。

また、「権威」というのは男性性のシンボルの一つであるため、ここに葛藤を抱えると、男性性を発揮することに抵抗が生まれます。
例えば、自分の職位が上になり、部下を抱えることで一定の「権力」や「責任」を持つことになりますが、そこに抵抗が生まれて昇進を拒否したり、無責任な行動を採ったりすることに繋がります。

あるいは、男性性を拒否することにより、相対的に女性性が優位になることになり、「男らしくない」とか「中性的な印象を与える」存在になります。
もちろん、元からそういう気質の方ならば問題ないのですが、本来持っている男性性を発揮できないため、上に述べたような問題を抱えるようになるのです。

この「権威との葛藤」は「親父越え」が一つのミッションである男性に多くみられるのですが、自立的な女性にも表れやすく、現状では男女問わず現れる問題として捉えています。
ただ、女性の場合は「権威としての父親」との関係に加え、母親との関係も絡んでくることが多いため、心理的には若干複雑化することもあります。

例えば、結婚して家庭に入った女性でこんなケースがあります。
ほんとうはずっと仕事を続けたかったが旦那の意向に従って主婦になったものの、その後も旦那の仕事や収入に対してくすぶる気持ちが押さえられなる奥様がいます。
しかし、仕事をする自信もないため復帰する意思を固められない一方で、やはり自分は家事に従事した方がいいのではないか?という葛藤が生まれてきます。
ここには権威との葛藤(男性である夫との葛藤に加え、仕事における葛藤)に加え、家事に従事することへの葛藤(これは母親との関係性が影響する)が混じり合っています。

こうした権威との葛藤が如実に出るケースとしては次のようなものが考えられます。
「父親が高圧的で威張っていて、家族は委縮していた。また、長男である自分に対して父親は非常に期待をかけて厳しく接したため、すっかり自信を失ったまま思春期を迎える。
しかし、本来反抗期を迎えて父親から自立する時期であるものの、父親の抑圧が大きいため、自立心を持てないまま大人になっていく。
その結果、社会に出ても自分が何をしたいのかが分からず、能力があるにも関わらず、自分を過小評価しているため満足できる仕事が与えられない状況にある。
仕事は嫌いになり、続けることが苦痛になるが、かといって自分には何もないと思っているので、苦しみながら仕事を続けることになる。」

また、次のようなケースも典型的な例としてよく見られます。
「父親が仕事ばかりで家庭を顧みないため、母親が苦労する姿をよく見て来た。思春期の頃から父親に反発し、そんな男にだけはならないように大人になった。
その結果、周りの人、特に上司や先輩に対しては常に反抗的かつ攻撃的な態度になるため、社会人としては不遇をかこつことになる。
また、周りに対する競争心も旺盛なため孤立しやすく、孤独な毎日を過ごしやすい。
しかし、その心理としては父親との戦いが終わっていないためか、常に誰かを批判し、自分を被害者に置いておくことになる。」

人間関係において母親との関係は横のつながりやコミュニケーションに影響を与えますが、父親との関係は上下関係に影響を与えますので、権威との葛藤(父親との葛藤)が強いと、上から可愛がられることもなく、下からも突き上げられる立場になります。
そのため、人望を欠き、能力の割に評価されない苦しいポジションに置かれます。

権威との葛藤が癒されると、そうした問題が解消すると主に次のような恩恵が得られます。

・目上の者から可愛がられるので、自分を引き上げてくれる存在が現れる。
・人望が出て来て、周りから慕われる存在となる。
・リーダーシップをとることができ、時にカリスマ性も併せ持つ存在となる。
・責任を負うことに喜びを感じるようになり、より大きな仕事ができるようになる。
・競争心や優越感、劣等感などがなくなるので、周りの人間と調和した関係性を築けるようになる。
・その結果、仲間を築くことができ、その中で自分の役割をきちんとこなすことができる。
・他者に対する攻撃性がなくなるため、人間関係が穏やかになる。
・被害者意識がなくなるため、対等な人間関係を築けるようになる。
・自分がやりたい仕事を周りの人の協力を得て実現していくことができる。
・自分の身の丈にあった収入を得ることができ、経済的に自由に、豊かになる。
・自分らしい生き方を実現することができ、多くの人に与えられる存在となる。

権威との葛藤の癒し方。

一つ目は元となる家庭内の権威との関係性を癒すことを目的とします。
すなわち「父(母、祖父、祖母)を許す」ということになります。

許しのプロセスは既に紹介していると思いますので、さらっとお話をすると

1.感情の解放
2.感情的理解
3.感謝を与える
4.恩恵を受け取る

というざっくりとした流れになります。
感情の解放によって心の中にスペースを作り、その余裕を使って「なぜ、父親はそのような生き方になったのか?」を感情的に理解していきます。
その上で「その父から学んだこと、その父だったからこそ得たこと」を受け取ると同時に、感謝をしていきます。

この1~4のプロセスをすべてクリアせずとも、感情の解放だけでもずいぶんと余裕ができるので、心理的な距離のある職場などでの関係性が癒されていきます。

また、父親と向き合うことで、職場などにおける権威者に父を投影していたことに気付けるため、その投影を取り戻すことですでに職場における人間関係はずいぶんと変わる事例がたくさんあります。

そもそも権威との葛藤の問題は、エディプス・コンプレックスとの関係性も深く、本格的な癒しにはそれなりのエネルギーが費やされるものですが、その効果も絶大です。

二つ目は男性性を発揮していくアプローチです。

男性性は簡単に言えば男性的なエネルギーで、決断力、リーダーシップ、忍耐力、包容力、創造力、理解力、推進力、持続力、与える力などを表します。

被害者意識と共に、それが誰かを攻撃する(父親を攻撃している感情を他者に投影する)ことになったり、他者との競争心が激しくなったりするため、他人軸になった分だけ、そのエネルギーを浪費してしまいます。
それは同時に自己攻撃の激しさを物語っていて、内面的にも疲弊していきます。

