「三種の神器」



「忙しい」という言葉を使うのは嫌なのであるが、どうも最近は仕事が溜まりに溜まる傾向があり、状況を客観的に見るに、やはり「忙しい」状態なのであろうと思う。
返信をしたいメールも山積みとなり、また、書きたいネタも「ネタ帳」にのみ溜まる一方で、文章を書くのが好きで、できれば物書きである程度収入を得たい私としては、実に欲求不満なのである。


他にもカウンセリングサービスのHPを見直したり、新たな企画を立てたり、来年に向けて考えなきゃいけないこともある。
そういう時間を割けないことこそがストレスになるところ、やはりワーカホリックなのであろうか。が、しかし、

「でも、飲みに行く時間は削りたくない・・・」

という心の声には素直に従う主義なので、まだ一応、意識は正常を保っていると言えるであろう。
とはいえ、かつてのように、飲み屋にパソコンを持ち込み、無線でネットに繋いで仕事する、という手段は使いたくないものである。

ただ、飲みに行っている間に編集者、ライター、放送作家氏などからよく電話がかかってくるのはなぜだろう?私の楽しみを邪魔したいのか?それとも、飲みの席でハートが全開になってるからなのか?実に不思議である。(特に「福岡」と「横浜」で多く起こる現象である。)

さて、そんな愚痴をつらつらと書いていたところ、私の作業を邪魔する輩がヒタヒタと近づいてきた。そして、ソファに手をかけ、私の足をよじ登ろうとするのである。

「パパに抱っこして欲しいのか。かわいいな~」

というわけではない。奴の狙いは、膝の上に置かれている、このノートパソコンである。

つい先ほども、つい油断をして左手でコーヒーを取りに手を伸ばしたら、右側から忍び寄った奴により、哀れなパソコンは叩き落とされてしまったのである。

生後8ヶ月とはいえ、成長十分な息子のパワーは侮れない。この間も妻が「タウンページを折り曲げてくしゃくしゃにして食べていた」と嘆いており、近々、どこかの親方がスカウトに来るんじゃないかと恐れおののいているのである。

とはいえ、さすがはパナソニックが手塩にかけたLet’s Noteである。ソファから床への数十センチのダイブごときではびくともせず、快調に作業は進められていたのは幸いである。

ただ、二度目のダイブに耐えられる自信はないため、ダイニングテーブルへと移動することにした。

成長著しい8ヶ月の幼児は、誰に似たのか7歳上のお姉ちゃんよりも顔がでかく、手足も非常に肉厚である。
握力もパンチ力も強いようで、今日も家のあちこちから「きゃー、痛い~。髪の毛ひっぱるのやめて~」という声が響いてくるのである。

その声を聞くたびに、彼が私に代わって日常の憂さを晴らしてくれているような気がするのは、ここだけの話である。

そんな乳児が好きなものもおおよそ見えてきた。

人間界では、1位はおねえちゃんである。やはり子ども同士、きょうだい同士、繋がるところがあるのか、娘を見るとニッコリ笑い、幸せそうな声を出しては、妻を嫉妬させている。

「7歳も離れてると、お姉ちゃん、良く面倒見てくれるでしょう?」

と会うたびに言われるのであるが、うちの“お姉ちゃん”は誰に似たのか非常に気まぐれにより、気分が向いたときはかわいがり、遊び、世話をするのであるが、そうでないときは泣こうが喚こうが一切無視する、Sっ気全開の姉である。

きっと将来、息子は見事な奴隷に調教されるに違いない。

さて、人間界2位はもちろん、妻である。「私がいつも面倒を見てるのに、なんでたまにしか面倒見ない娘がいいわけ?」と愚痴はたっぷりあるものの、やはり、ママを見るとニッコリし、近づいていき、笑う姿は、微笑ましい限りである。

もちろん、その可愛さに完全にノックアウトされている妻はそこで油断して抱っこしてしまい、結果、「きゃー、痛い~」という絶叫に繋がるのである。

そして、堂々の3位(最下位)はパパである。彼にとってパパとは「抱っこをしてくれる人」であり、ゆえに私が近づけば、笑顔とともに、両手足をビンと伸ばし、「さあ、抱っこせい」と言わんばかりのスタイルをとるのである。

