母を許す、ということ。



お母さんを許すと親友みたいに仲良くなって万事うまく行く!というわけではないと思っています。
ふつうに接し、適切な距離が取れる、大人の女同士の関係になるだけなのです。

根本先生へ

こんにちは。
いつもブログや書籍、セミナーで楽しく学ばせて頂いています。

職場や家庭などで日々起きた問題から、問題の相手に誰を投影しているのかに気づいたり感謝したり、自分の価値などが少しわかるようになってきました。
1年前、半年前の自分と比べれば、かなり自己肯定感も上がってきています。
長い間拒絶していた父への許しも進んでいるらしく、責め憎むよりも理解や愛情と感謝を感じることが増えました。

そしてより楽で幸せな人生を選ぶことを考えると『本丸・母親』を許さねばならないと思うようにもなりました。
そこで、生きている母親に関わることなく、母親を許せるのでしょうか? もし会ったとしても、現状の対応ができるのでしょうか?
私から見た母親は超依存で何もしないできないのに構われ甘えたがり、還暦手前だというのに男女構わず粘着質に媚びる人です。幼い私に虐待もしていました。
実家に居た頃は幾度となく罵倒しあいましたが、私が家を出てからは無視・拒絶し、長い間音信不通にしていました。
今は諸事情で月1回は実家に行っていますが、話しかけられても不快すぎて無視しています。気が向いたら一言くらいは返すこともありますが、母親もほぼ話しかけてきません。

怒りや不快感もありますが、年老いた母親に罪悪感も感じます。
でも許して普通の親子のように対応したらきっとひどい目に遭う、けれど母親の要求を拒否すれば罪悪感にも見舞われるに違いないとも思うのです。
母軸で思い込みだと頭ではわかっています。
でも許しのワークを進めてみようとしても「無理嫌気持ち悪い」と、心が全力で抵抗します。

私の環境や心が変化しつつあるこの機会に、こじれたもの全部ほぐしてあげたいのですが、母親を許した先の世界で母親を拒否しても大丈夫なのでしょうか。

愚問かもしれませんが、機会があれば、また教えてください。
最後になりましたが、長文ですみません。
いつも心地よく「入ってくる」文章やセミナーをありがとうございます。
(Yさん)

お母さんも話しかけてこないということは、距離を置かれてることに気付いているのでしょう。
内心はどう思っているかは定かではありませんが。

そんなお母さんを許したいと思えるようになったこと自体がYさんの成長ですよね。
一生恨んでやる!!と思ったとしても仕方のないことがあったわけですから、それだけYさん自身が大人になったというか、器がでかくなったのでしょう。

「許し」ということを長年見つめてきたのですが、実はそれほどハードルが高いことのようには思わなくなってきました。

Yさんがお母さんを許したとして、たぶん、関係性はそんなに変わりません。
実家に帰ってもあまり話をしないだろうし、相変わらず「嫌いだなあ」と思うこともあるでしょう。

ただ、実家に帰るときのプレッシャーはなくなり、お母さんの態度を見ても嫌悪感は減り、かつ、感謝の気持ちも他方で芽生えているし、かといって、じゃあ、好きか?と言われるとそうじゃないよね~という状態になるんじゃないかなあ、と思います。

もちろん、許しにも段階があるのですが、私ががここでいう許しというのは「生活に支障のない程度に抵抗感がなくなり、幸せに暮らせる状態」です。

母を許す、ということは、いわゆる、ふつうのおばちゃん(おばあちゃん)として接することができる状態を目指します。

「母と娘」の関係から、大人の女同士の付き合いに変わっていくことです。

娘として母を見ていると、色々と期待し、判断し、不満が出て、葛藤も生じます。

しかし、それが「ふつうのおばちゃん」として見れるようになると、「そういう人もいるわなあ」としてそうした葛藤は少なくなります。

距離の近い関係であることは変わらないけれど、自分とお母さんの間に線を引いて影響を受けなくなります(つまり、自分軸が確立されます)。
つまり、母と娘の状態で居続けることは、母軸で生きていることになり、だからこそ、嫌な気分になるわけです。

だから、私は私、母は母、という基本的なアファメーションも許しに使えます。

つまり、お母さんを許したら親友のように仲良くなって笑い合い、信頼し合い、感謝し合える関係になる、なんて思わなくても良いのです。
もちろん、そういう母娘もいますけど、それはきっと人としての相性の良さ、価値観の近さがあるからでしょう。

