【プロローグ】
結婚4年目(付き合って10年目)の夫の浮気。
夫婦仲もずっと良かったが、しばらく前から様子が少しおかしかった。
その後、ふとした瞬間に浮気が発覚。大きなショックと絶望に襲われる。
夫はエリートビジネスマンで、バリバリ仕事をこなす頼もしい人。マジメで努力家な性格で、リーダーシップも強く、優しさやマメさも持ち合わせている。それゆえに浮気は似合わない、あり得ないと思っていた。
会社でも家族思いな面を見せていて、彼が浮気している姿を他の人はなかなか想像できないだろうと思われる。
ただ、仲が良い夫婦によくあることだが、セックスレス気味で、家族だけれども男と女とは言えない関係だった。
しかも、友美恵さんは夫から「かわいい、かわいい」とペット扱いされていて、女とは見られてなかった。
友美恵さんもどちらかというと受身な性格で、女としても扱われることは苦手だったし、自分から何かを主導することも敬遠するタイプ。
そんな彼女があるとき、夫の浮気に直面し、何とか乗り越えたい気持ちでカウンセリングの扉を開けることになる。
浮気という大きなショック、それに伴う感情のアップダウンによる疲労や絶望感。どうしても拭えない不安と怖れ、まだ起きた事が信じられない気持ちと、夫に対して湧き上がる不信感・・・そんな感情をいっぱい抱えながら、プロセスはスタートした。
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カウンセリングの実際「浮気と離婚の危機とセックスレスの向こう側にあったギフト」
[1/14]浮気の発覚とショック、そして、初めてのカウンセリング。
初めてお会いしたとき友美恵さんは、とても疲れた様子。ほんとうに何十キロも歩いて「ようやく辿り着きました・・・」という感じでした。
友美恵さん自身、あまりに大きなしんどさを抱えていたので、感覚が麻痺していて、自分がどんな気持ちなのかすらよく分からず、ただただ「しんどい」という状態でした。
しばらく前からご主人の様子がおかしく、あるとき思い切って彼の携帯をチェックして浮気が発覚したのですが、そのときはものすごいショックで、目の前が真っ白になったそうです。
それに彼の性格上、そう浮気をするタイプに思えなかったので、その事実を受け入れるのにすごく時間がかかりました。
頭の中でずーっと「そんなはずはない。夫がそんなことをするはずがない。私がそんな目に合うなんてあり得ない。何かの間違いだ。」と思っていたそうです。
私達はすごくショックなことが起きると、ブレーカが飛んでしまったように何も感じなくなり、ただ、目の前の出来事が嘘であって欲しいと願います。
でも、それは感じなくなっただけであって、実際は潜在意識下では様々な感情が動いているのです。
友美恵さんもそんな状態で、お会いしたときにはその山のように積もったしんどさ(「疲れ」という風に私には感じたのですが)と、無感覚・無感情な様子が印象的でした。
それくらい辛い状態なんだな・・・としみじみ感じたのを覚えています。
そして、ゆっくりその疲れ、しんどさを流すところから始めようと思ったものです。
何とかしたい気持ちは強くても、疲れ切った状態では何もできません。
それこそ、42.195kmを走った後に「さあ、家の掃除を始めましょう!」といわれても乗り気になれないのと同じです。
ただ、心の場合はそのことに気付きにくいのが問題。
心がそんなに疲れているのに、「頑張りますので、何とかしてください」と気丈に訴えられる方も少なくありません。
だから「時間はかかっても、じっくりやっていきましょう・・・。焦るな、というのは無理な話だけれど、焦って何かをしてもいい結果は生みませんから」というお話をさせていただきました。
友美恵さんに限りませんが、こうした問題が起きたときはパニックになっていたり、不安や怖れに押しつぶされそうになっていたり、そのストレスから非常に疲れたり、頑張ろうと思っても何もできない状態なんですね。
だから、最低限の状態を維持することをまずは目指してみるといいのです。
友美恵さんのような専業主婦の方はまずは今までどおり家事をきちんとします。普段どおりにできれば十分で、それ以上に頑張る必要はありません。
仕事を持ってらっしゃる方は、毎日会社に行き、できる範囲で仕事をしていくことでいいんです。中身の充実よりも、淡々とこなせればいい、という感じで。
もちろん、それは目標であって義務ではありませんから、「やろうとする」ことが大事なんですね。
こういうショックなことが起きた場合は日常生活がままならなくなります。
カウンセリングの最初に「眠れてますか?ご飯は食べられますか?」とお聞きすることがあるのですが、それくらい精神的なダメージが強いときも少なくありません。
でも、それで食事や睡眠などの基本生活が崩れると、心理的にはさらに追い詰められた感じになりますから、まずは日常生活をきちんと送ることが最初の目標なのです。
長期戦になることも少なくないですから、その基本的な生活の部分はとても大切になります。
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その頃、ご主人は出張と言い張って彼女のところへ通っていました。
その女性は前の会社の後輩だったようです。でも、詳しい様子は分かりません。ご主人は罪悪感があるのかないのか、マメに友美恵さんにも気を使ってくれていたそうですが、もちろん、彼女としては愛情が感じられないですから、寂しく、辛く、ひたすら哀しいのです。
しかし、不思議と怒りや嫉妬の感情はないそうです。
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一般的にはご主人が浮気をすれば、妻は嫉妬で怒り狂う・・・というのが定石なのですが、案外、その渦中にいる間は、深い悲しみは感じても、怒りや嫉妬の感情はなかなか認識辛いことも少なくありません。
