相手の問題は自分の問題。ならば、自分を変えることで、問題も無くせるのです。



私のカウンセリングスタイルの一つに「バランスの法則」があります。
人間関係はお互いのバランスを取り合うもので、一方が「いい人」であれば、他方は「悪い人」になりやすく、一方が「男性的」になれば、他方は「女性的」役割を担うようになります。

※このあたりの話は心理学講座「バランスの法則3(1)~心はバランスを取りたがるもの~」に詳しいです。

人間関係がバランスを取りたがるということは、何か問題が起きたときも、その人に100%責任があるのではなく、お互いに50%:50%等の責任を負うわけです。(これはアカウンタビリティの法則にも通じるものがあります。心理学講座「アカウンタビリティ(責任の概念)(1)~アカウンタビリティとは?~」


すなわち、その問題は相手だけの問題ではなく、自分自身も当事者であり、相手を変えることだけではその問題は解決しないことを示しています。

例えば、かなりミスの多い部下がいるとして、多くの上司はその部下がミスを犯さないように注意したり、指導したりしようとします。
それで無くなる分にはいいけれど、でも、そこにもバランスの法則が存在していることに気付く必要があります。

部下がミスをするということは、自分自身にも責任がある、ということです。
もしかしたら、指導の仕方が厳しく、部下が委縮してしまって余計にミスを犯しているのかもしれないし、逆に指導しているといっても形式的なもので気持ちが伝わらず、部下も本気で改善しようと思わないのかもしれません。
また、仕事のできるチームメンバーを補佐に付けたところで、心理的な競争心から一層モチベーションが落ちてミスが乱発しているのかもしれません。

そこで、改めて自分自身を振り返ってみるんです。
どこか完璧主義になっていないか?上の評価を気にして部下への意識が希薄になっていないか?理想の部下を押し付けていないか?その部下自身の個性をきちんと把握できているのか?信頼関係をちゃんと築いているのか?等です。

「部下のミスが自分に教えてくれていることはなんだろう?」

と自分自身を見つめ、そのミスをすることを通じて自分が教えられていることを学ぶ必要があるのです。

特に、そのミスに強い怒りや受け入れがたい反発を感じる場合ほど、実はその部下のミスはあなたに重要なメッセージを送ってくれていると言えます。

もし、それを自分自身のものと受け入れられない場合、きっとあなたはミスを犯す部下を切り続ける上司にしかならないでしょう。
それはあたかも、自分自身に対してしているように。

このバランスの法則は、あらゆる人間関係に当てはまります。
ワンマン社長とイエスマンの部下、ヒステリックなお母ちゃんにクールな父親、アルコール依存症の父親とその父に「お酒を飲ませたら大人しくなるから」と酒を差し出す母親の関係や、社会的地位のある親と非行に走る息子の関係、借金を繰り返す子どもとそれを補てんし続ける親、浮気を繰り返す夫と母子癒着のある妻などにも言えます。

皆さんがもし、人間関係に問題を抱えているとすれば、その相手と自分自身との絶妙なバランスについて注目してみるといいかもしれません。

そして、その問題がお互いのバランスの上に成り立っているとすれば、自分自身を変えることで、その問題にインパクトを与えることができるわけです。

完璧主義できちっとしていた上司が自分にもっと自由や楽さを与えることで、部下のミスを減らした例があります。
子どもにべったりだった妻がもっと自分を大切にし、夫にちゃんと目を向けることで、夫の浮気が収まった例もあります。
さらに、自分自身を癒すことにより、息子の難病を治したお母さんもいます。

問題を起こすのは相手かもしれないけれど、その相手とつながっている以上、自分自身を変えることで問題を解決することができるのです。

すなわち、常に「今の自分にできること」は存在しています。

ぜひ、参考にしていただければ幸いです。

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