そこは料理店というよりも、森の中の美術館を訪れたような感動がありました~大阪・fujiya1935~


我が社では月に1回、社員全員が集まってランチをしながら現状、そして、これからの話をしている。
充実したミーティングにするために私たちが「行きたい!」と思ったお店を選んでいる。
ちなみに社員といっても我が社は私と妻なので、全社ミーティングはすなわち夫婦水入らずのランチ会という側面も持っている。

そもそも食いだおれの街・大阪には美味しいお店は履いて捨てるほどある。
しかし、大阪にいるときは主に自宅で食事をし、家族で食べに行くにしても近隣のお店を利用することが多く、かつ、お子様連れになるため、大人なお店はほとんど知らないのである。
実際、東京・神楽坂や名古屋、福岡などのグルメ情報については詳しくなる一方であるが、地元大阪においては空洞化が進んでいる。
そのため、友人や仕事仲間などが「こんど大阪に行くんですよ!根本さんのお勧めの店はどこですか?」などと聞かれた際は答えに窮することになる。
そんな現状を打開したいという目的もあって始めたランチ・ミーティングであった。

さて、今回はずーーーっと前から行きたい、行きたいと思っていたfujiya1935にお邪魔してきた。先鋭的なスペイン料理のお店。ついに念願叶って、なのである。

念願、というのは、このお店の近くにはグループカウンセリングや規模の小さいセミナーで利用しているTRUNKというレンタルスペースがあり、「なんだかよさげなお店だなあ」と以前から思っていたせいである。
お店の名前を検索してみたところ、ミシュランの2つ星を持つ名店であることを知り、俄然、スイッチが入っていた。
それから1年以上が過ぎていると思う。店の前を通るたびに、いつかは!!と決意していたのである。

何度も目の前を通っていた入口。いよいよ、その日、この扉を開けることになった。

ドアを開けると薄暗い室内にこのオブジェ(?)が目に飛び込んでくる。水滴が1滴ずつ垂らされてぐるぐる回って真ん中の穴から落ちる芸術品である。和食における鹿威しのようなイメージであろうか?これは見入ってしまう。

この薄暗い場所はウェイティングスペースらしい。日常と非日常を隔絶するための効果があるのだろうか。

少量のお水が供される。よく冷えた、甘い水である。北海道の白樺がその木の中に溜め込んでいたものを集めたそうだ。

2階の席に案内される。白を基調にした、ウッディでシンプルな作りである。高級感溢れるというよりも、ナチュラルで静謐な空気感がある。

今日のメニュー。

1品目。いきなり度肝を抜かれる。木の皿の上にガラスのコップが置かれ、その上に蓮の葉が載せられる。そして、そこに広島県産のじゅんさいに透明なスープが合わせられ、そして、ミントの葉がそっと置かれている。梅雨時の池を旬の素材で描かれた一幅の絵画のようでもある。

アップにしてみよう。まことに信じられないが、この透明なスープ、実はトマトである。藤原シェフ(とても気さくで穏やかな人物だ)にはたった一品でハートをつかまれてしまった。

言ってしまえばコーンパンである。分かりやすいように房が敷いてある(笑)もちろん、こんな穴がたくさん開いている蒸しパンは初めてだ。

また、こんなものを!ガラス器にかわいい帽子が被せられ、実の付いた山椒の葉があしらわれている。日本ではあまり意識されていないが、料理人が芸術家に属する由縁はここにあるのだろう。

器の中には落花生がまぶされた天然鰻(琵琶湖産)が鎮座している。なるほど、だから山椒の葉と実なのか。

それまでガスウォーターで凌いでいたがここまでくれば我慢は不要である。

ハードパン。いいお店は当たり前にパンが美味しい。脇に添えられたクリームも絶品。

一見してこれが何か分かる人は相当目の肥えた人であろうと思う。まるでお花畑を描いたような一品で、そら豆と共に数々のハーブが散りばめられている。

お花畑の下には濃厚な味噌と共に仕上げられた毛ガニが待っている。

車海老と雲丹のカッペリーニ。あまりに美しいが、その感覚はもう麻痺していて、この程度では驚かないくらいに鍛えられている。雲丹をつぶしてソースにして頂く。ところで、ここはどこなんだ?北海道か?

メインは淡路島で自由に育てられた「くぬぎ座牛」。シェフの「ソースはかけておりませんので、隣のドライトマトと一緒にお召し上がりください。」という一言に萌えた。トマト嫌いな妻も喜んで食べていた。

岡山のヤギミルクで作られたシュークリーム。サクサク。あっさりしつつも濃厚。もちろん、臭みなど皆無。

ヨモギとイチゴのデザート。シーズン最後のイチゴなのだろう。

白樺の森の中の小さな美術館に併設されているカフェのようなここではこんなコーヒーカップがよく似合う。

最初のトマトのスープの感動を伝えると、天然のじゅんさいは年々収穫する農家さんが高齢化で減っていて、いつも同じところから仕入れられるとは限らず、高齢のおじいちゃん、おあばあちゃんが山に入って収穫をしてくれている話などを藤原シェフとさせていただいた。
もともと私はシェフとあれこれと話をするのが好きなので、こうした時間をきちんと作ってくれるお店はすぐにファンになってしまう。

夏の訪れを感じさせ、梅雨時のじめじめした空気をすーっと爽やかに流してくれた料理の数々は北海道の白樺の森を思い起こさせ、美術館を訪れたときのような心の落ち着きと感動を与えてくれた。

ここはほんとうに料理店なのだろうか?

もちろん、次回の予約をして店を後にした。
大阪の、あのうだるような真夏の日にどのような作品を見せてくれるのか、確かめずにはいられない性なのである。


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