出張明けの火曜日は少々筋肉痛の足で目を覚ましました。
うわー、この感覚久しぶり・・・などと懐かしむ程度の軽いものだったんですが、前日の運動(散歩)が応えている風で、マッサージ歴30年のおばちゃんに「あんた、60代の体してるよ」と言われたことも少し納得です。
しかし、そのおばちゃん、
「お兄ちゃん、可愛い顔して・・・。まだハタチくらいでしょ?」
とのたまってまして、その眼力は相当疑ってかかっても宜しいかと・・・。
少々薄暗いホテルの部屋とはいえ、ハタチには見えないでしょ?
でも、本当にハタチに戻っちゃったような経験をしたのでコラムとしてお届けしたいいな・・・と。
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月曜日は予定通り、いつもの金山→名駅→帰宅ラインを変更しまして、懐かしい千種の街を巡ってきました。
前の晩に読んでいた小説に、過去の景色がフラッシュバックするシーンがあって、それがきっかけで千種に行こうと思ったのかもしれません。
切ない物語だったので、僕も自分自身の郷愁を感じたかったのかなあ・・・
もう彼此10年以上も昔なんですが、1年ほど、千種駅の程近い場所に住んでたんです。
寮に住み、予備校通いをしていました。
そこでは亡くなった親友Kと、とてもアホで濃い時間を過ごしてました。
だから、千種に行くということは、必然とKや仲間との思い出の場所を巡ることになるんです。
昼前に到着して、10数年前とほとんど変わってない駅前の風景に思わずニヤニヤしてしまいました。
授業中のためか人もまばらな予備校を歩き回り、かつて住んでいた寮の前を通り過ぎ、色んなものが微妙に変わった風景を楽しんでました。
記憶を辿るような、思い出の中を歩いているような、デジャヴが連発しているような不思議な気持ちになりながら歩いていくと、とっくに無くなっているだろうと思っていた、古ぼけた下宿が目に飛び込んできました。
そこはKが、最初に住んでいた寮を追い出されて辿りついた、日照時間ゼロ分の下宿です。
当時でも家賃が7,000円だったと記憶してますから、相当のものでしょう?
暇な時間はそこに集まって色んな話をしたり、彼の持っていた本を読み漁っていたりしてました。
小説のシーンのように、そこからKや昔の僕が笑いながら出てくるんじゃないかとドキドキしました。
誘いたいけど誘えない友達の家の前をうろうろしている子どものように、その玄関の前を行ったり来たりしていました。
とても不思議な感覚が襲ってきます。
その後は昔歩いたように閑静な住宅街を巡って、今池方面まで歩いていきました。
大通りから少し入った公園の傍に、昔、かなり通いつめた喫茶店があるんです。
この喫茶店ももう無いかもしれないなあ・・・と思ってたんですが、昔の姿そのまんまに今も営業されていまして、信じられない気持ちで中に入って見ました。
ご夫婦でやられてるお店なんですが、またお二人とも昔のまんま、全然歳を取っていませんし、店内の様子も、蹄鉄型のカウンターテーブルも、2台並んだトースターも、何も変わっていないように思えて、冷や汗をかきました。
ほんとに昔に戻っちゃった?なんて。
昔、よく食べてたメニューをオーダーして、待っていると、奥さんが
「もしかして、昔、うちに来てくれたことありませんでした?」と。
ええ、もう10年以上前ですけど、よくお邪魔してました。
「そうだよねー。河合塾だよね?いやー、今の声、確かに聞いた覚えがあったのよ。もしかしたらと思って・・・」
えー、ほんま?顔とかなら分かるけど、声覚えてるってすごいですねー。
その頃は毎日通ってましたけど、まさか、と思いましたよ。
一見さんのつもりで、ささっと帰るつもりやったのに・・・(笑)
「最近はすっかり変わってしまって、あんまり塾生がこっちまで来なくなったから、覚えてるんだろうね。でも、お店は変わってないでしょう?」
いやー、ほんまに変わってないですよ。
マスターもこのテーブルも昔のまんまだし、小説であるようなタイムスリップしちゃったのかと思ってマジで焦りましたよ。
ところで、K,覚えてます?
あいつとよくここに来てたんですけど。
「Kくん?ああ、あの亡くなった子だよね?残念だったよねえ。遠くの大学行ってからも、よく顔出してくれてたし、犬やコーヒー豆のこともあったから、亡くなったって聞いたときには、本当にびっくりしたのよ。」
Kのこと、その後のこと、色んな話に花が咲きました。
記念というわけじゃないですけど、久々にコーヒーチケットを入れさせてもらって店を後にしました。
その店は、チケット入れると、写真撮って一緒に貼ってくれる粋なお店なんです。
昔、Kがチケット入れてたときに僕も一緒に映ってるはずだから、探せば出てくるんですよね、きっと。
チケット買うって言ったら、マスターが「え?来れるの?」とおどけてました。
また顔を出す理由になるじゃないですか。
この店のお勧めはスーパーコンボ。
オムレツがとても美味しいのです。
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その後、そのまま帰ってしまうのはもったいない気持ちがして、昔のように、千種から栄まで歩いてみようと無謀な計画を立ててみました。
地下鉄なら2駅分ですよね。
本当に僕がハタチだった頃には、全然平気なその距離も、次の新栄の駅にたどり着く頃には、汗びっしょり&へろへろになってまして・・・
でも、不思議なもので、懐かしいような、新鮮なような街を歩いていると元気になっていくんですよね。
ハタチの自分が蘇ってきているんでしょうか。
でも、久屋大通の、見覚えのある大きな噴水までやってきたら、わけもなく叫びたくなってしまいました。
何かなー、色んなものが、混ざり合って、混乱してるような・・・そんな感じでした。
そして、ふと、並び立つビル群を眺めながら、びしょびしょになったシャツを着替えようと思ったんです。
昔ならば、そのまま踵を返して千種まで帰るところです。
でも、この日の僕は、ハタチの自分に別れを告げるべく、昔は決して入ること無かった百貨店に足を向けたのでした。