人との関係がうまく行かない理由~虎の威を借る狐のお話~



人との関係性について今週は紹介してますね。

人とうまく行かない理由。頑張ってるのに、努力しているのに、なぜかかみ合わない、気が付けば浮いている、なんてケースのご相談も多いです。
その中で、今回はいわゆるエリートだったり、学歴優秀だったりした方の「心の影」について、ちょっとお話ししたいと思います。

少し気持ち悪いような、でも、意外と「あるある」なお話ではないかな、と思います(^^)

「権威との葛藤」という言葉が心理学にはあります。権威(パワー)に対する葛藤で、目上の人に攻撃性を持ったり、リーダーシップを持つことへの怖れが強く出たりするなど、人間関係を見ていく上でとても大切な概念です。
この場合、権威者とは親、社長、上司、取引先、師匠、先生、社会、政治家、医師、弁護士等を指します。


さて、この権威との葛藤の現れ方に、「虎の威を借る狐」バージョンがあります。(もしくは、スネ夫バージョンと呼んでもいいかもしれませんね!)
例えば、あるセミナーに行ったときに「僕はここの主催者と仲がいいんですよ。結構ツーカーで、この間も飲みに連れて行ってもらったんです。」なんて“こっそり”自己紹介する人がいます。“こっそり”というのがポイントですね(笑)

本人はさりげなく、なのかもしれませんが、聞いてると「ん?」と違和感を感じます。つまり、「この主催者と仲がいい僕は特別なんですよ」とか「それくらい僕も偉いんですよ。尊重してくださいね」と裏でアピールされてるわけです。

気持ち悪っ!と思いません?(笑)

でも、当のご本人、あまり自らのその意図に気付いていないことも多いです。だから、気が付けば周りの人に疎んじられているような目によく会います。
でも、悲しいかな、そうしてなんとなく人に避けられてる、嫌われてるような気がするから、余計に「ね?知ってる?僕はあの主催者と親友なんですよ!!」と、ますます虎の威を借りて表現してしまうので、ますます悪循環になります。(仲がいい、から、親友、にバージョンアップしてます。)

また、そういうパターンがある方は、実際に、権威(この例だと主催者)に気に入られようとする行動に出ることが多いですね。
そうすると「仲がいい」ということも、あながちウソではなく、実際に食事に行くこともあるでしょう。
でも、それは自分を権威付けることが目的ですから、実際にその権威者の意見や意志に賛同しているとは限りません。
そして、残念ながら、その権威者にその意図を見抜かれていることも多く、徐々に距離を置かれるなんて切ないことも起こりやすいですね。

そして、そうしたイエスマンタイプとは逆の、権威に食って掛かることで自分を権威付けようというタイプの人もいます。

例えば、権威者を論破しようとする、その穴を探して指摘する、感情的に煽る等の行動に出ます。
こちらも聞いていて「あれ?」と違和感を感じることが多いんです。論点がずれていたり、「え?なんで?」みたいな重箱の隅を突く質問だったり。
そうして、権威者から謝罪の言葉や「分かりません」という言葉を引き出し、聴衆に「どうだ!」と暗に語りかけるわけです。

でも、それが正当な質問や論破ではなく、あくまで自分の存在を誇示する方法のため、聴衆には違和感を与えます。
だから、同種の意図を持った方以外からはあまり賛同を得られません。

こうした問題は、職場やサークル、近所づきあいなどの人間関係で「なぜかうまく行かないんです」とか「どこかトラブルに巻き込まれてしまうんです」というお話を伺っていると出てくることが多いです。

しかし、こういうことができる方って基本的に賢い人が多いですし、プライドも高いです。
むしろ、賢くて、プライドが高いゆえの行動なんですけどね。

そして、本人が無自覚でしていることも多く、なかなか指摘することも勇気が要ります。

この話を自分のことだと思って聴くと、すごく恥ずかしいというか、惨めと言うか、嫌な気分がしますよね。
だから、つい反発したくなりますし、プライドにかけても納得するわけには行きません。
それに賢いので、こちらの指摘に論理的な反論ができちゃったりします。(そうすると、そんなに賢くないこちらとしては、うーん・・・すいません・・・となってしまうわけです(笑))
あるいは、感情的に反発されてしまい、カウンセリングがそこで中断してしまうのも避けたいところですしね。

