リトリート後の根本家は少し太平洋側に旅をしていました。



今回の札幌の旅はリトリートセミナーが目的だったのだが、そのレポはまた後日改めるとして、今日は一連のリトリート後をフォトエッセイ風に纏めてみようと思う。

本来7月の北海道は梅雨もなく、過ごしやすい天候の日が続くと思い込んでいたのであるが、ここ最近は温暖化の影響なのか「蝦夷梅雨」なるものが存在し、事実、天気図には青森から北海道南部にしっかりと前線が停滞している状況であった。
とはいえ、今回の旅は前日の天気予報がいい方向に外れること数回、かつ、外に出ているときは雨が降らず、だった。
日ごろの行いがいいのか、昔から晴れ女である娘が同行しているからかは分からないが、結論から言えば、ますます北海道が大好きになってしまったのである。

西日本が豪雨に見舞われた上に梅雨明けしていきなり酷暑が訪れている中、北海道は涼しいと寒いの中間点くらいを行き来する日々が続いていた。
リトリートセミナーの一連のスケジュールが無事終わり、家族旅行へとその目的が切り替わった頃もまた、長袖がちょうどいいような日であった。
私はセミナーの残党たちと共に、大好きな温泉に向かった。

札幌から車で40~50分ほどのここである。お湯は言うまでもなく絶品である。内風呂には源泉に近い温度の熱めのお湯、湯船に温泉を運ぶ樋を長くして自然に温度を下げた温めの湯があり、特にこの温めの湯には果てしなく入っていられそうになる。
また、露天風呂はとても広く、ここだけで一日が過ごせてしまいそうなほどに開放感に溢れている。
常連と思しき客は脱水症状を回避するために飲み物を持ち込んでおり、中にはじっと湯船に浸かりながら何やら文言を唱えているおじさまもいる。


風呂の中の写真は撮れないので駐車場から眺める山々。
いかにも田舎に来ました的な空気は嫌いではない。

しかも、この温泉、鄙びた湯治宿のように見えて、その扉を開けると馴染みのある匂いが漂ってくる。

これだ。

札幌市内からそれほど遠くないとはいえ、なぜ、ここで本格的なインドカレーが食べられるのかは不思議である。
スープカレー発祥の地であり、あちこちにカレー屋が溢れる札幌ならではの歓迎方法なのだろうか?

しかも、全然雰囲気にマッチしていない。

ここはどう見ても蕎麦だろ!?少なくとも和食だろ!?

しかし、このカレーがとても美味なのである。
実は私、この温泉にはかれこれ3,4回は浸かっているのだが、カレーを食ったのは初である。
いつも、ここに来た後は支笏湖の丸駒温泉を訪ねたり、札幌市内に戻って遊んだりしていたので、カレーを食うヒマがなかったのである。

あまりに上手いので、今後は湯上りにはカレーは欠かせぬものとして脳裏にインプットされた。
そう、湯上りと言えばやはりコレであろう。

このあと2時間ほどのドライブが待っているのであるが、妻はそもそも運転する気などないらしい。
笑顔でビールを飲んで「ああ、風呂上りのビールはやっぱり美味しい!!」と感激していた。

私は「運転手モード」に入ると酒を入れたいとは思わなくなるので(きっと運転そのものが好きなのだろう)、妻が喜んでくれるならばそれで良いのである。

さて、絶品の温泉で緩み、名物のインドカレーでお腹がいっぱいになった身で運転するのはあまりお勧めではない。
眠気が襲ってくるのである。

適当に休みながら運転するとして、豊平峡温泉から宿のある白老(というかほとんど登別)に向かうルートはGoogle先生によれば3つある。
1つ目は最もスタンダードと思われる札幌市内をかすめて高速に乗るルートで、1時間53分かかるとある。
2つ目は南に下って途中、山の中を抜けて苫小牧に出るルートであり、これは1時間58分かかるらしい。
3つ目は南に下って洞爺湖、室蘭を通っていくルートであり、これは1時間59分らしい。
その他、オリジナルではあるが、支笏湖を巡って千歳に出る個人的にお気に入りのルートもある。数年前の台風で通行止めになっていたらしく、その後が気になるという理由もある。

