堕落した休日を過ごしてきた。11月の話だけど。



お客さんに「堕落した休日」をさんざん勧めてた。
甘党なら「朝からホールケーキ」、左党なら「朝からビール」。(これが日本酒だとさらに堕落感は高まる)
無理をすることないのだが、「非日常」の中に身を置くと、心(体)は勝手にリラックスを始める。
例えば「平日の休日」という、その響きだけで気が緩んでこないだろうか?

時々私はそんな休日を作る。
「この日は堕落する」と決めるのである。(ほんとうの堕落は日付を決めたりしないが、スケジュール上、はっきり決めておかないとほかの用事を入れてしまう可能性があるのだ。)

ちょうど妻もお休みだったので勇躍2人で大好きな和歌山の温泉に向かった。
「特急くろしお」は新大阪を出ると貨物線を通るので大阪駅はスルーする。そうすると見えてくるのは大阪駅の北側に聳えるグランフロントのビル群である。
月に何日かはそこを仕事場としている私は、そのフロアに向かって杯を手向ける。礼儀である(笑)

グランフロントとビール。

グランフロントとビール。

ものの1時間で和歌山駅に着く。東口からタクシーで10分も走ればそこは私の大好きな「花山温泉」である。
しかし、この日、驚くなかれ、定休日であった。
あまりに愕然としすぎて「定休日」と書かれた札の写メを撮り忘れたくらいである。

意気消沈する私たちに向かって気のいい運ちゃんは「少し遠いけど、いい温泉あるよ」と連れて行ってくれたのが、マリンパークにある「黒潮温泉」である。
確かに魚が食いたいと思った・・・
海を見たいと電車の中で語り合った・・・
確かに温泉からは海が眺められ、この温泉の目の前は黒潮市場である。

黒潮温泉。

黒潮温泉。

源泉が冷たくて気持ちのいい温泉であった。花山との比較は意味はないが、これはこれでアリと思い込み、いかにしてこれをネタにするかを考えながらサウナで汗をかいたりしていた。

黒潮一番の寿司&寿司。

黒潮一番の寿司&寿司。

市場の中では食べたいものを指名して購入し、店の外の席で自由に食べるスタイルである。
寿司をあれこれ買い込んでビールと共に陽光の中、気分はすっかり解放された。
和歌山だから暖かいのか、たまたまこの日がそうだったのか、海風が心地よく、埠頭にはお決まりの猫が日向ぼっこをしている長閑な昼下がりであった。

しかし、物足りない感は否めない。全然堕落してないやん!観光してるやん!お土産いっぱい買って嬉しそうやん!それって旅やん!?というわけで、ここを案内してくれたタクシーの運ちゃんを呼び出して駅前まで連れて行ってもらう。

名店、多田屋。

名店、多田屋。

和歌山駅前に店を構える名店、多田屋である。
大衆酒場の匂いしかしない、この店は私にとって「和歌山市=花山温泉=多田屋」と定義されるほどの重要拠点であり、和歌山に来てここに来ずは、焼き肉やでシーフードばかり食べるに等しい。

ビールはすでに入っていたので「温かいお酒」をお願いする。
そうすると店のおばちゃんはごく当たり前に電気ポットにグラスを近づけ、ジャーっと出てきた液体を私の前にポンと置く。
そう、そういうシステムなのである。

熱燗はポットから注がれる。

熱燗はポットから注がれる。

しかも、そうして供される燗酒がなぜかうまい。
銘柄は忘れてしまったが、そもそもいい酒をあっためてることは間違いはない。
邪道!と切り捨てたいところであるが、この大衆くさい雰囲気と、それでも味を落としてないクオリティに免じて、私はお代わりをした。

そもそもこの多田屋さんは酒屋であり、日本各地の地酒があり、それを冷酒としてオーダーすることも可能である。
酒屋がやってる居酒屋。すなわち居酒屋のルーツであり、いわゆる角打ちなのである。

壁一面に並べられたメニューの数々。
大衆ゆえに、刺身、サラダ、焼き物、炒め物、煮物・おでん、揚げ物、ご飯もの、珍味等々なんでもある。
昼はランチだってやってるのでご飯もある。

適当にオーダーしてあれこれ飲んでいるうちに夫婦ともどもすっかり出来上がった。

ご機嫌な2人。

ご機嫌な2人。

私の横で写るとより小顔になると評判で、最近はこのスタンスの写真が多い(笑)
時計を見ると余裕だったはずの特急が間もなく到着する時刻であった。
店を出て徒歩2分でホームである。

堕落した、というよりは旅をした一日であったが、どちらにせよ、リフレッシュできたことに違いはない。
帰りの特急は白浜帰りの客を乗せていて尚更旅気分が盛り上がる。
もう酒は十分と、車窓を眺めているうちに気が付けば寝てしまっていた。それもまた最高のリフレッシュに違いない。

ちなみにこのリベンジは後日行われた。無事、花山温泉に浸かってきたのである。


あわせて読みたい