暗闇ディナーを体験して、私がお話ししたりワークをしたりするセミナーを開催してきました。

銀座のとあるシティホテルのプレミアムフロア。

以前からこちらでTABEEC倶楽部さんに何度かセミナーを企画して頂いたのですが、今回はこれに「暗闇ディナー」が付いてくるのです。
私もぜひ体験してみたい!!と講師なのに参加者の皆さんと一緒にお食事を頂きました。

暗闇ディナーというのは視覚を遮断した状態でお料理を頂く会で、今回はフレンチのコース(前菜、スープ、お魚、お肉)を視覚以外の感覚を駆使して頂くのです。
元々1999年にスイスで始まった試みで、現在では世界中に広がっています。
日本に32万人いらっしゃるという全盲者と同じ体験をして理解を深めると同時に、五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)のうち、87%を占める視覚情報を遮断して、その他の感覚を磨く効果もあります。

私も全盲のクライアントさんを今まで何人もカウンセリングしてきましたが、そんな体験をするのは初めて。
ディナーの後は私のお話会があるというのに、もうワクワクしながら会場に到着しました。

部屋の入口でいきなりアイマスク。

「左に曲がってくださいね。右側に壁がありますから、そのまままっすぐ。ここで右に曲がってください。椅子があるのが分かりますか?私が椅子をお引きしますので御着席ください。」
主催者の方に案内してもらいながら席に着きます。

「お水を右側に置きますね」と教えてもらうものの、どこにあるのか分かりません。手探りでグラスを探し、口に運びます。この時点でドキドキです。

先に到着されて開始を待つ人々。すでに真っ暗な状況に中でひたすら待つしかありません。誰が隣に来たのか?どんな人なのか?も分かりません。
もちろん、部屋の広さ、内装やテーブルの様子もまったく分かりません。

いきなりシャンパンで乾杯。シャンパンが注がれたグラスが右手側に置かれるのですが、やはりどこにあるのか分かりません。
「倒しちゃダメだ」と細心の注意を払ってグラスを見つけ口に運びます。
「おいしい!」と思うよりもホッとする感覚の方が先に立ちます。

そして料理が運ばれてきます。
今回は一口サイズに揃えて頂いていますが、当然ながらお皿(手探りで位置を把握)のどこに料理が載っているのかまったくわかりません。
テーブルマナー通りに並べられているフォーク、ナイフを手に取るのですが、早速、「ん?どこ?これか?あれ?違う?あ、あった・・・。」と悪戦苦闘開始。

ようやく見付けたフォークとナイフの感覚だけで料理の位置を探り当て、フォークを突きさして口に運びます。

「あれ?うまく刺さらない・・・。あ、逃げた・・・。刺さった・・・あれ?でも、何もない・・・」

そんな葛藤を繰り返しながらサーモンの手まり仕立てを感触します。
それだけでものすごく神経を使い、どっと疲れてしまいそう。
あとで知ったのですが、キャビア添えだったそうです。全然、分からなかったぞ・・・。

次にスープが運ばれてきます。
もちろん、スプーンを手に取るところから苦労が始まります。
スープをこぼさないように、まずはスープ皿の形状を指先で感じ、あ、こんな感じか?とスープを口に運びます。

参加者の中には「食べることに必死すぎて味わう余裕がなかった」という方もいらっしゃいましたが、私も若干、そんな感じで、「このスープは豆類だよな。なんだ?そら豆か?違うか?」などと若干パニックになりつつありました。(正解はグリーンピースのスープ)

視覚があればあとどれくらい残っているのか?が分かりますが、全然分かりません。
スープの温度もぬるくして頂いたので火傷することはありませんが、これが熱々だったらヤバかったですね。

その次はパン。
奥の方にパン皿があり、その右側にバターが丸ごとおいてあるらしいです。
「11時の方向にパン皿があります」と教えて頂くのですが、全然探り当てられません。
スタッフの方に手を添えて頂いてようやく分かりました。

そこにバターを付けるのが至難の業。
思い切り摂りすぎて「パンを食ってるのか、バターを食ってるのか分からない」状態に。
中にはバターを途中で落としてしまった方もいらっしゃいました。

ふつうのディナーだったら「何やってんだよ!」ってツッコミが入るところですが、今回は「そうなるよね。無理ないよね。」と。

そして、お魚料理、お肉料理と続きます。

白身のお魚、クリーム系のソース。
淡白でよく知っている味だけど、何だ、この魚は?
鯛か?ひらめではないよな。もちろん、アジ、サバってことはないしな。

正解は「鯛」。
ソースは山椒とケッパーのバターソース。
言われてみれば香辛料と酸味があったな・・・でも、全然そんな余裕ありませんでした。

料理は五感で楽しむものと言われますが、あとで料理の写真を見せてもらってまさにその通りと思いました。

お肉は牛。一口サイズに切りそろえられています。しかも、フォアグラも!
付け合わせの野菜は5種。じゃがいも、にんじん、そら豆、しいたけ、ここまでは分かったのですが、「ん?甘いな。サツマイモ?」と思ったらカボチャでした。
案外、あてにならないものです。

しいたけやそら豆なんてとても小さいサイズですから、見つけられなかった方、うまく食べられなかった方もいらっしゃいました。
でも、不思議なことにスタートして1時間ほどで皆さん慣れて来たのか、だんだん上手に食べられるようになるんですよね。
私もナイフに当たるちょっとした感触で食材の位置を探り当て、フォークで刺して口に運ぶことがだいぶできるようになりました。

けど、フォークに載せるとか、食べやすいサイズにナイフで切るなんて芸当はまだまだ。
ものすごくいい体験ができました。

アイマスクを取って、室内の照明をつけてもらい、デザートタイムです。
ものすごく眩しい光の中、視覚の有難みをひしひしと感じました。

こちらが今回出して頂いたお料理。

こんなに美しく盛り付けて頂いていたんですね!!

皆と感想を言い合いながら私の担当時間がスタート。

視覚を遮断されるということは、日常、意識しない自分の行動パターンが見えてくるものです。
それは何か問題が起きたときに自分が取りやすい行動に気付かせてくれるものかもしれません。

思考に捉われる人。
うまくやろうとする人。
いい子になろうとする人。
頑張って必死になる人。
誰かのせいにする人。
文句を言う人。
それを楽しもうとする人。

そして、せっかくアイマスクがあるのだから、とペアでいろいろな実習をしてみました。

集合写真。せっかくなのでアイマスクを着けて。お陰でハートマークを付ける必要がなくなって楽です(笑)

私は視覚を遮断されることで、より嗅覚に意識が向くことが分かりました。
そういえば、料理でもお酒でも香りを意識することが多いのです。
味覚は案外あてにならぬものだな、ということも分かりました。
元々「美味しければよし」という主義なのです(笑)

ふだんなら一人でレストランに行って料理を待っている間はスマホをいじったり、あちこちきょろきょろしたりして過ごしています。
しかし、それができないとなったとき、瞑想状態になるように静かに落ち着いて時を過ごすことができました。

その一方で、周りの音が気になったり、どういう状態なのかを知りたくなったりして、人が案内してくれる声がどれくらい心強いかも分かりました。
視覚障碍者の方への接し方が極端に変わるということはないと思いますが、それでもどういう風にしてあげると安心して頂けるか?が体験できたのは大きかったです。

秋には同じくTABEEC倶楽部主催で「老人体験」ができるそうです。
きっと何かしら手や体に負荷をかけて、食事をする苦労を体験するそうです。
詳細が決まりましたらまたお知らせしますね。


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