朝のひと時は、母も父も娘も忙しい。



どの家庭でもそうだと思うが、我が家の朝も常に怒号が飛び交う戦場である。
その原因はまもなく4歳になろうというのに、ちっとも落ち着きがない娘であることは言うまでもない。(一説によれば4歳になるから落ち着きがない、とも言うらしい)

今朝はその娘が朝食後に洗面所に歯磨き並びに顔を洗いに行ったっきり、全然音沙汰がなくなってしまった。


幸い我が家はリビングから洗面所までは2メートル弱しか離れておらず、遭難する心配もなければ、迷子になる危険性もない。
毎朝の定例行事であるが、そんな娘に「何してんの?早くしなさい。もうすぐバス行っちゃうよ。ママとパパで乗ってっちゃうよ」と妻は遠隔攻撃を仕掛けるのであるが、やはり音沙汰がないままである。

徐々に妻の声が大きくなり、その声にトゲやら爆撃弾が込められるのをキッチンで珈琲を飲みながらボーっと聞いているのも何なので、捜索隊を編成して様子を見に行くことにした。

やはり妻の怒り狂う姿は見るに忍びないのである。

わずか2秒ほどで目標地点に到着すると、まもなく4歳になる娘は、彼女が愛用している踏み台の上に横向きに顔を載せ、テツガクシャのようなムズカシイ顔をして何やら思索をしている様子なのである。

安否を気遣う隊長が「何してんの?どっか痛いん?」と声をかけると、「今ちょっと考え事、してんねん。パパはあっち行っといてよ」とつれない。
「でも、もうすぐ幼稚園のバスが行ってしまうで」と言うと「でも、今ちょっと考え事してるんねん。」というので、「でも、それって顔じゃなくて、足を乗せる奴やで」と言うと、「そんなん分かってるやん」と突き放す幼児。
「じゃあ、何考えてるの?」というと「何でもないやん。もう、あっちいっといてよ」と冷たい。

強引に抱き上げて連れて行っても、ふにゃふにゃと再び洗面所に戻り、愛用の踏み台の上に顔を載せて難しい顔をしている。

そうしている間もママの「早くしなさーい」という怒声は迫力を増していくが、さすがは歴戦のツワモノ。
パパならとっくに音を上げ、その迫力に慄いているレベルでも、奴は平然と聞き流し、踏み台の上に顔を横たえたままである。

そのうち、その遊びにも飽きたらしい頃、徐に動き出してご機嫌で着替えを始めた。
いつしか、一人で服を着られるまでに成長したなあ、と思っていると、突然、また倒れ、「一人じゃ、着れない。パパ、着せて」と甘えてくるのである。

ここで、「しょうがないなあ」と甘やかしてしまうのは父親失格であるが、幸い私はおじいちゃん1号2号も兼務している立場にあり、即座に役割をチェンジして服を着せてあげることとした。

「ほぉほぉ、しょうがない奴じゃのぉー」とタイツを履かせ、シャツを着替えさせたりしていると、「もう、ほんとに甘いんだから」と嫁の声が耳に響く。
(おじいちゃんモードだから、普段の妻は、今は嫁である)

ちょっと、ちびまるこちゃんの友蔵さんと繋がってみた。

ただ、結局、なんで踏み台に顔を乗せていたのかが分からないのも4歳児の特徴である。

なぞの解明はまた明日の朝に持ち越されたようであるが、ただ、いないときも多いパパに甘えてご機嫌になっている娘を見るのは、ここだけの話、とても嬉しい。


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