別れた後の「好き」は意外と思い込みが多い?



別れてもう半年が経とうというのに、まだ私の心からは彼が去ってくれない。ふとしたときにあの笑顔がパッと脳裏に現れて私を苦しめる。あの優しい声も、あのぬくもりもほんとうに些細な瞬間に訪れては私の胸をきゅーっとさせる。涙はさすがに出なくなったけれど、でも、悲しいやら寂しいやら、切ないやら、悔しいやら、どうしていいのか分からない気持ちに心が支配されていく。
いい加減、こんなことは止めてしまいたいと思うのだけど、なかなかうまくは行かない。
友達もさすがにこの話題に飽きてきたようで「まだ引きずってんの?あんたらしくない。さっさと次行こうか?とりあえず一発ヤッたら気がまぎれるんじゃない?」などと取り合ってくれなくなってきた。
きっと励ましのつもりもあるんだろうけど、そこで強がることしかできない自分もまた情けない。

いつまで彼のことを思い続けるのだろう?
次の男が現れるまでか?それとも、気が付けば自然と忘れられるのだろうか?


ネットで見つけた方法も色々と試してみた。
手紙を書いたり、瞑想のようなこともしたり。
少しは軽くなって来たと思う。でも、この拭いきれない思いはなかなか去ってくれない。
季節も2回も変わってしまった。もうすぐ彼に別れを告げられた時と同じコートを羽織る時期がやってくる。

それまでには何とかしなきゃ。

この私がカウンセリング?
すごく抵抗があった。「占いとかエステみたいなものよ」と友達は言ったけど。ていうか、彼女がカウンセリングに通っている、ということも未だに信じがたい。
彼女がお勧めと言うカウンセラーに予約を取って会いに行く、しかも、半年前に別れた男が忘れられないって情けない話を持って。

「うんうん」とカウンセラーを名乗る男は優しく聞いてくれた。
「辛かったでしょう」と。

「はい」と答えたけれど、何か同情されてるような気がして少しムッとした。
私も相当、素直じゃない。彼からも散々「お前はひねくれている」と指摘されてたところだ。

色々と話しているうちに、自分のダメなところがたくさん浮かび上がってきた。
相手の話を斜に構えて聞いてしまうところもそうだけど、言いたいことがうまく言葉にならず、違う話にしてしまう。
相手の優しさや思いやりが素直に受け入れられず、疑ってしまう。
きっとこの人だって、カウンセラーだから私を受け入れてくれるのであって、プライベートで会ったらこんな態度は取らないに違いない。

彼との関係を聞かれた。どれくらい付き合ってたの?どんな関係だったの?って。
色々辛い思いが溢れてきた。そして、迂闊にも涙が出て来た。
辛かったんだ、苦しかったんだ、とても悲しかったんだ、あれだけ好きだったんだ。
でも、もう一人なんだ。あの幸せな時間はもう戻って来ないんだ。

そんな思いをカウンセラーはじっと聞いてくれた。

色々と話して泣いて、少しふわっとした気分になった。眠たい様な、頭がぼーっとしている。決して悪くない気持ち。そうか、話を聴いてもらえるだけでこんなにも気持ちが楽になるものなのか。

「セラピーをしましょう」とカウンセラー氏は言う。
瞑想みたいなことらしい。ネットに書いてあったのと同じようなことなのだろうか。

指示通り彼を思い浮かべた。
笑った彼の顔が浮かぶ。
「ああ、彼が笑ってる。良かった」と思った。
「ごめんね」と言ってみた。
彼は「笑ったまま、いいよ。俺こそ、ごめん」と言ってくれた。
「寂しい。会いたい」って言ってみた。
でも、違う、と思った。もう十分って気がした。あれ?なんでだろう?と自分でも不思議な気持ちになった。彼も笑ったままだった。
「今までありがとう。幸せになってね」と言ってみた。
すーっと心が軽くなった。
そうか、ありがとう、が言いたかったのか。そう思ったら温かい気持ちになった。
「お前もな」と彼の言葉が聞こえた。すっと心の中に入ってきた。

もう、次に向かおう。
そう自然と思えた。でも、何だろう、さっきまでの重苦しい感覚は。

氏は「よくあることですよ」と笑って言っていた。
私のような思い込みの激しいタイプ(氏はそうは言わなかったけど)は彼のことを「好き」だと思い込んで、なかなかそれを離そうとしないらしい。
だから、実はもう彼のことは大丈夫なんだけど、その「好き」という思いをどこかにぶつけたくて、まだ彼のことを好きだと思い込むらしい。
「好きであることに執着する」のだそうだ。
なんじゃそれ?そんなことがあるのか?

でも、確かに私は思い込みが激しい、すなわち、妄想も激しい。
ちょっとしたことを膨らませて上がったり、落ちたりする。
彼のこともあれこれと思い出しては物語を作って勝手に凹んだり、泣いたりしていた。

どうしてそうなってしまうのかを聞いたら、氏は子ども時代、一人遊びが得意じゃなかった?って聞かれた。
うちは共働きで、きょうだいは兄が一人だけだったから、確かに一人で遊んでいた。
一人遊びをしていると、自然と妄想族になるそうだ。
「僕もそうなんですよ」と氏は笑って言ってた。そうは見えないけれど。

そういうところも子ども時代のことが関係するらしい。
少し興味を持って子どもの頃を思い出してみようと思った。
久々に兄と話をしてもいい。そう言えば、子どもの頃は兄のことが大好きだったな。

そういろいろと思い出しながらカウンセリングは終わった。

「彼に今会ったらどうします?」と聞かれた。
そんなこと、一番考えたくないことだった。
「ダッシュで逃げると思います」と答えて、部屋を後にした。

帰り道、不思議とふわふわと、軽い気持ちになっていた。
じわっと温かい感覚が続いている。
悪い気分じゃない。
いつもより穏やか、というか、落ち着いた感じがする。
目に飛び込んでくる景色も色が鮮やかな気がする。

ボーっとしながら家に向かった。
何も考えずボーっとするのも久しぶりだと思う。

とある乗換駅。
聞き覚えのある声が私を呼び止めた。

「どうしてんの、最近?」と彼は聞いた。
「ふつうだよ。相変わらずだよ。あんたは女でもできたか?」と逆に聞いたら
「そんなうまくいかないよ。お前は?」と返してくるので、
「何もないよ。いい人いたら紹介してよ」と答える自分がいた。

あれ?ふつうだ。
少しドキドキしてるけど、全然ふつうに話してる。

大丈夫だ、私。

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<おさらい>

・「好き」という思いは時に思い込みになる。
・別れた後、すでに消化されてる気持ちも、その思い込みにより「まだ好きなんだ」と誤解してしまうことがある。
・情熱的な人、妄想が得意な人、愛情豊かな人、恋に生きる人、がよくなりやすい。
・実際、心の中で彼と向き合ってみると、意外と簡単に手放せるのでそれが分かる。
・そうすると実際に会っても意外と平気だし、戻りたいとは思えなかったりする。

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