「人は変わるのだ」



じゃがいも、にんじん、たまねぎをざく切りにして鍋に入れ、ひたひた程度の水を入れて火を入れる。沸騰したら弱火にし、蓋をして20分煮込む。
その後、醤油を少々回しかけて完成。

できた料理は「肉なし肉じゃが」。

砂糖もみりんも酒も入れず、野菜の甘みに醤油だけで「ほんとうに肉が入っているみたいな味」になっている。

半信半疑で作ったのだが、結果、驚きのデキであった。

以来、私はその料理を教えてくれた本の作者を神の如く尊敬し、いまや、カウンセリングの師匠を凌ぐ存在として崇めているのである。


そう、料理にハマっているのである。

とはいえ、上記のようにあまり手をかけなくてもいい(つまりは簡単にできる)、良く言えば、素材の味を引き出すようなものに限定されている上に、本を見ながらなので、あまり偉そうなことは言えない。

が、楽しい。

しかも、妻の食事療法に合わせ、動物性食品や砂糖、揚げ物を一切排除したメニューに限っているため、案外、調理の範囲は狭い。
すなわち、基本、使う食材は野菜、きのこ類、豆腐などで、しかも、できるだけ有機のものを揃えているので、にんじんやごぼうも皮を剥かず、そのまま使う。

ま、言い訳はともかくとして、「人は変わる」というお話をしたいのである。

それまでは料理は妻任せで、もし、料理が出来ていなければ外食が普通だった根本家において、今は夫婦揃ってキッチンに立ち、時には1人で晩御飯の用意をしたりするのである。

娘が「外にご飯食べに行きたい~」と叫ぶのも分かる、我が家の変革である。
(だから、たまに娘と二人でディナーデートをしたりしている。もっとも、回転寿司やマクドナルドなど、ムードも何もあったものじゃない場所ばかりを彼女は指定するのだが。照れくさいのだろうか?)

我ながら、禁断の領域に踏み込んでしまった気すらする。

そもそも、料理は嫌いなものではなかった。
淀川区に在住していた社会人時代にも料理にハマり、時間があれば、あれこれと本を見ながら料理を作っていた時期があった。
なぜか、ふろふき大根にハマり、相当綿密に研究を重ねた時代もあったし、肉+ジャガイモ+にんじん+たまねぎをベースに、日々、肉じゃが、シチュー、カレーとローテーションさせていただ時代もある。

妻はそれを知っているので、結婚して以来、「この人、本当は料理が出来るくせに、全然しないの」と愚痴をこぼすのもごもっともである。

忙しさにかまけたのと、妻の料理のセンスがよくて、出る幕が無かったということにしておきたい。

しかし、その「料理をしない夫」が変身したきっかけは、なんと、お菓子作りだったのである。
酒の肴ならばまだしも、まさかお菓子がデビュー戦とは我ながら驚きである。

世間に溢れるお菓子には一般的に「砂糖」が使われている(しかも、白砂糖)。
ので、それが禁止である妻にとっては、食べられる甘いものがほとんど存在しないのである。

そこで、調べたのが「マクロビ・クッキー」。

ま、私が作れるくらいだから、ものすごく簡単だった。

小麦粉と全粒粉と片栗粉と少々の塩。
菜種油とメープルシロップ。

これだけで作れるクッキーを見つけてしまったのである。

そして、元々料理が嫌いではない私は、面白半分でクッキーを作り、意外と美味しくできてしまった上に、妻や娘に持ち上げられ、気が付けば、キッチンに立つ時間がどんどん増えていったのである。

しかも・・・妻に便乗した食事を摂取するうちにみるみる体重が減り、東淀川区在住だった学生時代と同レベルに達することができたのである。
その成果は現在、あらゆるダイエットでも到達できなかった領域まで突き進んでおり、大変な快挙であり、当然、妻には感謝をしているのである。

ともかく、人は変わるのである。

呑みに行く回数は減り、酒を呑まなくても大丈夫な日も増え、なんだかとても健康的な日々を送っている。
おそらく数ヶ月前の自分が見たら信じられない、あり得ない食生活であろうと思う。

しかし、料理と言う新たなおもちゃを与えられた私は、毎日体重計に乗ることも楽しみの一つとなり、毎日が新鮮かつ面白いのである。

ということで、今夜は、木綿豆腐と麩をメインに作る「スパニッシュオムレツ」にでもチャレンジしてみようと思うのである。

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