遠距離恋愛の、その後。



ラブ・カウンセリング

「東京に就職した彼と4年間遠距離恋愛をしてたんです。始めのころは月に1回、彼がこっちに戻ってきたり、私が遊びに行ったりしてたんですが、お互い仕事も忙しいし、だんだん会う時間が減ってきたんですよね。でも、いずれは一緒になろうって約束して頑張ってたんですけど、徐々に彼の様子がおかしくなって。そしたらやっぱり『好きな人が出来た、ごめん』って言われて。ショックじゃないって言うと嘘になるんですけど、でも、意外なほどすんなり受け入れられたんです。『やっぱり冷めてたのかなあ』とか『遠距離ってやっぱりダメだなあ』とか冷静に思ったりして。そしたら私、今までもこっそりコンパに行って適当に遊んたんですけど、これからは堂々と彼氏を作れるじゃないですか。それで張り切ってたんですけど、それがなかなかうまく行かないんです。いい人もいるんですけど、なぜか元彼と比べてしまうというか、踏み込めないというか・・・」

遠距離恋愛の終わりって、皆さん、どうされてますか?
徐々にフェードアウトしてしまう場合もあれば、今回のモデルケースみたいに『ごめん』とはっきり振られる(振る)ケースもありますね。

でも、遠恋ってちょっとした後遺症が残ることがありまして、今回はそのお話をさせて頂こうと思うんです。



例えば、東京と大阪で遠恋をしていた場合、お互いメールやスカイプ、電話などで話をすることはあっても、生活の中に相手の存在はあまりないんですよね。
意識とか、気持ちの中では「彼氏アリ」だったとしても、ふだんの日常では「フリー」のような行動になりますよね。

つまり、友だちとふつうにご飯に行ったり、土日は買い物に出かけたり。
コンパがあれば誘われて出かけることもありますし、ちょっとハメを外して朝まで遊ぶ事だってあるかもしれません。

もちろん、「彼氏がいるから」と誘いを断っていたとしても、ふだんの生活の中に「彼氏」の実態は待ち受けくらいにしかないと思うんです。

寂しくない、と言ったら嘘になりますよね。

特に、心が弱ってるとき。会社で嫌な上司にネチネチいじめられたときとか、お母さんと大ゲンカしたときなど。やはり好きな彼氏に真っ先に慰めて元気付けて欲しくないでしょうか?
でも、彼の体は遠くにあるわけです。
電話やメールで愚痴るところで留まってしまうんです。
「今度会った時に、思い切り甘えさせてね」
みたいなことは言えたとしても、『今』ではないんですよね。

反対に、すごく嬉しい事があったとしても、手を取り合って喜ぶ、というのは難しいですよね。

そこは“大人の判断”。そこはグッと押さえて、という風になると思うのです。

そうして、遠恋を続けていくうちに、「彼が近くにいなくても大丈夫な私」が出来上がって行きます。

(そこでもし結婚したり、一緒に住むことになったらどうなる?という話は以前「環境の変化が恋にもたらす影響。 」という記事で紹介しました。)

そんな時に、別れが来たとしたら・・・?

モデルケースのように案外あっさり受け入れられることもありますし、逆に不安や怖れ、今までの我慢が爆発して、いても立ってもいられず彼の元に駆けつけてしまうこともあるでしょう。

どちらのケースにしても新たに「彼氏なし」の生活が始まります。

するとどうでしょう。
日常生活は案外ふつうに送ることができたりするんです。
もちろん、食が細くなったり、未来への不安が募ったり、涙が溢れたり、辛くて寂しくて友だちや姉妹に頼ったりしてしまうこともあるでしょう。

でも、なぜか意外と大丈夫な自分、がいたりします。

「今までだったら私、会社なんてとても行けなかったんです。でも、今回の失恋はむしろ、会社に行くと落ち着くというか、休もうなんて発想なかったんです」

そんな風におっしゃる方もいるんですね。

「彼が近くにいなくても大丈夫」という呪文が自分を守ってくれてるようです。

しかし、その呪文。大きな副作用をもたらしてしまいます。

つまり、「別れをイマイチ実感できない」ということ。

もともと日常生活に彼の影はほぼ無かったわけですから、彼氏と別れる前と後で生活が明確に変わるわけでもないんです。
以前と同様、平日の晩は友だちとご飯に行くし、土日は買い物に行くわけです。
メールや電話をする相手がいなくなって、それは寂しいことではあるけれど、日常生活のほとんどは何も変わりません。
勇気を出して待ち受けを変えたとしたら、それこそ、彼の姿を目にすることもなくなってしまうでしょう。

この傾向は遠恋期間が長くなればなるほど強くなります。

頭では別れを受け入れたとして、心もちょっとそれを感じていて、でも、深いところの感情では、別れを認識しづらい・・・。
それが次の恋へのステップを鈍らせることになります。

言い寄ってきてくれた素敵な人がいて、「今、フリーなんだし、お付き合いしてもいいんだ」と思ったとしても、心の中に「なんか、浮気してるみたい。悪いことしてるみたい」という思いが出てきたりします。

ここでなぜか罪悪感を感じてしまう方、意外と多いようです。
心の中にはまだ「彼氏アリ」になっているのかもしれません。

また、特に寂しがりやさんの場合は「彼氏が近くにいなくても大丈夫」になるために、相当努力をしましたよね。するとその煽りで「彼氏がいなくても大丈夫」になってしまうこともあります。

こういうとき、カウンセリング/セラピーでは、「彼を手放しましょう」と提案します。
でも、頭では「確かに、そうだ。手放さなきゃ」と思うんですが、心の中では別れを受け入れてない分「なんで別れてもいないのに手放さなきゃいけないの?」という抵抗勢力が生まれます。
だから、「手放そう」と思っても、「状態が変わらない」が続くこともあります。

遠恋で我慢した度合いが強い方は、こうした意識(頭)と心(感情)の分離・乖離が生まれるんですね。

「私、彼と別れるまでは男が切れないっていうか、常に彼氏がいたんです。遠距離中だって、ここだけの話し、浮気してたことだってあるんです。でも、今は何だかもう恋愛は十分って気持ちになってしまって。こんな私、ほんと変なんです」
・・・なんてことも、十分ありうるんです。

そこでは、より深いレベルで、別れを受け入れ、彼を手放すことを目標としましょう。

時に「ちゃんと振られるために東京まで彼に会いに行ってきたら?」という提案をすることもあります。別れをはっきり認識するために。

でも、どちらにせよ、即効性は鈍いです。「いない」に慣れすぎてる分だけね。
我慢した度合いだけ心の中に溜まってる感情も大きいわけですから、少しずつ少しずつ手放していきましょう。

あんなことしたかったなあ・・・
こんなことしてあげたかったなあ・・・

そういう思い、きっと心の中にたくさん押し込められてます。
彼と会う、月に一度の2泊3日では満たされきれない思いのすべてがね。

それを掘り出しては手放していきます。
意外にたくさん出てきて「大丈夫だと思ってたのに・・・全然そうじゃなかった」と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら話をされる方もいます。

でも、その分、心の中はきれいに掃除されていくんです。
もともと意識上では執着が少なかっただけに、「知らないうちに」心が軽くなり、「自然と」次の恋に向かえるようになる方が多いです。

ちゃんと幸せにはなれるんですが、遠恋での失恋は、ふつうの失恋より後処理がちょっとややこしい・・・というお話でした。

参考になりましたら幸いです。


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