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完全に許す、ということは求めない方がいいです。
怒りがあるのも人間らしさ。だから、それを許すのが大事。
そして、自分を許す(愛する)こと、その当時の自分はもちろん、幼少期の自分も許してあげるのです。
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根本さま、初めまして。毎日ブログ記事を読むのを楽しみにしています。
ずっとリクエストしたかったのですが自分で解決できるかもと先延ばししていました。でもどうも一人では解決できず、何かアドバイスを頂けたらと思いメールさせて頂いています。
私は手酷いDVにより元夫と別れて約1年になります。暴言、暴力と無理やりの性行為が毎日続き、一歩間違えば頭が狂ってしまうような生き地獄の日々でした。お付き合い3年、結婚生活は1年でした。最終的に妊娠中にも関わらず馬乗りになって殴られ続け、警察を呼びそのまま別居し離婚することができました。
その後無事出産し、子供の御蔭で前向きに生きることができるようになりました。
問題は元夫への感情の処理です。彼は頻繁にメールでメッセージを送ってきます。離婚後カウンセリングに行っており自分が何をしてきたか、どれだけ酷いことをしてきたか理解できた、自分は変わった、と言います。そして養育費として毎月それなりの額を欠かさず振り込んできます。彼の希望は娘の人生に関わりたい、面会したいということらしいのです。
(お金は振り込んできますが、私の気持ちが落ち着いてOKが出るまで面会はいつまでも待つと言います。以前は自分の気持ち最優先の人でした。)
私は彼を許して前に進みたいです。恨んでいてもいいことはないし、彼の御蔭で自分の自己評価の低さに真っ向から向き合うことができました。今は自分のことを少しずつ認め、好きになってきつつあります。
乗り越えたいのに、彼にされたひとつひとつがフッと甦り、どうしようもなく苦しく怒りが湧いてきて許すものかと思ってしまいます。同時に、彼を許せる気持ちの時は、気分がとても緩やかで温かいのです。だから彼を許すことは私の人生にとってよいことだと思います。
それに・・・夫婦が鏡だとするなら、彼の仕打ちは全て私が永年自分にしてきたことなのだと思うと彼を責めても意味がないように感じます。私は家庭環境の影響で自分をずっと嫌ってきて、心の中でいつも罵倒し酷い扱いをしてきました。歴代彼氏に暴力を振るわれたことは一度もありませんでしたが、元夫は私を苦しめるため現れた、悪役の集大成のような人だったように思います。
長く書いてしまいましたが質問は、元夫を許したりまた怒りが湧いたりを行ったり来たりしていますが、完全に許して平安な気持ちを維持するには何をしたらいいのでしょうか。
手紙を書くことでしょうか、もっともっと自分を大切にすることに集中することでしょうか。時間がかかって当然のことと考えてもよいですか?