とはいえ、洞爺湖!である。妻と意見が一致してまだ見ぬ洞爺湖を目指して車は出発した。
ちなみに偶然ではあるが、レンタカーは室蘭ナンバーであった。

山道とはいえ、抜け道なのか、実は街道なのか、車の交通量は思ったよりも多い(北海道の郊外比ではあるが)。
そして、ひたすら白樺の林を抜けるのではなく、時々小さな町があり、途中、スキー場や遊園地を抱えるルスツリゾートなどもあって、延々と北海道の自然を感じながら走るイメージとは異なっていた。

途中、コンビニや道の駅に寄る。
つまり、コンビニや道の駅が点在しているほどに栄えているのである。

眠気を緩和したり、トイレ休憩のためでもあるが、こういうちょっとした町の風景を観察することは実は密かな私の楽しみである。
田舎の生まれではあるが、長じてからは大都市にしか居住したことがなく、また、出張族ではあるが、基本、大きな都市にしか出向かないので、こうした町の家々やそこで暮らす人たちの生活についてあれこれと思いを馳せるのである。

どんな毎日を送っているのか。
退屈しないのだろうか。
これほど自然が多い中で暮らす喜びは何なのか。
だから、私はちょくちょく喫茶店やレストランで店の人とあれこれ会話したり、地元のスーパーで買い物をして、そこでの生活に少しでも触れたいと思うのである。

洞爺湖に近付くにつれて雨は強くなり、あろうことか霧が出て来た。
運転するのに支障が出るほどではないものの、景色は全く見えない。
とはいえ、霧に煙る北海道の畑もまた幻想的で、写真に収めておけばよかったと後悔しきりである。

肝心の洞爺湖もすぐ脇を走るまで何も見えず、晴れていたならば望めていたであろう中島なども全くご縁がなかった。
途中の展望台の駐車場には大型バスが何台も止まっていたのはシュールな光景ですらある。
観光客たちは「晴れていたら・・・」と言う思いを全員が共有しているのかもしれない。
もちろん、その脇を走り抜ける私たちも同じ思いであったが。

2時間くらいのドライブを経て、目指す宿に着いた。
ここは札幌の友人が「私たちは泊まったことはないけれど、友人が是非一度泊まって見て!と強く勧める宿」として紹介してくれた海辺のホテルである。
目の前が太平洋で、朝日が名物とのことであるが、雨はますます強くなり、若干、気分も沈んだままチェックインした。

しかし、とても素敵な宿であった。
フェイスブックにここの情報をあげたら何人もの人が泊まったことがあって、みな、口々に絶賛し、感動を述べていた。

至れり尽くせりである。
人がとてもいい。
雰囲気がとてもいい。
温泉も気持ちがいい。
清潔で、快適に、心地よく居住できる環境をきちんと整備してくださっている。

ロビーには居心地のよい何種類もの椅子があり、天然水や水出しコーヒーがいつでも飲める。ところてんやリンゴのお酒、夜にはそうめんまで供される。

キッズスペースには絵本やおもちゃの他、自由に落書きできるガラス窓まである。

そして、部屋にはなんとコーヒー豆とミルまで完備されている。今までたくさんの宿に泊まってきたけれどこんなところは初めてだ。

食事もとても美味しい。(写真は2日分の夕食から抜粋)
あまり飲まなかったけれどワインも日本酒も焼酎も揃っている。

そして、とても居心地がよくゆっくり休める空間なのである。
晴れていればな・・・と露天風呂に息子と漬かりながら、この日何度目かの希望を念じるのであった。
予報では翌日も雨のち曇りとのことだ。

予想に反して2日目は晴れた。やはり晴れ女の娘が外を走り回っているからだろう。
部屋のバルコニーにはこんなブランコもあった。

当然こうなる。

2階の吹き抜けから眺めるロビーと海。

駐車場からは山が望める。

デッキが張り巡らされている庭に出る。

目の前はこの海である。

ハンモックまである。

・・・となればこう。(息子がくるまって遊んでる)

さらにはこう。(ハンモックに娘・息子が突入してうるさくなる)

