助けを求められずに広がる傷口~自立と信頼について(1)~



ラブ・カウンセリング

「自立」の一つの典型的な現象に“なんでも1人で何とかしようとする”という心理があります。
言い方を変えると“誰にも助けを求めない”ということです。

苦しいときやしんどいとき、それを自分で何とかしなければいけないと思います。
「大人ってそういうものだし」みたいな考えに基づくこともありますが、多くは
「誰かに迷惑をかけたくない」
「相談するとその人に心配をかけてしまう」
「誰かの負担になりたくない」
「その人に申し訳ない」
といった“配慮”が作り出すものが多いのです。


本当に誰にも相談しない、という方もいらっしゃいますが(特に男性に多いですね)、実際は友だちなどに話はするんだけど、でも、“肝心なところは言えない”とか、“話す相手によって内容を選んでしまう”、そして、“本当は結構深刻なんだけど、つい、『大丈夫、大丈夫』と言ってしまう”というパターン、皆さんにはありませんか?

「ほんと、大丈夫、が口癖になってしまっていませんか?」
カウンセリングでよくお伝えするメッセージです。

そうやって誰かを気遣い、配慮することは素晴らしいことですが、それが、自分のキャパ、限界を超えると、逆に自分を追い詰めていくことにお気づきでしょうか。

その境目は大変難しいです。
自分でやるべき領域と、誰かに頼る領域の区別が付かないことも多いです。
そういう方には大雑把に言って「一日悩んで答えが出ないものは、自分の中に答えがないと思って誰かに相談したほうがいいですよ」なんて言っています。

そもそも“悩み”というのは、自分の中に答えがないから悩むものなんですよね。
だから、自分の経験を応用して結論を出すか、もしくは、誰かに相談しながら見つけていく、教えてもらって気付くといったやり方があるんです。

でも、何日も何ヶ月も考え続けてしまうとすると、余程自信があるジャンルで、考えること自体が楽しみでない限り、単なる苦行に他ならないと思うのです。
だから、1日考えて答えが出ない“悩み”は誰かに任せるといいですよ、と思うのです。

でも、誰かの迷惑になる、と思ってしまうと、自分ひとりで抱え込まなければいけなくなります。

その結果、状況がどんどん悪くなることも少なくありません。
というのも、1人で問題を抱えることによって自分自身がどんどんしんどくなるからです。

誰かに相談すると、明確な答えは出てこないかもしれません。
状況の悪化もすぐには止められないかもしれません。
でも、心の負荷は少し軽くなります。

「できるだけ、このことをオープンにしてみてくださいね」

とカウンセリングの中でもアドバイスするのですが、それは1人で持つのはしんどい荷物も、5人10人で分け合えば軽くなるからなんです。

でも、じゃあ、誰に頼りましょう。誰に相談しましょう?

友だち、家族、恩師、先生、カウンセラー・・・。

実はあなたがそこで浮かべた人って、あなたが信頼している相手なんです。

何人もの顔が浮かんだあなたは、とても幸せな方です。それだけ多くの人を信頼できる状況と言うのは、本と大船に乗った気分でいられますよね。

しかし、誰も浮かばない、あるいは、浮かんでも、ちょっと現実に頼ることに抵抗がある、という方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな方がカウンセリング等で自分を掘り下げていくと、1人で頑張っている自分の後ろに誰のことも信頼できない(あてにできない)孤独な自分がいることに気付きます。
辛いことも、しんどいことも、重い荷物も、1人で背負っている自分です。
辛いんだけど、辛いと言えない。
誰かに迷惑をかけられないからグッと我慢する・・・そんな自分の姿です。

そんな自分をイメージしてみてもらえませんか?
すごく苦しそうで、すごく大変で・・・そんな自分を助けてあげたいと、思いませんか?

そこで“選択”なのです。

あなたは、誰を信頼しますか?

あなたは、誰を信頼したいですか?

少し無理やりにでも誰かしら思い浮かべてみるといいでしょう。すごく怖かったり、恥ずかしかったりしたとしても。

さて、その人を信頼するということは、自分ひとりの世界から、その人と共に生きる世界へと広がります。

それもまたものすごく怖いことかもしれません。
人によっては、自分の心臓を半分渡すような感覚に襲われる方もいるんです。その人が裏切ったら、自分も生きていけないような、そんな恐怖心です。

でも、信頼できると、気を使わなくて済むようになります。
申し訳ない、とか、負担になるかも、迷惑かけるかも、という思いは信頼が深まると同時に薄くなっていきます。
そして、「ま、よろしくな!」と任せることができるようになるのです。

では、次回、どうしたら信頼できるのか?について考えていくことにしましょう。

ちょっといいところですが、来週を楽しみにお待ち下さいね。


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