(Mさん)
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無事抜け出せてよかったです(^^)
しかし、ほんとしんどかったですね。
ただ、ちょうど別れて1年ですよね。
アルコールやギャンブルなどの依存症を克服した後で「もう大丈夫」って気を許しちゃうのが1年後くらいってのが多いんです。
DVの問題も似てるかも。
ヒトって良くも悪くも忘れる動物です。
記憶って感情と紐付いているので感受性の豊かな女性の方が男性よりも記憶力は高いです。でも、やっぱり時間が過ぎると「忘れちゃう」ってことが増えるんですね。
ただ、思考的な男の方が未来志向な分、「もう過ぎたことじゃないか」って話を持ち出すものですけどね。
DVやモラハラの問題。体を守ることが第一なので、ヤバいときは逃げ出すことをお勧めするのですが、やはり原則的には「自己攻撃が投影されてる」って見るんですね。
だから、おっしゃるように、
>彼の仕打ちは全て私が永年自分にしてきたことなのだと思うと彼を責めても意味がないように感じます。私は家庭環境の影響で自分をずっと嫌ってきて、心の中でいつも罵倒し酷い扱いをしてきました。
というところが、潜在意識の中にずーっとあったんですよね。
>元夫は私を苦しめるため現れた、悪役の集大成のような人だったように思います。
そう、そんな風に解釈で来たら素晴らしいなあ~。
「お前は自分をこんなにいじめてるんだぞ!攻撃してるんだぞ!」って教えてくれたのが彼だったわけです。
だから、なかなか暴力が続いても抜け出すのに時間がかかっちゃうんですよね。
それが、
>彼の御蔭で自分の自己評価の低さに真っ向から向き合うことができました。今は自分のことを少しずつ認め、好きになってきつつあります。
この1年でこれだけ変わって来れたことは素晴らしいことだと思います。
このまま自分を「好き」でいたいですね。
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さて、
>元夫を許したりまた怒りが湧いたりを行ったり来たりしていますが、完全に許して平安な気持ちを維持するには何をしたらいいのでしょうか。
というご質問ですが、許せる時間があったり、怒りでいっぱいになるときがあったりするのが「人間なんだな~」と“相田みつを”流に解釈できるのが一番いいと思います。
もちろん、その怒りの程度も大事なんですけど、完全に許す、とか目指さない方がいいです。完璧主義になっちゃいますし、完全さを目指すと「もう大丈夫と思った後に出てくる怒り」が許せなくなってしまいますから。
「許し」のプロセスには「怒りを持つことを許す」というのがあります。
この間東京で、来月大阪で「許しのワークショップ」を開催してるんですが、実はこの「怒りを許す」という実習を一番最初にやるんです。
要するに「ああ、怒っていいんだ」という許しですね。
当たり前のようで難しい「許し」です。
元夫への怒りがまだまだあっても大丈夫ってことを、まずは自分に許してあげて欲しいんですよね~。
「許し」にこだわるなら、「不完全な自分を許す」のはとっても大切な目標です。
実は私も奥さんとケンカしたり、他の人に対してムカついたりすることが良くあります。
「カウンセラーなのにケンカしたり、怒るなんて!!」なんて狭苦しいことは思いません。
基本、「そんな僕も愛されてるし~」という態度です。(この態度をあからさまに出すと奥さまの怒りに油を見事に注ぐ結果になることもよくあります。)
失敗しても、ミスをしても、「そんな僕も愛されてるし~、許されてるし~」ってことに気付けば自己攻撃は急激に減っていますし、その分だけ、うまい言い訳、面白いリカバリーショット、ネタ化などにエネルギーが向いていきます。
Mさんも本当は完全さを求めてるわけではないかもしれませんが、「日常生活に支障のない程度の怒り」をゴールにしてみるといいかもしれません。
この日常生活に支障のない程度の怒り、というのは、また恋をしたいな、結婚したいな、セックスがしたいな、という思いを持てる状態ってことです。
手紙を書くのはよくお勧めしています。
「旦那さん」に「怒りの手紙」「恨みの手紙」を書いてもいいでしょう。
また、その当時の自分を励ます、応援する手紙を書いてもいいと思います。
よく頑張ってるね、偉いね、辛いね、悲しいよね、って共感したり、承認する手紙です。
この後者の手紙はその時の自分を許すだけでなく、それ以前の自分を許す効果もありますからお勧めです。
なんせ、許しのゴールは「夫」ではなく「自分」ですから。
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もし、それだけ自己嫌悪が強くなる家庭環境だとすると、カウンセラーとしてはやはりそこを突っつきたくなりますね。
先日もある夫婦のカウンセリングで、もうすぐ調停になるかも、というご相談に対して、私が注目したのは「幼少期の家族の関係」でした。
「調停になってもならなくてもしなきゃいけないのは『私なんてどうでもいい存在なんでしょ?』って思ってる子ども時代の自分を愛することだよね」て話をしてました。
だから、もう少し掘り下げて、子ども時代の自分を許し、親を許す、というテーマをやってみてもいいかもしれませんね。
必要とあればカウンセリングやそういうセミナーもご利用ください。
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☆根本本。