西に目を転じればこの景色。室蘭、長万部などの方角。

東はこんな感じ。苫小牧から馬産地である日高方面を望む。

暑いといっても25度くらいで風はとても涼しく気持ちがいい。
ということで家族は近くの登別の水族館に行ってもらい、私は一人宿に残ってロビーで執筆をすることにした。

この日は連泊する客が少ないようで、昼間のロビーには誰もいなかった。
静かに、そして、時々海を眺めながら、快適な空間でどんどんパソコンに文字を打ち込んでいった。
とても気持ちのよい時間であった。

スタッフの方がジュースを差し入れしてくれた。
「お昼ご飯は食べられました?」
「いえ、朝たくさん頂いたのでお腹空いてないんです」
「え?そうなんですか?」
「はい。だから、夕食まで何もいらないかな、と思ってまして。」

ふだんは1日2食(時々1食)の私である。
朝ごはんの評判を耳にしてたくさん食べたので、夕食までは何もなくても平気なのである。

それにしても贅沢な時間だった。
近くにかの有名な登別温泉があり、そうでなくても車で10分20分圏内にいくつも温泉がある。
その湯に身を浸すのもまた快楽なのであるが、私は、こうして誰にも邪魔されずにただひたすら物書きに没頭する時間もまた快楽なのである。
温泉と執筆を同列に並べることを笑う人もいるのかもしれないけれど。

時々、こうした時間を作ることが自分を幸せにすることだとつくづく学んだ。

家族もまた水族館を楽しんで帰って来た。
早速、子どもたちはデッキに出て走り回っている。

そこで今度は私が外に出かける番であった。

根本家の旅に欠かせぬもの。
美味しい料理やいい宿はもちろんであるが、コインランドリーである。
いつしか訪れた土地のコインランドリーに足を運び、そこで過ごすことが旅の欠かせぬ1シーンとなった。
ちなみに今回は札幌のホテルでも洗濯をしており、深夜、なかなか乾かない洗濯ものにやきもきしながらスマホと戯れていた私であった。

宿の人に聞いたらここから10kmほど離れた場所に何か所かあるという。
ふつう10km離れてると聞けば絶望もするであろうが、ここは北海道である。
札幌からの延べ130kmが「そんなに遠くない」と認識するほどに道民に洗脳されてしまった私には10kmというのはすぐそこ、である。

ナビに住所を入れ走り出す。室蘭街道は快適に飛ばす道民の車で流れができており、自然と法定速度をオーバーするスピードで目的地に向かっている。
大阪では考えられない時間で現地に到着する。

途中、不思議な集合住宅を発見した。

この写真は帰りに撮影したものだけど、海沿いの街道沿いにずらっと団地が並んでいる。
そして、屋上にはにょきにょきと煙突が立っている。

北海道の家はカラフルである。青や黄色や時には赤い壁の家も多い。
そして、各家には必ずと言っていいほど煙突がある。
冬の寒さをしのぐための薪ストーブ用だそうである。
そして、家と家の間は比較的広く作られている。雪が溜まるからだろうか。
その家の前には繊細な緑色をした草が短い夏を彩っている。

その景色をなぜかいつも寂しく、侘しいものに私の目は捉えてしまう。
そして、いつも冬の厳しい寒さを想像してしまう。
海辺の団地である。どんな風が吹くのだろう?どんな風に雪が舞うのだろう?そこで人はどんな風に生活しているのだろう。
私の知らない世界がそこにある。
一度でも体験すれば理解できるのかもしれないが、私にとってはほんとうに想像だにできない世界であり、それゆえにじわじわと好奇心が刺激されるのである。

もしかしたら、その思いが押さえきれなくなって冬の北海道に来てしまうのかもしれない。
そして、千歳から電車を乗り継いでこの幌別の駅で降りてしまうのかもしれない。
そんな想像は私を少し恍惚とさせるものである。

さて、最近は洗濯乾燥機という一度洗い物を放り込んだら後は全部やってくれる機械も多いのだが、ここは洗濯と乾燥が別々であった。
洗濯をセットして近くを散策する。

すぐ横には大人の歓楽街である。とはいえ、幌別という小さな町ではそれはスナック街であり、この明るい時間には人の気配はほとんどない。

どんな小さい町に行ってもスナックは必ずある。
あるばかりか、こんな風に2階建てのアパートのような建物にぎっしりとスナックが埋まっている。
これは山形県の酒田市に行ったときに強烈なインパクトを私に与えたのであるが、やはりこの町でも同様であった。

