ココロのアンダーグラウンド(2/3)~そうせざるを得ない人の心に理解と許しを~



人は弱いものだから、どうしてもネガティブな思いが重なります。それを吐き出す場所がないとアンダーグラウンドに潜るんです。
それもまた、そうする他ない事情がさせることで、責められるべきものではないのです。

ココロのアンダーグラウンド(1/3)~表社会では処理し切れない、行き場のない思いがたどり着く場所~から続く。

下品な例えではありますが、どんなに美味しい料理を毎食頂いたとしても、翌日、あるいは、翌々日にはそれが“排泄物”として体外に出されます。
我が家の4歳児が愛好する言葉を借りれば、人間として健康であれば必ず、どうしたって“うんこ”をしたくなるんです。
しかし、その“うんこ”を悪いものと決めつければ、ふつうにご自宅、もしくは、勤務先、もしくは最寄りの駅のトイレに入ることができなくなります。

“うんこをする自分が許せない”というわけです。
そもそも“うんこ”が認められないわけです。

4歳児ならば全裸になってトイレに駆け込むことができるものを、社会的な地位を感じる大人はそれができなくなってしまうのです。
そうすると、人目に着かない場所で“うんこ”をすることになります。
それがアンダーグラウンドです。

表社会で生まれた“うんこ”とは安易な言い方ですが“ストレス”です。
いい私を演じた分だけ、悪い私が抑圧され、“ストレス”となり、心に溜まります。
深酒をし、飲み屋で悪口・愚痴・不平・不満を言うことができれば、そのストレスは多少は吐き出されます。
週末に好きなアウトドアを楽しみ、大自然の中で思い切り体を動かせば、そのストレスは軽減されます。
しかし、それができない、あるいは、それをした上でもまだ吐き出しきれないストレスは心の中に溜まっていくのです。

それこそ、東京湾に沈むヘドロのように。

しかし、それは一定限度を超えれば何らかの手段を使って吐き出さなければらなくなるんです。

それがA~Eさん自身、あるいはそのご主人の経験であり、Fさんのところに足繁く通うお客さんなのです。

他にもアンダーグラウンドっていっぱいあるんです。
人それぞれ「言えない」とか「秘密」とか「隠しておかなきゃ」って思うことがそれに当たるので、例えば、「人知れず実は煙草を吸っている」とか「副業をしている」とか「甘いものがやめられない」とか「マスターベーションを毎晩してる」とか「密かに動物を虐待している」とか「夜の高速を車で飛ばす」とか「女装・男装の趣味がある」とか「猫カフェに通ってる」とか本当にたくさんあります。
性的なものが多いのは、やはり秘密になりやすいからでしょう。

そういうお話を伺うたびに私はここで書いたような「人としての当たり前の心理」について語ります。

「そうするほかないんでしょう?」
「ほかに行き場はなかったんでしょう?」
「そこにしか逃げ場所はないんですよね」
「もし、そうしなかったら、今頃病気になってたかもしれませんね」

A~Eさんの事例は少し極端かもしれません。

私が知る限り、不倫の恋だったり、うまく行かない恋愛だったり、夫の不貞であったり、借金だったり、という問題の多くに、この心のアンダーグラウンドが関与していると思えるのです。

倫理的、法律的、社会的な見解はともかくとして、心理的に見れば、Aさんは体だけの関係を持つ男性を持たなければ、Bさんのご主人はギャンブルにハマらなければ、Cさんは不倫をしなければ、Dさんのご主人は複数の女性を抱えなければ、Eさんは浮気をしなければ、表社会での生活を維持することができないのです。

すなわち、「そうする他なかった」のが現実なのです。
そして、その不倫やギャンブルっていうのは「結果」なんです。
だから、そうなってしまう原因を断たなければ、その「結果」は変わらない、と思ってしまうのです。

それでAさんには「もっと日常の中でダメな私を出していきましょうね」とか、Bさんには「ご主人のギャンブルをやめさせたければ、あのいい人の仮面をはがさなきゃね」などの提案をしていくんです。

もちろん、それが最上級に難しいことと分かっていて、ですけれど。

例えば、Bさんのご主人にギャンブルを無理やり辞めさせたとしても、行き場のない感情は別のアンダーグラウンドを求め始めるでしょう。
今はギャンブルですが、それが女に変わるかもしれないし、酒に変わるかもしれません。(そしたら、Bさんは「うちの主人は酒が飲めないのでそれはないと思います」とおっしゃいましたけど)。

