「嫌で苦手な上司」と思うのは「助けたい」から!?~掘り下げの実例~



「どんなところが嫌なの?」というリストアップから始まった掘り下げ作業。
どんどん進んでいくと「助けたい」という気持ちがあることに気付かされます。
私たちの心の奥にはどうもこの「愛」の層があるようなのです。

相性が合わない、苦手な上司との関係性のご相談。
精神的にもだいぶ参ってしまうので、ここはひとつじっくり向き合ってみることに。

「何が嫌なの?どんなところがダメなの?」という質問から始まります。

1.言うことがコロコロ変わる
2.気分しだいで当たり散らす
3.人の話を聴かずに遮る
4.相手によって態度を変える
5.約束を守らない

ここから掘り下げていきます。
「言うことがコロコロ変わると何で嫌なの?」という風に。


1.振り回されてちゃんと仕事にならないから
2.感情をぶつけられるのが辛いから
3.大事にされてない感じがして辛いから
4.嫌な態度を取られるのが辛いから
5.何を信用していいのか分からない、振り回されるのが嫌だ

さらに行きます。2層目です。
「振り回されてちゃんと仕事にならないと何で嫌なの?」という風に。

1.ちゃんと仕事をしたいのにできないから
2.嫌な気分になってやる気が無くなってしまうから
3.大事にしてもらえないと寂しいというか、存在価値がないように思えるから
4.自分の居場所や存在価値がないように思えるから
5.ちゃんと仕事をしたいのにできないから(※1と同じになる)

さらにさらに掘り下げます。3層目。
「ちゃんと仕事をしたいのにできないのはなんで嫌なの?」という風に。

1.無力感を感じるから
2.仕事にやる気を出したいのに出せなくなるから
3.自分じゃなくても他の人でもいいのかな、と思うから
4.自分じゃなくて他の人でもいいのかな、と思うから(※3と同じ)
5.(1と同じ)

まだまだ続きます。4層目。
「無力感を感じるのはなんで嫌なの?」という風に。

1.本当はもっと役に立ちたいのに力になれないから
2.もっと役に立ちたいのにできないから(1と同じ)
3.自分だけを必要として欲しいから(注:2層目とほぼ同じ答え。無限ループに入る)
4.(3と同じ)
5.(1と同じ)

さらに続きます。5層目。
「本当はもっと役に立ちたいのに力になれないのはなぜ嫌なの?」と。

3についてはこのままだとぐるぐる回ってしまうので、もう一段掘り下げに意識を向けます。
「どうして自分だけを必要として欲しいのかな?」という風に少し質問の趣旨を変えてみます。

1.助けたい気持ちがあるから(終了)
2.(1と同じ)
3.自分にできることをしたい
4.(3と同じ)
5.(1と同じ)

さらに3についてのみ続けます。
「自分にできることをしたいと思うのはなぜだろう?」

3.役に立ちたいから(4層目の1、2と同じ回答)

よって、

「助けたい気持ちがある」というところまでたどり着きました。

「あの上司を嫌に思えるのは、苦手意識を持つのは、すごく腹が立ったり、悲しい思いをするのは、本当は助けたかったからって分かりますか?助けたいのに、助けさせてくれない、と嘆き、助けたいのに助けられない自分を責めていることが分かりますか?」

そんなお話を伝えました。

まさか、あの嫌な上司を私が助けたいと思ってる???
にわかには信じられないと思います。
でも、逆に助けたいから「嫌」なのかもしれないですよね。
助けられないし、助けさせてくれないし。

どんな痛みも怒りも罪悪感や無力感も掘り下げていくと必ず「愛の層」にたどり着きます。
でも、その愛の層に入るためには感情的な抵抗がいくつも訪れます。
そうすると同じような回答が繰り返される「無限ループ」に入ってしまうんです。
そういう時は少し質問の仕方を変えて見ると、また掘り下げることができます。

「どうして嫌なの?」
「どうしてそう思うの?」
「なんでそう感じるの?」

そんな質問を何度も何度もかけて行くと、やがては愛にたどり着きます。
これが私たちの心の仕組みなのです。

また、掘り下げていく段階で、その人の長所・価値・魅力がふんだんに見つかってきますね。
2,3層目を見て見れば「責任感が強い方なんだな」「仕事に対する思いは熱いな」「誠実な人なんだな」ということがよく分かりますし、全体的にとても「優しさ」が伝わってくるように思います。

私たちは「嫌な感情」がとても嫌なので、そこを避けて通りがち。
そして、正当化して防衛してしまいます。
でも、その嫌な感情はそれで無くなるわけではないので、一度、じっくりがっつり向き合ってみるといいかもしれませんね。

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