悩みのすべては生活習慣病



ある糖尿病患者がこんなことを言ってました。
「糖尿病ってのは努力なしではなられへんねんで。5年や10年不摂生を続けたくらいじゃ、そうそうなられへんの知ってるか?何十年も何十年も不摂生を重ねてようやくなれる、選ばれし者の病気やねんで。」

物は言いよう、という一つの例ですけれど、確かにちょっとやそっとでは糖尿病も高血圧にもなれませんよね(ただ、体質的なことが原因での糖尿病は違いますが)。
だから“生活習慣病”と呼ばれるのでしょう。

しかし、これは心の世界にも当てはまるんです。
いやむしろ、私たちが抱える悩み、問題のすべては“生活習慣病”なのかもしれません。


例えば「人とうまくコミュニケーションができない」という問題があったとしましょう。
その問題はここ最近、突発的に表れたのか?と言うと、確かに気付いたのは最近かも知れないけれど、その素地はずーっと昔、たとえば、学生時代にいじめにあったこととか、人見知りが激しい性格だったこととか、お母さんとの関係がうまく行ってなかったこととかに端を発しているとすれば、その状態がずっと続いていて、この問題が生まれたと言えますよね。
長年引きずったものがあって、それが「コミュニケーションができない」という自分を作り上げているわけです。

また、10年目を迎えた夫婦の離婚問題。価値観の違いでケンカが多くなり、離婚話になってるとしたら、じゃあ、その価値観はどこから来たの?最近生まれたの?と言われたら、やはり違いますよね。おそらく結婚してから、というよりも、その前から続いている違いがぶつかって、今の問題となっているのです。
その違う価値観で何とか折り合いを付けてたけれど、それが限界に来てぶつかりあい、ケンカになってる、という感じでしょうか。
だとすると、この価値観そのものを“2人用”に変えることが問題解決の方向性となりそうです。

心の世界で言う“生活習慣”とは普段の「考え方」「価値観」「感じ方」のこと。

例えば、“自己主張が強い”という“生活習慣”をお持ちの方は、どこに行っても「ねえ、ねえ、私を見てよ」という態度を取りますよね。
そうすると、うまく行くときはいいんだけど、付き合った相手が「相手に合わせるタイプ」だとすると、その相手はずっと我慢し続けることとなり、やがて爆発してしまうかもしれません。
もちろん、その相手は“言いたいことを我慢する”という生活習慣をお持ちなわけですが。

悩みのすべてが生活習慣病だとすると、やはり生活改善が大切になります。
食べ物に気を付けたり、ストレスを減らしたり、運動をしたり、ということが大切なように、普段の考え方、意識の持ち方を工夫することが大切なのです。

今、離婚の危機が訪れて、それを対症療法的にクリアしたとしても、その問題を作っている“習慣”が改善されてなければ、早晩再び同じ問題がさらに大きなサイズでやってくるでしょう。

考え方を改善する(たとえば「人の話に耳を傾ける」「親子関係を見直す」「自分の気持ちに素直になる」など)と言っても、これまた一朝一夕にはできませんよね。
“習慣”を変えるわけですから、新しい価値観・考え方が“ふつう”になるまで継続する必要があります。

そのために私のカウンセリングでは大量の“宿題”が出されます。
例えば、こんな感じ。

・今から伝えるアファメーションを毎日唱えてください。
・お母さんに伝えたい感謝の気持ちを100個探してください。
・子供の頃したかったことや、諦めてしまったことを30個探してください。
・自分のいいところを友達10人に聞いて、書き留めて、それを毎日眺めてください。

とても1,2日ではできる量ではありません。
だいたい「これだけあれば、2,3か月は暇を潰せると思います(^^)」なんて言いながら宿題を出しています。

しなくても何も言いませんが、し続けてくれると、2、3か月、新しい価値観、新しい見方と向き合うことになります。
そうしたら、新しい考え方や価値観が自然と身に着く、なんて思ってるんですね。

もちろん、その価値観を作っているベースにある「感情」を見て行くこともとても大事なこと。
宿題の中で「お母さんへ感謝の気持ちを100個」って書いてますが、当然、この宿題が出るということは、お母さんと問題があった、ということです。
つまり、なかなか難しい、抵抗を感じるテーマです。

しかし、そこで子供時代の寂しかった思い出、怒り、理不尽さ、悲しさ、不安、幻滅等々の思いを取り戻していくとしたら、辛い感情に向き合いつつ、その感情の解放にも役立ちます。
(もちろん、そうした感情と向き合うには宿題だけでなく、セラピーもある程度は必要かと思われます。)

すなわち、薬や一時的な処方で数値が戻ったとしても、生活習慣が変わってなければまた元に戻ってしまうでしょう?
だから、根っこの部分の価値観や考え方から変えていくこと、これを大切にしたいんですね。
そのためにも気長に継続して何かを続ける、ということが大切ではないかと思うのです。

もちろん、糖尿病患者が「じゃあ、これから毎日ウォーキングしてください」と言ってもすぐに動けないように、新しい価値観を実践するためのモチベーションを上げることも重要です。(それこそが私の仕事だと思っていますけど)

そうして、問題としては性急に見せるものでも、それを作っているのが長年の習慣だとしたら、その問題に振り回されるのではなく、その内面(価値観、考え方)の方にぜひ意識を向けてみてください。
実際、それだけの余裕はあるはずです。
そして、その考え方を変えていくプロセスを大切にしていくと、問題というものは気にならなくなったり、いつの間にか無くなっているのです。

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