お母さんに対して自分軸でいられて常に適切な距離が取れるようになり、その影響を受けなくなる状態、これが許しの状態だと思っていただいて大丈夫です。

もし、Yさんが癒しマニアで「完全なる許し」を求めるのであれば話は違いますが、日常生活において、あるいは、今後、年老いていくお母さんに対して、平常心で関われるようになれたらいいのであれば、そのくらいの感覚を目標とすればいいと思います。

許しというのは何も肉体がこの世になくても成立するものでして、ということは、現実のお母さんと向き合うというよりは、内なるお母さんと向き合うことを主にしています。

Yさんの中にある「お母さん」と向き合うのです。

お母さんというのは人生で最も付き合いが古く、そして、最も影響を受ける人物です。
特に女性にとっては、同性の親ですから、大人の女性のモデルにもなります。
それで、個人やグループでのセッションをしていても、お母さんとの関係が何かと出てくるものなのです。

そのお母さんというのは実家にいるお母さんというよりも、その歴史の積み重ねから自分の中に作り上げたお母さん像です。(←ここがものすごく重要)

Yさんのお母さんは超依存的で粘着質で子どもを虐待する人です。

それは実際にそのようなことがあったからなのですが、それが“今現在も”Yさんの中に存在しているお母さんなのです。
そして、そのためにお母さんの前に出ると、“あの当時の私”が出て来て怯えたり、嫌悪したり、無視したりするようになるのです。

今の私、と、今のお母さん、が出会っているわけではないのです。

だから、内なるお母さんとまずは向き合ってみましょう、という提案をします。
(場合によっては、“あの当時の私”と向き合うことを先にすることもあります)

内なるお母さんに対して感じている感情を解放していきます。
怒り、恨み、憎しみ、悲しみ、寂しさ、不満等々を書き出すなり、話すなりしてしていくのです。
際限ないように思えますけれど、お母さんに恨み辛みが満載している方であっても、御恨み帳を数冊書けば少し気分が落ち着いてきます。

とはいえ、感情ですから、出しても出しても出てくるのものですから、次はその感情を作り出す仕組みを変えていきます。

そのひとつは理解。なぜ、お母さんがあのような態度を採ったのかを感情的に理解します。
もう一つは受容。大人の女性に成長したYさんが、あの時のお母さんをただ受け入れます。そういう人であることをただ受け入れるのです。

ここで「自分軸」というのを使って、「私は私、おかんはおかん」と線引きしつつ、「私は私の選択で幸せになれるし、おかんはおかんで幸せになれる」などとアファメーションをするのも効果的です。

そうすると「私のお母さん」という娘目線ではなく、客観的に「ひとりのおばちゃん」としてお母さんを認識できるようになります。

そして、次は感謝を使ってみます。
あのお母さんに感謝できること。
これはここまでのプロセスをある程度こなしていないとできないことかもしれません。

私も長年、こういうお仕事をしているお陰で様々な母娘関係に接して来ました。
ほんとうに感謝することなんて見つからないようなネグレクトおかんや、幼少期に家を出て行ってしまい、記憶にも残らないおかんもいます。

しかし、それであったとしても人間ってすごいんですよね。
感謝の思いを掘り当てることができます。

だから、ここは大いに時間をかけてみるといいでしょう。

そうして、感謝できることが見つかる頃にはお母さんに対して線引きができるようになっています。

劇的に楽になる、というよりは、肩の力が抜ける、という感じになります。

人によっては「お母さんのことを嫌っていたのではなく、自分のことが嫌いだったんだ」と気付いたり、「お母さんのことがほんとうは大好きだったんだ」ということを思い出したりされる方もいます。

そうして、理解、受容、感謝に意識を向けていると、だんだん実家に帰ってお母さんに接するのが苦痛じゃなくなってきますし、お母さんの言動に影響されなくなっていくでしょう。

お母さんに対して罪悪感を覚える、ということは、Yさんの中にお母さんへの愛がちゃんとある、という証です。

私は許しを無理やり勧めることはなく、その人が許せるようになりたい、と思ったときだけ、上記のような提案をしています。

また、こういうお母さんの話を聴くと、ある話を思い出します。
これは『人のために頑張りすぎて疲れたときに読む本』の5章で紹介している実話です。
少し長いですが、良かったら読んでみてください。
(編集前の文章ですので、実際の本の記述とは若干違いがあります)

