癒着の問題。その苦しみと問題の切り離しの大切さについて。



癒着や共依存というのは些細な親子関係から始まり、それがパートナーシップなど他の関係性にも波及していきます。それを手放すにはまるでタバコをやめるかのような苦しみが伴いますが、信頼や親密感のためには大切なプロセスなのです。

年末に書いた記事『問題の「切り離し」について~相手は関係なく、それは自分自身の問題なのです~』を引用することが良くあります。

「癒着」や「共依存」の問題があるときはなおさら。
今日はそんなカウンセリングが多かったので特に強調していました。

例えば、お父さんがアルコール依存症で暴れていた、とか、お母さんが感情的、ヒステリック、愚痴を言う人だった、などの状況ですと、どうしても子供はその親の感情に振り回されることになります。

でも、これって誰にでも起こり得ることなんです。
「私の親は普通に優しかったよ」という家庭ですら起こり得ます。


細かい話ですが、「食べていいと言ってたお菓子を食べてたら、お母さんに怒られた」としてもパニックになりそうですよね?
「ごめんなさい」って謝るんだけど、納得はできないです。なんで?って思いがずっと付きまといます。

こういうことが日常的に起きていると、子どもは「親の顔色」を窺うようになりますね。
「これ、大丈夫かな?怒られないかな?」と不安になったり、こそこそしたりするようになります。
お母さんがいなくてもその気配を探知し続けます。
悪いことをしてるわけじゃないのに、悪いことをしてるような気持ちになって罪悪感だけが積み重なります。

そうして「感情のスイッチをお母さんに渡してしまう状態」を「依存」って言います。その結果、「自分の感情と相手の感情の区別が付かなくなってしまう」と「癒着」になります。
お互いにその感情のスイッチを交換して、感情を共有しているような状態が「共依存」です。

さて、こうした「癒着」の状態が生まれると他の人間関係にもそれが波及していきます。
いわば「癒着体質」になってしまうんですね。

お母さんと癒着して、それがパートナーとの関係でも再現し、また仕事やお金と癒着してしまう・・・そんなパターンが生まれるんです。
そして・・・

・自分の意見が言えない
・人の顔色を窺ってしまう
・自分の気持ちが分からない
・自分で物事を決められない
・誰かに頼りたくなる(依存したくなる)
・自分一人では何もできないと思う
・自己嫌悪が強い
・何かあると自分のせいだと思う

そんな心理が生まれます。
これはすべて繋がって来るのです。

癒着すると相手の感情に支配されるようになりますから、自由はありませんし、とても窮屈で苦しくなります。
いわば、体を接着剤でくっ付けてしまっているようなものですから、ものすごく不自由なわけです。

でも、安心なんですね。相手に任せておけるから。楽なんです。決めなくていいし、責任を取らなくて済むから。(でも、その割は大きな代償を払っているのですが)

そうすると「自己喪失」になります。
その状態では当然自分の幸せを選ぶなんてことはできません。

だから冒頭にお話ししました「問題の切り離し」がまずは大切なんです。

実はここに少しカラクリがありまして・・・。
本当に癒着状態にある人は一人ではカウンセリングに来れないのです。(その相手と一緒に来るか、癒着を手放すことを察知するのかカウンセリングに来られません)

だから、カウンセリングに来られた、セミナーに足を運んだ、という時点で、切り離しの気持ち、準備、覚悟はある程度できているんです。

昨日もこんなアファメーションを提案しました。

「夫には夫の人生がある。
 娘には娘の人生がある。
 私には私の人生がある。」

癒着がもっときつかった方にはこんなアファメーションを毎日してもらいました。
「娘には娘の人生があって私には関係がない。娘には娘の幸せがあり、彼女は自分の意志で幸せを選ぶことができる」
(そう、娘さんと癒着されてたんです)

癒着が強いとこのセリフを言うことにすごく抵抗が出て来るんです。
良かったら試してみてください。

「私は私、相手は相手」と切り分けることができて、ようやく対等な関係になります。
そして、「信頼」し、「つながる」ことができ、「親密感」や「愛」を感じられるようになるんですね。

とはいえ、癒着を切り離すカウンセリングはクライアントさんにとっては嫌な、苦しい話を聞かされることになるので、しんどいんですよね。
なかなかすぐにスッキリというわけにもいかず、しばし悶々としてしまいます。
(そのアファメーションを唱えるたびに号泣して胸を掻き毟りたくなる、という方もいました)

苦しいし、気持ちに反するし、なかなか難しく感じます。

そうタバコをやめるとか、お酒をやめるとか、甘いモノ断ちをするとかダイエットをするとか、そういう類によく似ています。
だから、始めはすごく苦しいんです。
でも、そこを乗り越えるとすーっと楽になります。
しばしの我慢と頑張りをお願いします。

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