家族の5つの役割~組織・グループの問題解決に役立つ視点~



家族や組織などの人によって構成されるグループは、そのメンバーがヒーロー(ヒロイン)、犠牲者、傍観者、ヒール(悪役)、チャーマー(ピエロ)という5つの役割を担います。
それぞれがそのグループを救うために無意識に選択した役割で、これが組織の問題を解決するヒントになることが多いようです。
さて、あなたはどれ?そして今の組織では誰がどれでしょう?

心理学では「家族には5つの役割がある」という考え方をしています。
この「家族」というのは、組織、グループに置き換えることができ、会社の部署でも、プロジェクトチームの編成でも、また、友達とのバーベキューにおいても、この傾向がみられます。

そして、この役割は時と場合によって移り変わり、また、同じタイプの人間を集めたとしても不思議と5つの役割に分散していくことがあります。
また、複数のタイプを兼任する人も自然と出てきます。

この役割はそれぞれにポジティブな面とネガティブな面を持っています。
そして、根底にあるのは「家族を救うために担う役割」である点はとても重要です。

一見、グループに対してネガティブな影響しか見せていない人にしても、そうして問題を一身に引き受けることでその人はグループを助けているのです。

そして、誰もがこの5つに分類される心理的パターンを持っていて、目の前に現れるグループメンバーは、その自分自身のマインドの投影です。
だから、仮にグループの問題児を首にしたとしても、また新たな問題児が生まれます。
当然ですよね?自分の内なる部分を投影しているのがその問題児であるならば、自分自身がその問題と向き合わなければこのパターンは繰り返されることになります。

だから、グループの中でそれぞれの役割を「愛をもって担っている」という視点から見ることができると、仮に問題が起きても積極的にそこに関わっていくことができます。

このグループ全体を一人の人間として象徴化(シンボライズ)することもでき、そのマインドのことを「グループマインド」と呼びます。
組織を形成するのは一人一人の個人ですが、それがグループになると、そのグループとしての人格(グループマインド)を持つのです。
だから、組織においてはそのグループそれぞれに個性が生まれます。
そうすると、小さいグループを集めた上位のグループ(営業一課、二課、三課を集めた営業部のように)にもまたグループマインドが発生することになり、例えば「一課はとても優秀だけど、三課は問題ばかり起こしやがる」といったグループ単位での5つの役割も生じてきます。

組織長は自らもグループの一員となりつつも、そうしたグループマインドを見て、問題を解決していく必要があるのです。

ただ、何度も繰り返しますが、それぞれが家族(グループ)を救うために、愛するために、その役割を担っている、ということを忘れてはいけません。
その価値や役に立っている点からその人を見ていくことが重要です。

さて、その5つの役割について紹介していきましょう。

1.ヒーロー、ヒロイン

グループのリーダーとなり、お手本となり、グループを引っ張っていく存在。できる人、賢い人、発言力のある人、経験豊富な人、美しい、かっこいい人などがこのポジションに入ります。
一般的な家族においては、父親、長男、長女がこの役割に入ることが多く、組織においては長となる人、あるいは、成績優秀なメンバーがこれに当たります。

ポジティブな面としては、リーダーシップやまとめ役、目標、憧れ、理想の人としての存在感であり、そのグループにおける象徴的な存在になります。
また、周りから信頼と人望を与えられ、輝けるヒーロー、ヒロインとして行動することになります。
前面に立ってグループをリードしていく存在で、なくてはならない役割です。

それゆえにリーダー自身の停滞はグループ全体の停滞に繋がりますので、責任は重大です。
そのため人としての成熟性や責任感、業務遂行能力、行動力などが求められる役割で、ヒーローであるが故の孤独やストレスを抱えやすいものです。

ネガティブな面としては、出木杉君や学級委員長のようにちょっと煙たい、鼻持ちならない面が出て来たり、良かれと思ってグループを引っ張りすぎる傾向があります。
グループの問題児に対して攻撃を仕掛けたり、正しさや理想論を振りかざすこともあり、グループの中で孤立しやすい点もあります。
また、一人で暴走してしまうケースもあり、リーダーが同時に問題児になってしまうこともあります。
また、責任感からグループ全体を背負い込んでしまうところもあります。

このタイプの人は自分の能力や価値を正しく受け取ることが重要です。
そして、グループのメンバーに対しては話を聴き、メンバーの意向を受容するまとめ役になると、あなたは人望と信頼をより厚く集めることができ、グループの一体感を作ることができます。
また、時にはグループのために、敢えて先行して実績を作ることにより、グループメンバーを導く能力も持っています。

優秀な存在であるがゆえに孤立しやすいので、できるだけ他のメンバーとのコミュニケーションを密に取ることが重要です。
そして、このタイプの人は自分がヒーローであるがゆえに弱みを見せることが苦手です。
一人で抱え込んで潰れてしまわないためにも、そうした自分の弱さを受容し、コミュニケーションを取っていくことでより成熟したリーダーになることができます。
その弱みはメンバーの人たちにとっては自信と喜びに繋がるものです。そこは勇気を出してグループに自分自身を委ねる女性性のエネルギーがカギとなります。

