別れの危機~自立と依存がひっくり返るとき~(1/2)



ラブ・カウンセリング

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彼女は弱いと思ってた。すぐに泣くし、いつも自分を頼ってきたし、甘えてくれた。そんなところが可愛かったし、自尊心をくすぐられた。何でも話してくれたし、俺もじっと話を聞いて、たまにはアドバイスもした。俺がいなきゃ、と思っていたし、彼女も、あなたじゃなきゃダメ、とよく言っていた。
でも、最近、様子がおかしい。口答えすることも増えて、言い合いになることも多くなった。前は従順だったのに、最近はケンカ口調だ。
それに今までは全部自分に合わせてくれていた休日も「今週は友だちと外せない約束があって」と断られることもあるし、「好きだよ」と言ってくれるけれど、今までみたいなべったりした感じはあまりない。以前は若干鬱陶しかったが、それがなくなるとちょっと物足りない。
でも、時々「寂しかった」と甘えてくるところは以前と同じで安心するが、それ以上に「あなたって分かってそうで、意外と鈍感だよね」とドキッとさせられることが増えたと思う。
だから、最近、何となく不安だし、寂しいし、イライラしている。このままだったら、もう一緒にいられないと思うけれど、でも、だからって別れるのはイヤだと思う。

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男側の都合のいい解釈はまあ、置いておくとして、別れの危機が二人の間には幾度と無く訪れます。(そういうものです。危機が無いのはある意味危機といってもいいくらいなのです)

それは言ってしまえば「自立と依存がひっくり返るとき」が最大の危機で、それまでの関係性が一気に逆転しそうになっているときに「別れ話」が出てきたり、ケンカが増えたりするのです。

一般的に惚れた側が「依存」、惚れられた側が「自立」と言いますが、要は上下関係。本来は対等であるはずのパートナーシップですが、惚れた側は好きだから離れたくなくて相手に気に入られようとし、従順になります。これが「依存」です。だから、相手の言動がいちいち気になるし、振り回されますし、相手を見上げてしまうわけですね。そして、不安や寂しさなどの感情をたくさん感じますが、いい感情、「好き」とか「嬉しい」って気持ちもたくさん感じられます。

一方で、惚れられた側は心理的に優位に立ちます。少なくても相手ほど自分は好きな気持ちを持っていないので「ほんとにこの人のことが好きなのかしら」と思うこともよくありますし、相手の依存的な態度にイラッと来ることも少なくないでしょう。これが「自立」。わがまま言っても相手は従順に付いて来てくれるので王様・女王様的な気分を味わえます。でも、恋愛感情と言うと???。だから、寂しかったり、退屈し易い状態でもあります。

そうした関係性で始まった恋ですが、多くのケースはその状態がどんどん変化していきます。

皆さんも、「始めは告白されて渋々付き合っていたけれど、気が付けば彼のことが、彼が私を思う以上に好きになっていた」とか、逆に「大好きで付き合っていた彼なんだけど、だんだん粗が見えていて気持ちが冷めていき、もう別れようと思ったら予想以上にこじれて大変だった」みたいな経験ってありませんか?

これはお互いの性質によるところもあるのですが、私たちの関係性は常に変化しているので、始めは「依存」だった彼女が、徐々に力を蓄えて「自立」していき、逆に、始めは「自立」で余裕だった彼氏が、だんだん彼女に惚れてきて「依存」していく、ということがよくあります。

そのまま、自立と依存がひっくり返って、関係性が逆転して、すんなりそのまま行けばいいのですが、「自立」側にはそれなりのプライドと言うものがあります。
負ける(依存側に落ちる)のは屈辱的だし、今まで甘く見ていた(未熟だと思っていた)相手に見下されるのはしゃくなので、そこで伝家の宝刀「別れ話」を切り出すわけです。
自立側の最後の手段と言えますね。

A.「彼女は最近俺にたてつくようになって生意気だ。もう一緒にはやっていけない」
B.「彼女は最近わがままで、重たい存在になってきた。そんな女とは一緒にいられない」
C.「彼女と付き合っていると自分がダメになる。もっと成長できる女とやっていきたい」
D.「いつまで彼女の面倒を見ればいいんだ。もう疲れた。無理。」

こんな心理になるのも、実は彼女が密かに力を蓄え、彼に物言う存在になってきたからかもしれません。
また、この状態では、彼もまた彼女に少なからず惚れてるわけで、こういう思いを抱いていたとしてもすぐに別れを切り出したりはできませんし、また、切り出したとしても葛藤が透けて見えることも少なくないものです。

因みに、A~Dそれぞれの言葉の後に続くホンネを盗み見てみると・・・

A.「・・・一緒にはやっていけない。(けど、そんな強気なところもかわいいというか、憎めないんだよなあ)」
B.「・・・一緒にいられない。(けど、だからって見捨てるのはなあ。俺も寂しいというか。)」
C.「・・・やっていきたい。(けど、あいつみたいな女が俺には合ってるんだよな。」)
D.「・・・疲れた。無理。(だって、俺も癒して欲しいもん。面倒みて欲しいもん)」

ま、これはあくまで想像の話しですけれどね。
要は、自立側だった彼の方にも「依存心」が出てくるんですね。
それに対して彼女には「自立心」が出てくるわけで、「じゃあ、言わせてもらうけど、いつも偉そうに言ってるけど、結局はあたしの気持ちなんて全然分かって無いじゃん」とか一撃必殺のパンチを繰り出したりするわけです。

だから、こうした別れ話は意外なほどにこじれたり、「何度も別れ話は出るんですけど、なんだかんだ続いてる」みたいな状態になったりするのです。

こうした自立と依存がひっくり返るところが「別れの危機」となり、これは関係性が流動的なうちは何度も繰り返されます。
でも、「そういうのはしんどいから、早く安定した状態になりたい」と思うかもしれませんが、でも、それってものすごく危険なことって分かりますか?

自立と依存がひっくり返るような関係性というのは、お互いが動いている状態なんですね。それがなくなるって事は、留まっている状態、すなわち、停滞期、すなわち、倦怠期になってしまうのです。デッドゾーンとも言いますが、ロマンスも感じないし、空気みたいな存在で、すっかりマンネリになってしまうのです。
だから、自立と依存がひっくり返り続ける関係って、別れの危機が頻繁に訪れるわけですが、実に健康的な状態とも言えるんです。
そんなハラハラドキドキの刺激がある状態がロマンスを作り出しますからね。
それに何度もその危機を繰り返すたびに、お互いの信頼は高まっていきますし、お互いにかけがえの無い相手であることを認識していきます。そうして自立の次の段階、相互依存のステージへと進んでいくわけです。

さて、来週はこの危機の後の話をさせていただきたいと思います。
無事乗り越えられた場合、残念ながら別れに繋がってしまった場合、それぞれについてお話させていただきたいと思います。
どうぞ、お楽しみに!

皆様の参考と気付きになりましたら幸いです。

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