小市民的航空機予約顛末記(よーするにまた旅行に行くのです)



飛行機の予約をした。
溜まったマイルを使った旅を考えていたので、出発日の2ヶ月前の9:30、そう発売開始時間ジャストを狙って時計をきっちり合わせ、コンサートチケットの予約宜しく秒針の進みを予測しながら受付番号をプッシュした。


僕の狙っていた路線は下記の点から不安要素が満載で、前の晩からかなり緊張していて、受話器を持つ手は少々震え気味であった。
・ボーイング737という小さめの飛行機(約150席)
・大阪からは国内で一番遠い目的地
・発着枠がいっぱいになっているためツアーならば確実に数千円アップになる伊丹発着便
・しかも目的地への直行便(1日1便)
・この路線にマイル向けの席はどれくらい用意されているのか?

準備万端事を整えるのが好きな僕としては、それらの不安要素を解消すべく、事前のシミュレーションは精密かつ執拗に行われる。
まあ、なるようになるよ・・・とのんびり構える奥方とは性質が違うのである。
(本来は大阪出身の妻がイラチで、静岡出身の僕がのんびり屋であるはずなのに)

<シミュレーション(=妄想)開始>

もし希望する便が取れなければすっかり意気消沈し、敗北感が全身を覆うだろう。
ところが、そんな風に落ち込む間など許されず、その場で関空発の直行便を所望するか、はたまた那覇での乗り換え便で行くかを選択しなければならない。
仕事の都合上休める日数は限られており、どうしてもその日の便を取る必要に迫られているのである。
よって今日取れなかったら明日、というわけにはいかない。その点ちょっと厳しい。

しかも、国内線は羽田発に統一されている東京と違い、大阪は伊丹、関空に加えさらに神戸の3空港が乱立しているため、目的地の前に出発地で悩まなければならない。
人口比にしても格段に差がある関西が何でこうなのか?は疑問であり愚痴でもあるのだが、今更そんなことは言ってはいられないので現実に目を戻して葛藤を続ける。

少々マイルは余計にかかるが、うちの家族の「関空遠い・・・やだよー」という性質を思えばやはり伊丹発那覇での乗換え便を選択するのが無難かと思われる。
(*直行便の場合は一人15000マイル、乗り継ぎの場合は20000マイル必要)

が、目的地に着く時間や手間を思えば直行便の方がやはり得策なような気もする。

いや、待てよ・・・。乗換えならばキレイな那覇空港で買い物もできたりするし、乗り継ぎ便の時間をずらせばちょこっと那覇観光もできるかもしれないじゃないか!と新たな欲が沸いて出てくる。
「それじゃあ、乗り継ぎは何時の便にするのか考えておかねば・・・」と新たに時刻表を繰る次第であった。
何だかんだ、楽しみ半分、不安半分で、あれこれと思いを馳せるのであるが、「おっとこれではまるで取れないことが前提のようなシミュレーションではないか。いかんいかん。思い切りダークストーリーにはまっておるわ」と気持ちを切り替え、希望便が取れるイメージトレーニングに取り掛かる。

希望便が取れた場合には天にも昇る気持ちでガッツボーズができる。
ただ、その場でいきなり絶叫してしまうとオペレータさんに「なんやこいつ?」と舐められるといけないので、できるだけ紳士然とした態度で「取れましたか。はい。ありがとう」と淡々と受け入れるのが正しいであろう。
小心者の癖に見栄っ張りなところがある僕の難しい性格がここに現れている。

<シミュレーション(=妄想)終了>

そんな風に前夜から電話をかけるまでにかなりのシミュレーションをこなし、心の準備も万端に電話をかけたのである。

(少しだけ僕のカウンセリングを予約してくださる皆さんの気持ちが分かったかも・・・皆さん、本当にありがとうございます・・・)

その結果、あっさりと1回で電話は繋がり、拍子抜けしたまま希望便が取れてしまった。
オペレータさんの明るく穏やかな(いい意味で)緊張感の無い応対に心が和んでしまい、バンザイ三唱も忘れ、そっか、取れたのか・・・と予想以上に低いテンションにて電話を切った。
あたかも「ほらほら、お兄さん、そんなに気を急かさんでも大丈夫ですがな」と京都人にはんなり諭されるような鷹揚な時間だったように思う。

