今回は失恋された方はもちろんですが、今パートナーがいらっしゃる方にも参考にしていただきたいお話です。
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失恋の後、どうしても彼が欲しくて、別れを認めたくなくて、あるいは、その事実がすごく辛くて何とかしたくて、かなりの確率で執着モードに突入するのが世の定め。
その痛みを覆い隠す蓋をして平気な振りして過ごしたり、自分を忙しくすることで忘れようとしたり、どっぷり悲劇のヒロインに浸かったり、他の人でその空虚感を埋めようとしたり、泣いたり、喚いたりしながら時が過ぎて行きます。
そうして、徐々にその痛みが薄れ、次の恋に進む準備が整い始めます。
それは、元彼との心理的な距離が少しだけ生まれた頃。
失恋した直後は、離れたくない気持ちから、一方的に心理的な距離を縮めてしまうものですが、別れを受け入れ、そして、少しずつ余裕が生まれてくると、彼を、また、その恋を、比較的客観視できるようになっていきます。
すると、自分の足りなかったことが見えてきたり、お互いに未熟なところが分かってきたりするものです。
そうして、少しずつ“手放し”が生まれていくんですね。
順調にこのプロセスが進めばOKなわけですが、なかなかそうも行かないので、私たちカウンセラーはそのお手伝いをさせてもらっているわけです。
その“手放し”が生まれるとき、多くの人があることに気づくんですね。
「彼も一人の人間で、私とは違う、意志を持った存在なんですよね」
言い方はそれぞれ違いますが、“私と彼は違う人間”ということを受け入れた瞬間に、手放しが一気に進みます。
でも、これってね、当たり前のことでしょう?
でも、特に優等生で生きて来られた方、彼との関係が自立側だった方、常に前向きに生きようとされてる方こそ、要注意なんです。
「そんな当たり前のこと、自分は分かってるし、できている」と思い込んでしまうから。
実に難しいんです。
彼を一人の人間として認めることって。
恋愛の中で「私の好きなものは彼もきっと好きだろう」と思い込んで失敗した経験ってありません?もちろん、その逆も。
彼との関係が緊密になっていくと、自分と相手との境目が徐々に分からなくなり、つい、「自分と相手は同じ」と思い込んだり、「相手を自分色に染めよう」とコントロールし始めたりするんですね。
すると自立側の恋愛をする方は、「彼のことは全部分かったような気持ち」になってしまうわけです。
そうすると以前、紹介しました、「飼い犬に腕を噛まれる振られ方 」のようなことになりやすいんですね。
また、反対に依存側の恋愛をすると、全部を彼と一致させようと頑張るんですね。好きなものも何でも彼に合わせようとしますし、まるで、彼の一部になろうとするようなもの。
だから、失恋すると身を切られるような痛みを伴うわけですが、これもやはり、彼を自分と同一化させてますから、一人の人間としては扱っていないのです。
一方、望もうと望むまいと、彼とちょっと距離を置いて付き合ってきた方。失恋と同時に、心理的にぐっと彼の方に心が引き寄せられることもあるんですね。作用・反作用の法則と言いますが、追われると逃げたくなり、逃げると追いたくなる心理と同じですね。
そのままあっさり別れられずに、頭の中で今まで以上に彼のことがぐるぐる回り始めたら、このケースに当てはまると言えるでしょう。
そこで、手放しの一つのアプローチとして、「彼を一人の人間として扱ってあげましょう」という提案をすることがあります。
これは「信頼する」のと同じこと。
「彼のことは心配になってしまうけれど、ひとりの人間として尊重し、認めてあげましょう。彼だって大人なんだから、ちゃんと自分で生き方を選べるはず。今は苦しい選択をしているかもしれないけれど、それもまた彼の望んだ道。それを信頼し、尊重してあげませんか?」
「彼と私は違う人間ですよね。お互いに自分の人生を選ぶ権利もありますし、自分で選ばない人生は、生きてるって実感を伴わないものだと思うんですね。だから、彼のこと、自分のこと、大事にしてあげましょう。彼はちゃんと自分で選べるし、私も自分で選べる、そう思ってみませんか?」
なんて風にお話をして行ったり、手放しのセラピーを作ったりしています。
シンプルに「彼と私は違う人間。彼は彼の人生を自分で選べるし、私も私の人生を自分で選べる」と声に出して言ってみてください。
気分がスーッとしたら、それは手放しが進んでいる証拠。
「いやだいやだ」と駄々を捏ねたり、ちょっと気持ち悪い感じがしたら、まだまだ執着している証拠。
敢えて口癖にしてみてもいいですよ。
今は腑に落ちなくても、ある瞬間、ストンと心の中に落ちていきます。
そうして、彼を一人の人間として認め、手放したとき、ほんとうの意味で彼を尊敬し、信頼し、そして、愛することもできるのかもしれません。
すなわち、手放しというのは「欲」を手放すことなんですね。
お互いを一人の人間として認めるところから、「愛すること」は始まるのかもしれません。
それをまずは自分から。
ぜひ、やってみてください。
もちろん、今パートナーがいらっしゃる方も、ぜひぜひ。