男性性を発揮するということは「力」を自分に許すことであり、自分らしい生き方を推進することです。
端的に言えば男性の場合は筋肉を付けることで物理的な「力」を得ることができるので、筋トレをしたり、肉体労働に従事したりすることで自信を付けることができます。

また、自分らしさをは何か?を時に哲学的に考え、本当に自分がしたいことを見つけて実践していくことでやはり自信を持つことができるようになります。
持続性や忍耐力が男性性を高めてくれるので、コツコツと努力していくことで自信につながるのです。

また、男性的な創造性は何かの世界観を作り上げることでも男性性を成長させられます。
男性にオタクやマニアが多いのはそのためで、自分が好きなことにエネルギーを注ぎ込むことでその効果を実感できるものです。

すなわち、ここでは「情熱」がとても大切で、自分が熱くなれるものに夢中になることで自然と葛藤はなくなっていくのです。

また、権威との葛藤を抱えつつも「メンター」と呼ばれる心のお師匠さんを持ち、その人を目指して日常を過ごすことも効果的ですし、私がよくお勧めしている方法です。
もちろん、おのお師匠さんは同性であることが望ましく、もちろん、何人いても構いません。

その人の後を追うように葛藤を抱えつつも学び、成長していくことで、自然と権威との葛藤が癒され、男性性がバランスよく伸びていきます。

また、男性ならばパートナーシップを充実させることは権威との葛藤を癒す上でとても効果的な方法です。
女性を愛し、女性からの愛を受け取ることにより、その関係性の中で男性性・女性性のバランスが自分らしいものに整えられていきます。

もちろん、そのためには女性と対等であることを前提にリーダーシップを発揮していくことで、これがビジネスにも大きな影響を与えます。

権威との葛藤がある場合、女性性のエネルギーによって傷ついた男性性を癒すアプローチがあります。
これはパートナーシップを通じて行われるのが一番自然ですが、権威との葛藤が強いと、パートナーと競争状態になったり、与えるのみで一切受け取らない(いわゆるロックマン的)パターンが発揮されます。

女性性は受け取る力を成長させてくれますし、リーダーシップにおいても欠かせない要素となりますので、男性であったとしても必須な素養です。

女性性によって権威との葛藤を癒す場合、特に感情がそのポイントとなります。
映画、ドラマ、小説、舞台などの感情をダイレクトに刺激するものに親しんだり、美術や音楽などの芸術に触れることも効果的です。

また、女性的な雰囲気の場は権威との葛藤が強い人にとっては苦手な場所と認識されますが、そういう場に敢えて踏み込み、関係性を築くこともお勧めです。
権威との葛藤が強い男性に、私のセミナーへの参加をお勧めすることが多いのも、理由の一つです。

権威との葛藤を癒すためのセッション(ロールプレイセッションなど)においては、私は次のようなプロセスをよく提案しています。

・競争を手放す(負けを認める)
・助けを求める
・自己承認
・父親の愛を受け取る
・父親を助ける
・弱い自分(インナーチャイルド)を権威に与える(助けさせる)

これらはすべて権威との葛藤の影に隠れていた「愛」にフォーカスを当てています。

権威との葛藤には、父親に対する無限の愛が背景になっているものです。
父親との関係でその愛が痛みに変わってしまったときに権威との葛藤として生まれます。
そこでは本当は父を愛していた、父を助けたかった、父と共に歩みたかった、という思いが隠れていて、それが報われないと感じたときに葛藤として表出するわけです。

だから、権威との葛藤の本質的な癒しというのは、権威者(父親など)に対して、自分がこれほど素晴らしい愛を持っていたのか!という気付きによってもたらされるものです。
それに気付き、その愛と繋がるために上記のセッションは存在しています。

お父さんってあなたにとってどんな人でしたか?
なぜ、お父さんはそんな権威を振りかざす人にならざるを得なかったのでしょうか?
お父さんが抱えていた痛みとは何ですか?
その痛みをあなたは癒してあげたいと思ったことを覚えていますか?
お父さんのためにあなたが与えて来た愛を感じてみてください。
お父さんに本当に与えたかったものは何でしょうか?

ちょっと想像してみてくださいね。
あなたはそんな傷ついた父親をずっと背負って生きてきました。
葛藤を抱えるとはそういうことですよね。
そして、お父さんの重みを感じながらあなたは険しい道をずっと歩いてきたのです。
なぜならば、お父さんを助けたかったし、お父さんの笑顔が見たかったからです。
お父さんを喜ばせることができればあなたは幸せでした。
しかし、あなたはそのミッションに失敗してしまったと自分を責め、自分を苦しませてきたのです。
それが今あなたの目の前にある問題です。
それを今日、勇気を出して手放しましょう。
背負ってきたお父さんを神様に委ねましょう。
そして、自由になり、軽くなった心を感じてみてください。

目の前に神様と共にいるあなたのお父さんが立っています。
その時お父さんはどんな表情をしているでしょうか?

このセッションはもちろん全員に当てはまるものではありません。
権威との葛藤はとても強い感情を伴うので、そのための準備が必要です。
このセッションを見て、怒りを感じることもあれば、目を背けたくなることもあるでしょう。
それでいいのです。
それですら、権威との葛藤を手放すためのプロセスの一部です。

なお、私のこのセッションは、リトリートセミナーと1DAYセミナーにて提供させていただいています。
興味のある方はチャレンジしてみてください。


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