よくよく考えれば、3月はまだまだシーズンオフだし、団体はいても個人旅行は少ない時期だからまだ取りやすい時期と言えるのである。
それを「申し込みが殺到して取りにくくなるのではないか?」などと勝手に考えてしまうのは、まさしく「僕らが行くんだからきっと他の人たちも行くんだろう」という“投影の法則”、すなわち個人的思い込みのなせる業そのものである。
普段カウンセリングで偉そうに言ってるくせに自分自身には適応できない。
情けないようだが、自分のことはやはり自分では分からないものなのだ。(いいわけ)
しかし、その直後から喜びが湧き上がる。

これでまた石垣にいけるのだ。

その天にも昇る思いを家族に報告しようと勇んでみたら、すでに娘がリビングを意味無く走り回っており、それに便乗して一緒に喜びのダンスを奉納した。
娘は急に現れた父が珍しく一緒に踊ってくれるのでたいそう喜び、その様子だけで無事チケットが取れたことを悟った聡い妻はそんな父娘を「相変わらず何だこの親子は・・・」とドレッサーの鏡越しに白い目で見ていた。

しかし、それでも石垣に行けるのだ。

そもそもマイルを使った旅というのはとても素晴らしいのである。
今回の石垣便の場合、片道2時間50分のフライトが往復タダになるわけである。
これは正規料金の半額くらいになる「得割」で計算すれば一人約4万円分に相当する。
そう、3人家族ならば12万円が丸々浮いてしまうのである。

最近は“陸マイラー”と呼ばれる、飛行機には普段は乗らないがショッピングにてマイルを貯める人が増えているそうだが、この恩恵を思えば当然といえるかもしれない。
普段セコセコと東京―大阪などの超近距離便にて積み上げたかいがあったなあ・・・と久々に自分を褒めてあげたくなった。
(クレジットカードは最小限しか使わない主義なのでショッピングマイルは意外なほど溜まらないのである)

そして、飛ぶ鳥を落とす勢いのANA(航空会社なので、この例えはかなり言い得てると思われる)に押されっぱなしのJALだけど、その素晴らしい点の一つは石垣島への直行便を飛ばしてくれていることである。(正確には関連会社のJTAが飛ばしている)
しかも、発着枠制限がパンパンになっている伊丹から出ているのも嬉しい。
我が家から伊丹空港までは車で30分弱でいける。
関空となれば電車を乗り継いで1時間半はかかるので、その差は大きい。

これで旅行計画が確定し、事務所スタッフにも「この期間は旅行に行って不在だから後は宜しく!」と一方的に通告し(こういう時メールは大変便利である)、浮いた飛行機代でちょっとランクアップした宿にも確認の電話を入れた。
(石垣のホテルやお宿はどこも「飛行機が取れましたらまた連絡下さい」と言われるのが面白かった。オンシーズンには宿は取れても飛行機が取れなかったりするのだろうか?)

緊急事態がない限り2ヵ月後、私達家族は再び石垣の島に降り立っている・・・。
この現実は僕をとても元気にしてくれる。

しかし、そこではたと気付いた。
まだあと2ヶ月もあるのである。
気持ちは既に竹富島に飛び、前回の旅で運命の出会いを果たした同い年かつ同じ名前のヒロ坊(水牛)との再会を喜んでおり、また、石垣は川平湾では7色の海にて家族そろって足を付けてはしゃいでいるのである。
旅は計画しているときから楽しいものであるが、とはいえ2ヶ月も先となると、ちょっと絶望するくらいに気が遠くなってしまう。
小心者のくせにイラチなので、いつも旅はぎりぎりに思いつく。
前回の石垣旅行も3週間前だったし、その前の旅行は1ヶ月前であった。
2ヶ月も待て、というのは実はあまり慣れていないのだ。

しかも、こんな風に飛行機を取る前からだいぶ個人的に盛り上がってしまったので、今がピークに今後テンションが下がっていくのではないかと少々不安にもなるのである。
しかも、前回の旅の際にけっこう研究してしまったので石垣の事前学習の必要もあまりなく、空想妄想以外に特に何もできないのである。

しかし、あと60回寝て起きれば石垣に行けるのである。
やはりその事実は僕の心をとても元気にしてくれる。
指折り数えてその日を待つことにしようと思う。

あ、とりあえず、石垣のおじぃに渡す写真を印刷しておこう・・・。

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