だから、カウンセラーとしては、まずは婉曲的な、たとえ話などを活用しながら気付きを得ていただこうとするのですが・・・。

ちょっと涙ぐましいでしょう?(笑)

私は最近はそういう婉曲的な表現も使いますが、カウンセリングの中では結構ストレートに言ってしまうことが多いです。
「めっちゃ気分悪い話してもいいですか?申し訳ないんですけど・・・」という風に。

ただ、そのための根拠をちゃんと用意しています。

なぜ、そうなってしまうのか?
大抵は幼少期の問題に行き着きます。親の期待に応えていい子をしてきた方、親の精神的な面倒を見る「親の親役」をやって来られた方、家柄や職業などでエリート意識を持ってやってきた方、学歴や職歴のコンプレックスを持つ方等々。

だから、そうした背景を伺い、「そうか、小さい頃、誰にも頼れず、全部自分一人でやってきたのか。そうしたら権威者に対して不信感もあれば、権威に愛されたいけど愛されない痛みも強くあるよね」となぜ、そうなってしまったのかの確信を持った上で、いざ、お話をしていきます。

「親の親」をするなんて、愛の行為そのものでしょう?
「親の期待に応える」なんて、どれくらい親を愛していたのでしょう?
だから、そういう方の中にはちゃんとビッグな愛があるわけです。

その人の心の中にある「愛」の部分を見つけて、そこに意識を置きながら話をします。
「今から嫌な話、めっちゃ気分悪い話、むかつく話をしますけど・・・」と前置きしながらお話しすると、意外と素直に聞いてくださることが多いような気がします。

そして、そうした原因が分かれば対処方法も考えられます。
「親の親」をやってきたんであれば、その役割を手放していくのが一番です。
親に反発して自立して生きてきたのであれば、親の存在を受け入れて行くアプローチがあります。
みんなの期待に応えるべく優等生をやってきたのであれば、やはり、その役割を手放して、ダメな自分を受け入れて行きます。

その人の中の愛さえ見つければ、なんとかなるんじゃないかと思っています。
虎の威を借りなければいけないくらいの自信のなさ、怖れ、不安、そして、無価値感、無力感がその人の中にはいっぱいあります。
そうした怖れや無価値感を解消していけば、このパターンも手放せるでしょう。
そうすれば、もともと愛に満ちた方なのですから、人気者に変わっていくこともできるのです。

今日はちょっと気持ち悪い(?)話をしたかもしれません。
正直言えば、私自身にも当てはまるところが多々ありますので、自戒を込めて書かせていただきました。プライドなんていらないのに、気が付くと影のようにそこにあったりします。

なお、最近私のカウンセリングやセミナーを受けられた方で「あ、あたしのこと言ってる」と思われた方。大丈夫です。あなたのことではありません!(笑)
自戒の意味で読まれるのはいいですが、私がそうなんだ、と思い込まないでください!

同様に「ああ、あたしのことだ・・・」と思われた方。ほとんどの方は、大丈夫です。あなたのことではありません(笑)
このパターンを持つ方はなかなか「私」に置き換えて読むことが難しいところがあります。

一方、読まれていて「背筋がヒヤッと」した方。もしかしたら、あなたに当てはまるお話しかもしれません。思い当たるところはありますか?
もし、素直にこのことを認めることができれば、あなたは人から愛される存在に成長できます。だから、焦らないでくださいね。

※参考:カウンセラー発!すぐに役立つ心理学講座
609-1.権威との葛藤~権威との葛藤とは?~
609-2.権威との葛藤~権威との葛藤が生まれるルーツ~
609-3.権威との葛藤~権威との関係が生み出す問題と癒し方~
609-4.権威との葛藤~リーダーの怖れとその癒しの先にあるもの~

心理学ミニ講座


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