このタイプの人がグループにいる場合、積極的に質問や相談を投げかけたりするといいでしょう。その態度にイラっとすることがあるかもしれませんし、嫉妬してしまうこともあるかもしれませんが、感謝と価値を見る目線で見ると、多くの点で助けられることがあります。
特に一人で抱え込みやすいタイプですので、そうした点に配慮できるとよりリーダーが成長し、グルーう全体に与える影響も大きくなります。

リーダーを中心に、そのリーダーをサポートすることはグループ全体を高めることになるだけでなく、自分自身が多くを学び、成長し、やがて自分がその役を担えるだけの実力を備えられるようになるのです。

2.犠牲者(我慢する人)

グループを底辺で支えようとするポジションです。一般的な家庭ではお母さんがその役にハマることが多いです。
「私はいいから」と他の人に成果を譲って自分はしんどいところ、我慢するところを担います。みんなのプロセスをよく観察して、自分は一番最後を付いていくイメージで、あまり成功や脚光を望みません。
その一方でその受容力からメンバーにとっては心の拠り所となり、リーダーに言えない思いを話しやすい存在です。だから、周りから頼られたり、愚痴を聞いたりすることになるでしょう。

リーダーを実質的に補佐するポジションですので、リーダーに怖れを感じている分だけ、メンバーは安心感を持ちます。

だから、自分がこのポジションにいる場合は、グループのために良かれと思うことを自ら発言し、提供していくことが理想的です。グループに置いてこの存在は要になっていることが多く、事実上のまとめ役となります。
そのため、リーダー役の人と密なコミュニケーションをとることにより、グループ内の距離を縮め、かつ、風通しのよさを作ることができます。

一方で、自分のことを放っておいて他の人を優先させてしまうことがあるので、「受け取る」ということを意識してください。

このタイプの人がグループにいる場合は、色々と甘えたり、頼ったりしまいがちですが、同時に感謝と価値をきちんと伝え、時にはグループの先頭に引っ張り出してあげることも意識してみましょう。
また、その人の思いや考えをきちんと引き出してあげるようにサポートしてあげるといいでしょう。
視野が広く、グループメンバーのよき理解者であるので、グループに対して有効な意見をたくさん出してくれる存在と認識してください。

3.傍観者(見てる人)

グループを外から眺めている存在で、あまり溶け込もうとせず、浮いているように感じられる存在です。
3人きょうだいの真ん中の子や、お母さんがリーダーになっている家族のお父さんがこのポジションに入りやすいものです。

イメージとしては、火の見やぐらに登ってグループ全体の様子を観察している人なので、とてもグループの様子を理解しており、グループの問題点をいち早く発見することができます。

とはいえ、傍観者に徹している分だけ、あまり溶け込もうとしないので、せっかく見つけた問題点がグループに受け入れられない葛藤も抱えます。
そのため、多くの傍観者は問題は見つけるが、ただそれを見守っているだけのことも多いです。

当然ですが、視野も広く、外の世界から新しい情報や知識を持ち込むこともできる存在なので、相談相手としてはとても頼りになる人です。

自分がこのタイプになった場合、客観的な視野を持っていることをメリットとして、グループに様々な提案をすることを意識してください。
その一方で、グループメンバーに対して距離を置き、深く関わらないようにしてしまうと、せっかくの有効な情報や知識をメンバーから拒否されることも多くなります。
そのため、常に火の見やぐらに乗っているだけでなく、時にはそこから降りてきてグループメンバーとのコミュニケーションをとるように意識しましょう。

グループのこの役割の人に対しては、一歩引いたポジションにいるため、「なんだあいつは」という目で見たくなります。
偉そうに客観的に見やがって、とリーダー役の人は特に敵視することもあるでしょう。
しかし、その視点はグループ全体の様子や問題点を訪ねるのに役立ちますし、筋の通った解決方法を知っていたり、グループに新しい風を吹き込む力を持っています。
だから、特にリーダー役の人がこの人をアテにするとグループ全体が引き締まり、また、傍観者役のこの人もグループに所属している感覚が養われるのでよりその力を発揮しやすくなるでしょう。

4.ヒール(問題児)

グループの問題を一身に背負って体現してくれる存在です。煙たがられたり、問題を見せたりして、特にリーダーや傍観者と衝突しやすく、メンバーからも嫌われやすい存在です。
しかし、この人が見せてくれるのは自分や自分たちのグループの問題点。
この人を見捨てることなく受け入れ、理解し、認めることで、グループは一気に飛躍します。
いわば、グループにおけるマイナスなリーダーになるのですが、それゆえ、とても重要な役割を担っています。

自分がこのタイプの場合は、周りに対して非協力的、攻撃的になったり、分離したり、逃走したり、拗ねたり、貢献を一切しなかったり、という問題を抱えます。
それはグループの問題点を一身に背負っているだけで、そのすべてが自分自身の問題ではないことに気付く必要があります。
また、罪悪感や劣等感、無力感などあらゆる問題を抱えやすくなるので、自己破壊的なパターンを持つケースもあります。