“起きていることはすべて正しい”と私は捉えていきます。
だから、「そうならざるを得なかった」「そうする他なかった」その心を解放していくことが解決への一番の道のりだと私は思っているんです。

そのためにはまずは「理解」と「許し」を提案していきます。
それぞれの生い立ちや過去の人間関係についてお聞きしていきます。
「なぜ、そうせざるを得なかったのか?」を私も理解したいからです。

ここからは2回にわたってA~Eさんのケースをご紹介していきます。

例えば、Aさんは子どもの頃からずっと「よくできる長女」の役割を背負ってきました。
家では手のかからないお姉ちゃんで、学校でも優等生で、社会人になっても周りから慕われる存在で、恋愛も「自分から告白しなくても、向こうから近づいてきてくれた」そうです。
そして、いつしか自分は「立派な大人の女性」としての「自意識」を持つに至りました。
恥をかくこと、失敗すること、そして、何よりも周りの期待を裏切ることを恐れるようになりました。
そして、いつしか彼女は「自分自身を生きる」というよりも、「周りが作り上げたAさん」という虚像を生きるようになったんです。

その虚像を生きることが苦しくなったとき、バランスをとるために、まったく逆の自分を必要とするようになったんです。
それが表には決して出せない男性との関係でした。

その男性たちもまた彼女とは“釣り合わない人”がほとんどなんです。
すなわち、問題のある、不誠実で、彼女を振り回すばかりのダメンズばかりなんですね。

でも、表に出ないアンダーグラウンドの関係の中で、彼女はひと時の安息を得ていたのです。
それは「完璧でなくてもいい」「情けなくてもいい」「ダメでもいい」「ちゃんとしてなくてもいい」「いい子じゃなくてもいい」「はしたなくてもいい」「だらしなくてもいい」などの内なる自分に戻れる瞬間でした。

それって誰にでもある“ふつうの部分”なんですが、彼女は表社会でそれを出すことを“許されていない”と感じていたので、アンダーグラウンドを求めるほかなかったんです。

だから、彼女はそれが「本当の自分」だと思うに至っていたんです。
表の社会にいる自分は周りの人たちが作り上げた偽りの自分。
男たちに振り回され、遊ばれ、辱められる自分こそが、本当の自分。

だとしたら、分かりますよね?
その世界を抜け出すことがどれくらい難しいのか。

Aさんは何度もそうした関係を断ち切ろうとしたんです。
しかし、持って1か月。
ほんとうに呼吸が苦しくなり、酸素を求めるように、彼らをまた求めてしまうのです。
そりゃ、そうですよね。
表と裏でバランスを取っていたんですから、いきなり裏をなくしてしまったら窒息してしまいます。

そんな彼女に私はまずすぐに彼らとの関係は切らない方が身のためだ、ということと、そのバランスを整えることをしていきましょう、と数か月に渡り、サポートさせていただきました。

カウンセリングとかセミナーって表と裏との中間の世界だと前から思っています。
アンダーグラウンドの自分を許し、解放・開放するための、一種のリハビリ施設だと。

だから、そういうアンダーグラウンドでしか見せられない自分の姿を語り、見せることで、不思議なほどに肩の力が降りていくんです。
結果、Aさんは男性との関係が切れるに連れ、私のセミナーやカウンセリングに通う頻度は増えていきました。

その中で私は、彼女の幼い時に我慢していたこと、今、自分が抑圧している気持ちを解放することに意識を向けていったんです。

以前、ブログでも紹介しましたが、ずっと我慢していい子をしている自分をロールプレイやイメージワークの手法を使って解放すしていくことにしました。
また、自分を許すために、毎晩のように男に身を委ねる自分を受け入れ、浄化するセッションをしていきました。
そして、そうしたセッションを元にたくさんの宿題を出して、日々、自分と向き合うことを提案し、それを日記に認めてもらいました。

そうしてある時、もう大丈夫だな、と思ったので信頼できる友人に今の自分の状況を話してもらうことにしたんです。
アンダーグラウンドの世界を表の社会に統合する作業の一環として。
激しい抵抗を感じましたが、彼女はそれを実践してくれました。
不思議なことにそれは職場の部下でもある男性だったんです。
彼は始め驚いた風に彼女の話を聞き、やがてはとても親身になって彼女を受け入れてくれました。
Aさん曰く「根本さんよりもよっぽど優しかったし、感動した」という大変失礼な感想と共に語ってくれました。

今ではその彼がAさんのご主人になり、今のところ幸せな家庭を築いています。
もちろん、男性たちとの関係はすっかり解消されました。

ココロのアンダーグラウンド(3/3)~表社会との統合に向けて~へ続く

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