子どもは親の価値観を打ち崩してくれる存在=本来の自分に戻してくれるのだ。



自分と価値観が違う子どもを持つとどうしても葛藤が生まれてしまいます。
しかし、それは自分が親から、周りから押し付けられたルールの中で生きてきたからではないでしょうか?
それをぶっ潰しに来てくれた存在、それが、子どもなんです。

育てにくい子ども、と感じるのはなぜかと言うと、自分とあまりにも違うから。
その子の価値観、行動パターンを理解できないから。
いわば、ぶっ飛んだ存在なのですね。

それを自分が思うようにコントロール(支配)しようとしたり、大人のルール等にて縛り付けようとしたりすると、当然子供は反発しますから、「言うこと利かない子」「何を考えているのか分からない子」となり、育てにくいと感じてしまいます。

そういう時、親は親でものすごく悩みますよね。
ほんとうはそんな怒りたくないし、責めたくないですから。
もっと笑顔で接したいと思いますし、優しくしたい、ちゃんと受け入れてあげたい、と思います。


あるママのお話。
息子さんは保育園で浮いた存在。みんなと同じ行動が取れないんですね。
だから、保護者参加のイベントがあるとママはすごく心配、不安になるんです。
実際、みんなが椅子に座っている時も、彼は自由に走り回っていますし、みんなが先生の言うとおり右に移動すると、彼は左に行ったり、右に行ったりちょこちょこ動き回ります。
そのたびにママは恥ずかしくなり、将来が心配になり、そして、あとで彼を厳しく怒ってしまうんです。その後、一人で自己嫌悪に陥ります。

小学校でちゃんとやっていけるかどうか。
他の子どもたちに迷惑をかけないか(たとえば、怪我をさせたらどうしよう、というダークストーリーをいつもママは描いていました)。
これで先生の言うことをちゃんと聞ける子になるのか。

その保育園は先生たちが寛容なので、そんな彼のことを温かく見守っていますし、ママを慰めてくれるのですが・・・。

話変わって子どもはみんなママを助けにやってきます。
だから、彼もきっとママを助けにやってきた存在のはず。
なのに心配ばかりかけて、むしろ、助けるとは逆の存在では?と思ってしまいます。

子育てをしているママ(パパ)は気付くと思うのですが、子どもと接していると、よく自分の子ども時代を思い出しますよね。
このママも同じで、息子を育てていく上で子ども時代のことをあれこれ思い出してきたのです。

彼女のお母さんはとても厳しく彼女を躾けました。
少しでも言うことを聞かないと激しく怒られるので彼女はいつしかお母さんの顔色を伺うようになっていました。
そして、学校でも優等生で、社会人としてもちゃんとした人を演じるようになっていました。もちろん、恋愛でもいい彼女をするのです。
だから、周りからはとても慕われる一方、いつも自分は窮屈で、束縛されていて、全然自由じゃないと思っていたのです。

子どもが出来たとき、この子のことは束縛せず、自由に育てたい・・・、この子も私と違って周りの目を気にしない、自由な子に育ってほしい、そう思ったそうです。

「じゃあ、叶ってますよね?」

私がそう言うと彼女はハッとしたような表情になりました。
彼は人目を気にせず保育園を自由に動き回っているのですから。

でも、そこに彼女が育って来た過去が観念として登場するんです。
「先生の言うことを聞かなければいけない」
「みんなと同じことをしていなければ恥ずかしい」
「浮いた存在は周りからいじめられる」

彼女はそれで苦しんだにもかかわらず、自分がそういう生き方をしてきたので、無意識的に彼にもそれを強要しようとしていたのです。

「自由に育ってほしいと言いながら、その自由を束縛してるのが私なんですね」

ため息交じりにママはおっしゃいました。

でも、無理ないんです。それ以外の方法を知らないわけですから。
子ども時代に親にルールを押し付けられた子供は、自分が親になると“自分の親とは違う”自分なりのルールを作って子どもを押し付けようとしてしまうのです。
だって、ルールを押し付ける以外の方法を知らないんです。それが染み付いてしまってるので、自由に育つ、なんてこと本の知識にしかありませんから。

そして、彼女とお話をしていて、すごく気付いたことがあるんです。
それはママ自身がすごく自由な人物だということ。
発想も、行動パターンも、性格も、話し方も、言い回しも。
また、過去に付き合ってきた彼氏も、また、自分が興味を持つ人物もみんな独特の価値観を持つ人たちでした。

「ママって本当はすごく自由人ですよね?その自由人を縛り付けようとしたんですから、あなたのお母さんもすごく苦労なさったでしょうね。だから、あんなに厳しくされたんじゃないでしょうか?」

だから、やっぱり息子はあなたを助けにやってきたんです。
『ママはもっと自由な人でしょ?人の目なんて気にしない、自由人でしょ?』
って教えてくれているんです。

すなわち、彼はこういう方法でママの価値観をぶっ潰し、本来の自由人に戻してくれようとしていると考えてはいかがでしょうか?

「これから息子のことを“師匠”って呼びましょうか?彼の行動を真似て、自分も好きなことをしていきましょう。」

彼女は自分のお母さんから「母親はずっと子どもと一緒にいるべき。自分の都合で子どもを一人にするなんてありえない」という法則を引き継いでいました。
だから、彼女は好きなライブに行くことも、本屋さんをゆっくり巡ることも、お気に入りのカフェで待ったり過ごすことも、子どもを産んでから一度もしていませんでした。

「“師匠”ならどうすると思います?」
「母親の言うことなど聞かずに、どんどんライブに行くと思います。」
「じゃあ、“師匠”の教えを守って、どんどんライブに行きましょう。」
「え?いいんですか?そんなことして・・・」
「“師匠”の教えに背いてはいけないんでしょう?それにママがそうして楽しむことが何よりも息子に贈るギフトですから。」

どんどんライブに行く、と言っても、彼女が育児放棄をすることは無いでしょう。
息子のことを心配するくらい、愛情が豊かですし、子育てそのものが嫌いなわけではないのですから。

だとしたら、行きたいと思うライブに行くことで、ママ自身が解放され、笑顔になり、楽しんで、解放されたとしたら、それは家族全員にとって恩恵になるのです。

子どもはママの価値観をぶっつぶし、本来の姿に戻してくれる存在、なのです。

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