「別れ」という選択肢~コミットメントとアカウンタビリティ~



ラブ・カウンセリング

カウンセリングのイメージでしょうか。「別れる」ということが悪いことのように思え、なかなか相談し辛いという“ご相談”を頂くことがあります。
「もっと頑張ればやり直せるかもしれないのに別れを考える自分がダメな気がする・・・。」
「私がもっと我慢すれば何とかできないことないのに」
「すごくいい彼だから、その彼を傷つけるのがすごく申し訳なくて」

そもそも「別れを切り出す側」「振る側」は“罪悪感”を担当しますから、すごく自分はひどいことをしているような、悪い人のような、傷つけるような感覚がするものです。
だから、なかなか人に切り出せなかったり、人に言うときには論理武装して強く出たりしなきゃいけないような気がします。

しかし、私は思うんです。うまく行かないもの、合わないもの、できないことってありますよって。


心理学的には私たちは誰とでも合いますし、誰とでもうまくやることができます。
それは、私たちは自由でいかようにも考え方・感じ方を変えることができるから、どんな相手がやってきてもうまく行く方法があるのは確かです。

でも、その一方で、合わないものを無理に頑張るとストレスになっちゃうよ、というのもありますし、さらに複雑なことに「自分を罰するために、幸せにしないために、今の彼と付き合っている(結婚している)」というケースだってあるんです。

だから、一概に「別れがいけないこと」とはとても言えません。

私としては「うまくやりたいと思うならば何とかできる道を探すこともできるけれど、それが自分にとって負担になってしまうのであれば無理にする必要はないよね」というポリシーに沿ってお話を聞くようにしています。

それにカウンセリングの現場では、先に挙げたような理由から「別れ」についてカウンセリングを受けるには相当の勇気がいると思うんですよね。
だから、十分そこは考えてのことでしょうし、なおさら尊重したいと思うのです。

そもそも「別れ」という選択肢はとても大切なものでもあるんです。
よく「彼を選び続けましょう」などと「選択」についてのお話をします。
選択するには「彼を選ぶ(付き合う)」と「選ばない(別れる)」などの2種類以上の選択肢が必要です。
「付き合う」という選択肢しかなかったら、それは選択とは言えないんですよね。

皆さんもお昼を食べようと入った定食屋でもメニューが1種類しかなかったら窮屈感を感じませんか?(そこが名店で日替わりの極上のランチを出してくれる店ならともかく)

「付き合う」「別れる」という選択肢があって初めて選択ができるのです。
そして、その選択肢の中から「付き合う」を選び続けることをコミットメントと言うんです。
つまり、「別れる」という選択肢があって初めて「選択」ができるんですよね。

ところが執着があったり、盲目的になっていたり、不安でいっぱいになっていたり、何かネガティブな要素があるときって「別れる」ことなんて考えられないから、「選択」はできないんです。
むしろ、選択ができない状態のことを「執着」と呼んでもいいくらいなんですね。
選択肢がないというのは、とても窮屈で自由がない感覚がしてきます。そして、その一つの選択肢に執着すればするほど、先が見えない不安や変化することへの怖れの感覚が強まるんです。そして、ますます執着が強まるという悪循環にはまっていきます。

だから、「別れ」という選択肢は、あなたに余裕と視野の広さ、そして、自由を与えてくれる大切なものと言えるのです。

なお、そうした選択肢から「付き合う」を自らの意志で選ぶことが、二人の関係性に積極的に関わる決意表明となります。これを“アカウンタビリティ”と呼びます。

これは論理的な話ですが、でも、頭の隅に入れておいてほしいな、と思います。

さて、「別れ」という選択肢を持つということは、当然、その選択についても多少検討してみることを意味します。
もし彼と別れたら?という考えてみることは、やりようによっては悪いことではなく、むしろ、彼との関係をさらに良くしてくれる効果があります。

別れを考えたとき、不安や怖れ、焦り、抵抗などがすごく強く出てきたとしたら、「とても自分は執着が強い状態なんだ」と気づくことができます。
この場合はやはり執着は手放していきたいですよね。自分を見失わないためにも。

また、別れという視点から見たときに、彼のいいところ、素晴らしいところ、彼と出会ってからのいい思い出などが出てきて改めて彼のことを好きになれる場合も多いでしょう。

さらには、この選択肢は今まで隠れていた不満や不安などを浮かび上がらせてくれる効果もあります。
言いたいけれど言わずに我慢していることに気付いたり、見えなかった罪悪感に気付いたりすることもできるでしょう。
気付くだけで心がほっとして安心することだって少なくないと思いますし、じゃあ、それをどう伝えていこうか?どう解決していこうか?というのが、あなたたちに与えられた新たな課題なんですよね。

そうしたある意味客観的視野を持つという点でも、この選択肢は非常に役に立ってくれるんです。

人によっては「別れ」という選択肢を持つことに怖れを感じるかもしれません。
でも、彼との関係に“本気”で取り組むためにも、よりいい関係を築いていくためにも、大切な選択肢であることを知っていただければ幸いです。

カウンセリングでも、敢えてこういう提案(宿題)を出すことがあります。

「1回、本気で別れ(離婚)を考えてみて頂けませんか?そして、彼に別れを告げる手紙を書いてみてください」

そこから見えてくるもの、小さくないと思っています。

皆さんの参考になりましたら幸いです。


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