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ある時、母親との関係に悩んだ女性がセッションにいらっしゃいました。
彼女の母親はとても心配症で彼女の行動にあれこれと口出しをし、時には彼女を侮辱したり、否定したりする言動を繰り返してきました。それで思春期に衝突をし、高校を卒業するとすぐに彼女は一人暮らしを始めました。
しかし、恋愛がうまく行かないことをきっかけに私のブログを見つけて下さり、どうやらその原因が母親との関係にあるのではないか?と思って来てくれたのです。
セッションを進めていくと、だんだんお母さんがなぜそんな態度を採ったのかが理解できるようになり、徐々に彼女のお母さんに対する怒りや恨みの感情は収まって行きました。
しかし、まったく愛情や感謝を示してくれなかった母親に対する気持ちから、「母親もカウンセリングを受けるべきだ」と思い付き、ある時、半ば強引にお母さんをカウンセリングルームに連れて来られたのです。

そこで、私はお母さんと1対1で話をする時間を作り、ゆっくりお話を伺うことにしたのです。そうすると始めは戸惑っていたお母さんも徐々に心を開いて下さり、このような話をしてくださったのです。

「私は良い母親ではないとずっと自分を責めています。あの子にはほんとうに申し訳ないことをしました。夫との関係が元々あまりうまくいっておらず、また、私は関東の出身で、関西には友達一人おらず、ずっと孤独だったのです。
それで、気持ちの持って行き場がなく、娘に辛く当たったりしたこともたくさんありました。そのたびに申し訳ない気持ちでいっぱいになるのですが、その時の私は娘に謝ることもできませんでした。
それでもあの子は明るく、元気にいつも私を励ましてくれました。あの子には弟がいるのですが、体が弱かったものですから私はそちらに手がかかりっきりで、娘にはとても寂しい思いをさせたと思います。
そんな時もあの子は私をよく手伝ってくれましたし、ほんとうに助かったのです。しかし、余裕がなかったせいか、私も未熟だったせいか、娘には感謝の気持ちを伝えることはありませんでした。
言おう言おうとはずっと思っていたのですが、その勇気が出ないままに、あの子は思春期になり、私に反抗するようになりました。
それも私のせいだと思いましたが、私も素直になれませんでしたから、さらにあの子には辛く当たってしまったのです。ほんとうにこんな母親で申し訳ないと思っています。」

最後は涙ながらに懺悔するように言葉を紡いでくださいました。それを聞いて、お母さんに私は「今からでも遅くないんじゃないでしょうか?娘さんはお母さんのことを助けたいからカウンセリングに連れてこられたのだと思います。ぜひ、その気持ちを娘さんに伝えてあげませんか?」と提案したのです。
しかし、お母さんは首を振り、「いや、今さら私がそのようなことを言っても娘は信じてくれないでしょう。それだけひどいことをした母親ですから恨まれても仕方がありません。」とおっしゃったのです。
そこで私は「それならば、この紙にそのお気持ちを書いてくださいませんか?このあと、娘さんとお会いしますから、私が伝書鳩になってお渡しさせていただきます」と伝えました。
それなら、と彼女はその後、時間をかけて娘さんへの思いを書き綴って下さったのです。それはほとんどが娘さんへの謝罪の言葉で埋め尽くされていましたので、私は「できれば感謝の言葉も入れてあげてください」とお願いしたほどでした。

そして、私は娘さんにそのコピー用紙に書かれた手紙を読んで頂きました。はじめは「嘘だ。お母さんは嘘をついている。こんなことを思っているわけがない」と抵抗していましたが、何度も読み返すうちに彼女の目にも大粒の涙が浮かんでいました。

彼女は一生懸命お母さんを助けてきました。弟の治療や面倒で大変なことを察していい子にしてきました。しかし、一度も感謝されたことも褒められたこともないので、逆にそれを恨むようになっていたのです。
しかし、それは真実ではありませんでした。お母さんは本当は彼女に感謝し、また、愛情をかけてやれなかったことを悔やみ、罪の意識を強く持っていたのです。

お母さんの手紙の最後には「○○(彼女の名前)がこんな私の娘に生まれて来てくれて、ほんとうに感謝しています。ありがとう。」という言葉が綴られていました。

その言葉を何度も読み返し、「根本さん、お母さんはほんとうにこう思っていると思います?」と聞いて来られました。
私は「嘘はついていらっしゃらないと思いますよ」と答えると、彼女は黙って頷き、「信じてみたいと思います。今日、お母さんを連れて来てほんとうによかったと思います。お母さんが楽になればいいと思っていたのですが、むしろ、私の方が助けられました。ありがとうございました。」と言い、カウンセリングルームを後にされました。

私たちが目に見えるものだけがすべてではありません。
あなたが今まで手を差し伸べ、気を使い、我慢することで助けられた人、喜んでくれた人、幸せを感じた人はきっといます。
さあ、それは誰でしょうか?
そして、もし、彼らがあなたに感謝しているとしたら、あなたはどのような気持ちになるでしょうか?

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