普段から感情を抑える癖がある方の場合などは、自分でも驚くほど「怒り」を感じないんですね。
でも、本当にそれが無いわけでなく、心の中にはしっかりと怒りが溜まっているものです。
そして、その怒りはご主人との関係が良くなったり、自分の気持ちが吹っ切れたときに、フッと出てくるものでもあります。
また、ご主人はこういう時、あまり罪悪感にまみれた表情や態度は見せないものです。
「うちの夫は本当に罪悪感なんて感じてるんでしょうか?そんな風には見えないですけど」
とおっしゃるかたも少なくないのですが、罪悪感というのは「自分は罰せられるべきだ」という感情なので、悪い事をしてる自覚があればあるほど、そういう態度は見せないようにするものなのです。
そして、その感情が強いと、時に感情が爆発して(いわゆる逆切れして)、奥さんを責め出したり、自分を正当化したりもしますし、また、その言動は「とても人間としてどうか?と思うくらい」に暴力的なこともあるんですね。
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まずは、そうした心について、今後の進め方、考え方などについてカウンセリングさせていただきました。
「じっくり時間かけましょう。焦らずに、まずは自分の気持ちを見つめて見ましょう。
ご主人は今の段階では、自由にさせてあげるのが得策ですよ」と。
今制限をかけても余計に奥さんから離れていくだけなので、むしろ、放っておいて「好きにしてらっしゃい」と構えておく方が、有効なことが多いのです。
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一般に浮気された側は関係性の上では「依存側」の立場に立たされます。
依存側ということは、被害者であり、受身であり、主導権は相手が握っていて、自分には何もできない、という状態です。
事実その通りに感じられてしまうのですが、そのままではご主人が変わらない限り、浮気の問題が解決しないばかりか、自分の人生なのに、その主人公をご主人に譲ってしまっている状態でもあるんです。
だからこそ、「あんたが悪いんだから、早く何とかしてよ」という気持ちでご主人に迫ってしまいがちなのですが、それをすればするほど逆効果なんですよね。
だから、しんどいけれども一歩引いて見る意識がとても大切なのです。
こうして「好きにしてらっしゃい」とご主人を放っておくことは、執着を手放す行為の一つであり、ご主人との感情的なしがらみを解くことで自分に意識を向け、自分自身を取り戻していく(依存を手放す)ことができるのです。
こうした関係性の問題が起きたとき、その前向きな解決のためには、やはり依存状態をいかに早く抜け出すか?いかにスムーズに自分を取り戻すか?ということが重要になってくるようです。
だから、ご主人への執着を手放し、自分を取り戻す、ということが、最初のテーマになることが多いと思います。
カウンセリングの中では、好きなことをする、友だちと遊びに行く、仕事を頑張る、オシャレに気を使う、自分の体を大切にする、今こそダイエットに励む、など、自分に意識を向けられるような宿題を出して、できるだけ自分自身を見つめるサポートをさせていただいています。
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そして、意外に思われるかもしれませんが、夫婦間の浮気の問題をご相談いただいた際は
「友美恵さんが浮気しないようにね!」
と提案することが多いんですね。提案というよりは釘を刺させて頂くって感じなのですが。
なぜかというと、ご主人の浮気というのは女性としての自信を根底から覆す出来事ですよね。
そこでは自己評価も地に落ちます。
でも、カウンセリングを続けていったり、そうでなくても自分自身を磨き、成長させようとすれば、徐々に自信を取り戻していきます。
ところが、そうして自信を取り戻していっても大抵の場合はまだご主人の心は取り戻せていません。だから、「自信がでてきたんじゃないですか?」って私が伝えても、その現実的な根拠がありませんから、なかなか認められないんですね。
そうすると「とても魅力的なんだけれど、それに気付いていない一人の女性」が誕生するんです。
これはある意味とっても危険な“心に隙がある”状態です。
そして、不思議なことなのですが、そういうときに限って、必ずといって良いほど自分のレベルに見合う自分に合う男性が現れることが多いんです。
(でも、自分では魅力を認めていない分、感覚的には「自分よりも上のレベルの男性」のように感じられます)
実はその男、悪く言えば「リハビリ男」なのですが、女性としてご主人から愛されてない、見られてない反動から、心はかなり揺れ動くんですね。
もう何年ぶりかで「女としての私」の価値を見てもらったのですから。
そして、つい危ない橋を渡ってしまい、自分を見失ってしまう方も少なくないのです。
もちろん、その結果はかなり散々なことが多いです。
ご主人への罪悪感がてんこ盛り、復讐と納得させようとしても虚しさは尽きず、挙句は、ご主人がこちらを振り向いたときに受け入れられなくなることも少なくありません。
もちろん、こういうお話をすると、ほとんどの方が「私の場合は、そんなことは絶対ないですよ。出会いだって無いんですし」とおっしゃいます。
それを分かって伝える私も私ですけれど、そういう方に限って後で
「根本さんの予言が当たりました・・・」
なんて青い顔して慌てることも少なくないんです。
だって、受け取れてないだけで、かなり魅力的になってるわけですから、そりゃあ、男の一人や二人は寄ってくるよ・・・と私は思うんですけどね。
そして、友美恵さんの場合も、始めは「そんなこと絶対ないですよ」とおっしゃってたのですが、後々実に危ないところまで行く事になってしまうんです。