“お姉ちゃん”の調教により、奴隷業が長い私は、もちろん、父の威厳を持って、手を伸ばすのである。そして、きゃっきゃ笑ってくれたら、それに勝る至福はないと自分を慰めるのである。

さて、人間界以外に奴が好むものは、やはり、ミルクである。
通常、離乳食の量が増えれば、その分ミルクは減ると巷間言われているのであるが、我が息子は一切の妥協無く、一定量を飲み切るのである。
これでは体重が無限に増えてしまうのではないか?と心配になるものの、どうやら、その分、きちんとカロリーは消費しているようで、ぶくぶくと一方的に太る、という状態にはまだ至っていない。とはいえ、近い将来の肥満児化が不安ではある。

そして、彼が好むものの最たるものと言えば、DVDデッキ、リモコン、各種コードの“三種の神器”である。

DVDデッキの開閉に大変興味があるようで、テーブルやクッション、おもちゃ等で防衛線を敷いたとしても、一切の妥協無く突入していくのである。そして、いつの間にか覚えた、トレイのオープン/クローズのボタンをひたすら押しまくるという悪行を働く。

まだ購入して1年半ゆえに壊されたらたまらないのであるが、難関を幾度も乗り越えていく姿には、幼いながらも頼もしさを感じるのである。ぜひ、その折れない心で人生の荒波を乗り越えて行って欲しいと思うのは親バカな証拠であろうか?(はい。そうです。)(例えが大げさです。先生。)

また、リモコン(時に携帯)は彼にとっては“食べ物”として認識されているのか、両手に持つととっても幸せそうな顔をし、そして、おもむろに口に運ぶのである。
今は何でも口に入れる時期ではあるものの、その様子を傍目に見ていると、懐かしいアニメ、Dr.スランプの「ガッちゃん」を髣髴させ、本当にそのまま食べてしまうのではないかとの錯覚を起こすのである。
その姿があまりに可愛いのでビデオに撮って You Tube に投稿しようかと思ったが、その前にリモコンが壊れる可能性があるので断念した。

さらに、コード類に至っては、奴の手の届かないところに隠しているはずなのだが、巧妙なテクニックで引っ張り出しては絡まっており、我が家には「きゃ~、やめて~」という妻の声が響き渡るのである。
そのコードを自ら巻くのか、はたまた、人形、姉、母の誰かに巻くのかで彼の将来の道が一つ決まると思うのだが、今のところはまだ引っ張る、食べる等の行動に留まっている。

こうした機械系のものに子どもが興味を示すことは噂では聞いていたが、娘はそんな顕著な傾向を示さなかったため、「やはり、男の子だから?」と思ってしまうのである。
確かに、男の子と女の子は違うなあ、というところもよく見えてきた。娘もたいがい暴力女であったのだが、やはり息子はそれに輪をかけてひどい暴力男である。
この調子で2歳児になった暁には、妻がセンス良く飾っている観葉植物や小物類などが軒並み破壊されるのではないかと怖れるのである。

なお、こうした奴の習性を活かし、携帯をエサとする“幼児釣り”は最近のマイブームである。もちろん、一旦つかまったら、奴の唾液塗れになること必須ゆえ、エサとなる携帯に防水機能はデフォルトである。

それにしても、数ヶ月前の“ただ寝てるだけ”だった時代が懐かしい。先ほどなども床に放っておいて仕事をしていると激しく泣き出したので、眠たくなったのかとおしゃぶりを与えてベビーベッドに運ぶも泣き止まず、抱っこしつつ、膝の上に乗せてみるとすっと泣き止んだ。
でも、この瞬間はなんだか嬉しい。

そして、いつあのパンチが飛んできてパソコンが破壊されないかヒヤヒヤしつつも、膝の上、両腕の間にちょこんと収まり、おしゃぶりで遊んでいる様子はたまらなくかわいい。

5分と持たずに暴れだした、と思ったら、そのまま寝てしまった。まさに“ありのまま”の生き方である。
仕事をしているパパの膝やお腹は温かくて気持ちいいかもしれないが、その姿勢が続くのはさすがにしんどいだろう。
ベッドに運び、急に静かになった部屋の中で仕事を進めることにする。

<写真は膝の上の乳児。巨大さをご理解いただくため、写真を縮小せずに掲載した>

乳児横顔

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