そこで重要なのは自分ひとりで問題を背負わず、自分を責めずに勇気を出してグループにシェアをすることです。
そして、グループのメンバーと協力し合い、その問題を解決していくように心がけることです。
攻撃されて傷ついたり、分離されたりといった不遇をかこつ場合も少なくないのですが、そこで引きこもったり、逃げたりするのではなく、助けを求めるのが理想です。

またグループのこのタイプの人に対してはついつい排除したり、攻撃したり、見捨てたり、嫌ったりしてしまいますが、それは内なる自分との葛藤を表しています。
この問題児は自分自身が抱える内なる問題を映し出してくれている鏡です。
だから、この人と向き合い、理解することで自分自身の内なる問題が解決していきます。
仮にこの人をグループから排除したとしても、新たな問題児があなたの前に現れます。
当然ですよね?自分の内側を投影しているのですから、あなたがその問題と向き合わないでいれば、次々と同じタイプの人が現れることになります。
特にリーダー役の存在は、このタイプの人とは衝突しやすくなります。
そのため、自分自身の問題として受け入れ、この人と向き合っていくことで、自分自身だけでなく、グループ全体を成長させることに繋がるのです。

多くの組織において問題児というのはグループマインドにおける問題点を明らかにしてくれる存在で、とても大切で貴重なものです。
それを切り離すことなく受け入れ理解し許していくことで、この問題児がグループ全体を救うヒーローに変身し、グループを一気に成長させます。
そこには大きな感動が生まれますから、グループの一体感も大きなものとなるでしょう。

5.チャーマー(ピエロ)

グループの中の末っ子のポジションで、みんなに可愛がれ、いじられる役割を背負いますが、その分、自分は何もできない、一人ではやっていけない、という劣等感や無価値感をを抱えます。
明るく、愛想もよく、可愛らしい人たちがこのポジションに入りますが、実は自信のない人であることも多いので、グループのメンバーは可愛がったり、癒されるだけでなく、きちんとその人の才能や魅力を引き出すことが重要です。

この存在はグループに癒しと笑いと喜びを与えてくれる存在で、なくてはならないものです。
しかし、その存在に甘えてしまうと、その人は常にピエロでいなくてはならなくなり、その実力を発揮する場が与えられません。
サーカスでもピエロになる人は実力者であることが多いように、チャーマーは無限の可能性を持っているのです。
そのことをグループのメンバーが理解し、その力を引き出すことに意識を向けることで、グループに大きなパワーが与えられるでしょう。

自分がこのタイプに入った場合は、愛され上手、受け取り上手な面を生かしつつ、自分から与えること、また、ヴィジョンを描くことに意識を向けます。
劣等感や自信の無さにフォーカスするのではなく、自分の価値にフォーカスすることでたくさんのものを受け取ることができます。
そして、自分がグループに与えている癒しや喜びや笑顔の価値を知ることで、自信を持つこともできます。
また、先ほども書いたように自分では気づかない実力を秘めていることが多いことを知りましょう。

さらに、チャーマーはグループメンバーの全体から愛される存在なので、それぞれを繋ぐ橋渡し役になります。衝突しやすいリーダー、傍観者、ヒールの間を取り持ったり、一人でじっと我慢している犠牲者を癒したり、グルーうの潤滑油として動けます。
これはグループにとって非常に大きな役割で、チャーマーが担う責任はグループにとっては実に重要なものであることが分かります。

グループのこのタイプの人に対しては「あいつは可愛いし、面白けれど、何もできない、分からない」なんてイメージで見てしまいがちですが、その内には可能性と実力が詰まっていることが多く、そこにフォーカスをすることでグループ全体をあっという間にまとめ上げてしまうことができます。
だから、意外かもしれませんが、この存在に逆に頼ったり、意見を求めたりすると驚くほど的確な答えが返って来ることも多いですし、対立しがちな関係性に置いて緩衝剤、潤滑油としての役割が担えるのでとても助けられることが多いでしょう。
感謝の気持ちを忘れずに接したい存在ですね。

そんな風にそれぞれの役割にはポジティブな面とネガティブな面があります。
そして、それらはグループ内で補完的に作用しますので、協力して解決に向かうことでグループの結束を高めることもできます。

例えば、ヒーローとヒールは衝突しやすいのですが、それを犠牲者役の人がふんふんと話を聴いて受け入れ、チャーマーが場の空気を和まし、また、時にそれぞれの連絡役となり、傍観者がどうしたらこの問題が解決できるのかを提案することで、その衝突が早く解決したりします。

さて、あなたの家族、そして、所属している組織では誰がどのポジションにいるかを考えてみるのも面白いのではないでしょうか。

「お父さんはヒーローだけど、時にヒールになってるなあ。
お母さんは犠牲者だけど、お父さんのいないときはヒロインでもあるね。
お姉ちゃんは傍観者兼ヒールだけど、時に鋭いことを言ってヒーローになってるし、末っ子の僕は明らかにチャーマーだけど、この間は学校で問題起こしてヒールになっちゃったな」

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