ふらっと見つけた喫茶店に入って見た(この写真の奥に映っている)。
気のいいおじさん、おばさんがやってらっしゃる店で、いきなりカウンターに案内された。

大阪から来たことを告げ、この町のこと、とりわけ気になる冬の様子について話を聞いてみた。
「この辺は冬は全然マシだよ。雪もそんなに積もらないし、寒さもひどくないよ。それに家の中は暑くて、今のお兄さんみたいに半袖でみんなビール飲んでるよ」

居心地のいい店であった。
丁寧に淹れられたコーヒーを飲んで、とても美味しいと思った。
いつか遠くない未来にこの町に来て、またこの店に来て、コーヒーを飲みたい、と思った。
それは冬になるのだろうか?分からない。

このまま居たらビールでも出て来そうなくらいフレンドリーになった頃、洗濯が終わる時間が来た。
戻って乾燥機を仕掛けなければならない。

後ろ髪を引かれる思いで店を後にすると、お二人が入口まで見送ってくれた。
まるで祖父母の家に遊びに来たみたいじゃないか。
なんだか、とても嬉しかった。

乾燥機を仕掛けながら残りの時間をまたあの店で過ごそうかとも思った。
しかし、まだこの町をもう少し見てみたい。

少し歩くとそこは駅で、ちょうど電車が到着したところらしく、学生たちが降りて来た。
調べたら時間に1本~3本ほど電車が走っているらしい。
1本逃したら確実に遅刻!という朝を彼らは送っているのだろう。
必死に駅に向かってダッシュする高校生を朝になれば毎日眺められるのかもしれない。

そんな想像をしながら意外に新しい店も多い駅前をぶらぶらする。
お店はほとんどない。
大きめな建物があったので入ってみると、スーパーがある。
訪れた街でスーパーに入るのは趣味の一つであり、まだ幸い時間もある。
お総菜コーナーやお菓子、生鮮食品のコーナーを巡りながら「北海道にいるんだぞ!」という気分を盛り上げようと思った。

が、意外とふつうであった(苦笑)

牛乳や乳製品の種類が豊富なことはさすがだが、あとは内地のスーパーとよく似ていた。
ここはイオンか???いや、違うけどなあ・・・。

なので北海道限定のビールなどを買ってコインランドリーに戻る。途中でバス停があった。

時刻表を見て驚いた。
ほぼ1時間に1本、札幌行、新千歳空港行のバスが出る。

なんだ、ここは意外と都会(正確には都会に近い町)だったのか。
言われてみればコインランドリーも最近できたばかりというし、街も綺麗に整備されている。家々も立派である。
それだけの利用者を抱えた町なのか。

勝手に鄙びた田舎だと決めつけてごめんなさい。
どうも、北海道の寂れた寒村を期待していたのかもしれない。
失礼しました・・・。

私は人に会いに行く旅を好む。
こうして一度、ぶらぶらと街を歩き、あれはなんだ?これはなんだ?と興味を持ち、旨い料理を出しそうな店を見付けてしまう。
ふらっと店に入ってしまい、店の人と少しでも話をすると里心が付いてしまう。
そうしてまた行きたい場所が増えて行くのである。

そして、予想外にこの幌別の町がそんな条件にぴったり合ってしまった。
白老の宿に向けて車を走らせながら、この町を訪れる理由がいくつもできたことを少し喜んでいる自分がいることに気付いた。

今度はいつ来ようかな。
いよいよ、冬か?
あのおじさんとおばさんに「夏にふらっと一度来たんですよー」と話しかけようか。
そして、「覚えてないなあ」なんて言われながら、分厚いコートを脱いで半袖になった私に冷たいビールでも出してもらおうか。

今回お世話になった宿の足湯から眺める日が暮れた後の海。
その宿はこちら。

心のリゾート 海の別邸 ふる川
https://www.kokorono-resort.com/


あわせて読みたい