ハートブレイクが作り出す“近づく怖れ”。



ラブ・カウンセリング

私たちは誰もがお母さんのおなかの中から生まれてきます。
そして、すぐ近くの距離でミルクを飲んだり、オムツを替えてもらったりしながら成長していきます。
その頃、お母さん(もしくは育ての親)との距離は限りなくゼロに近い距離。
赤ちゃんはお母さんの姿が見えなくなれば泣いたりもしますし、ハイハイができるようになればお母さんの後を追ってどこまでも付いていこうとします。

そのお母さんとの距離は成長するたびに徐々に離れていきます。
しつけが始まり、「もうできるでしょ」とか「お姉さんなんだから」とか言われた記憶ありませんでしょうか?
実はそのとき、私たちの心は少し傷ついています。
何か拒絶されたような、突き放されたような感じ。
そして、その痛みを感じたくない分、少し距離を取り始めます。痛みを感じなくて済むところまで。

そうして、心理的に親から離れていき、私たちは自立するわけです。


大人になっても、辛いことが嫌なことがあると、その対象から距離を取りたくなりませんか?
それと同じようなことが子ども時代から心の中では起きているんです。

さて、距離を取って自立していくと、色々と自分でできることは増えるものの、その一方で“孤独感”を感じ始めます。一人でいることに不安になったり、寂しさを感じたり。

でも、今更親には懐けません。拒絶されるような感じもしますし、恥ずかしくて照れますし。だから、今度は親とではなく、友人、そして、異性との距離を縮めるようになっていくんです。
異性との関係・・・すなわち、恋の始まりです。

これが、私たちのおおまかな心理的成長プロセスです。

さて、私たちが恋をするとき、まったくの他人に惹かれ、あるいは、他人から慕われて、お互いの距離が縮まって行きます。

そのとき、心理的に距離が近づくほどに、様々な問題が出てくるようになります。

その問題の多くは、実は過去の古傷が原因。
その古傷とは、両親との関係で傷ついたものであり、その後の恋愛でできた傷なのです。

分かり易さのために例えを一つ。
かつてあなたが親との距離、3メートルのときに酷く拒絶され、心がとても傷ついたとしましょう。(距離は全くの目安、分かり易さのためのものです)
その後、あなたは親から3メートル以上の距離を取るようになりました。

その後、好きな人ができ、お付き合いをすると二人の距離はどんどん縮まって行きました。

そうして、二人の心理的な距離が3メートルに近づいたとき、何か知らないけれど心の傷が疼き始めるんです。そこで生まれるのが“問題”。
例えば、“これ以上近づいて欲しくない”という感情が動いて、「恋の気持ちが急激に冷める」こともありますし、「違う人に目が向く」こともありますし、「不満を感じてケンカが増える」ということもあるんです。

そして、もともとの痛みが強い分だけ、ほんとうに別れてしまうこともあります。

ここで感じているのが二人の距離が近づく恐れです。

もともと、心理的な距離は、パートナーが最も近く、次いで、家族、そして、親友や友人になるにつれて空いていきます。(パートナーは距離ゼロのもっとも近い場所から、まったくの他人の距離までもっとも長い距離を移動することが出来る関係なんですね)

だから、酷い失恋を引きずると「友だち以上恋人未満」な関係になりやすくなりますし、セフレなどの体だけの関係を築き易くなります。
また、更に傷が深まると友だちの距離以上は近づけなくなって、「好きな人にはいつも振り向いてもらえない」とか「好きになることすらあまりない」なんて環境を作り出すようになるんです。

例えば、こういう話を聞いたことがあります。

「付き合って3年。私も30を過ぎていい年になるのに、全然結婚の話をしない彼。業を煮やして『結婚しないの?』と切り出すと、ふだん優しい彼がすごく冷たい顔になって『結婚なんてして何の意味があるの』と吐き捨てられました。その豹変振りがすごく怖くなったのと、なぜ?という思いが渦巻いて何も言えなくなってしまったんです。」

どうしてなんだろう?とあれこれと考えてみました。
彼も30代も後半。結婚を考えない年でもないのに・・・。

すると断片的な情報からあることが分かってきたんです。
元々彼の両親は離婚していました。お父さんの浮気が原因で。そして、女手一つで彼と妹を育ててきたのですが、その間、お母さんはとっても苦労されました。
そして、彼はお母さんを一生懸命手伝ってきたんですね。
で、お母さんは彼を頼るようになりました。そして、相談ごとだけでなく、お父さんの愚痴なんかもたくさんこぼしてたみたい。

そうして、彼の中で「結婚」とか「夫婦」に対する印象、そして、家族に対するイメージがどんどんネガティブなものになっていったわけです。

さらに追い討ちをかけるように、実は彼20代の頃に婚約破棄をされた経験があったそうです。式場も決まっていたところで、先方から一方的に。
その痛みもまた、彼の心に強く残っていたのでしょう。

だから、「恋人」から近い距離に、彼は過剰に反応するようになっていたんです。

因みに、お話してくれた女性。彼のその痛み、つまり、痛みから作る怖れを癒してあげましょう、とカウンセリングを進めて行ったんです。
すなわち、彼を癒せる、彼を助けられる女性になりましょう、と。
実はそういう彼を選ぶ彼女にもある問題があったので、自分を癒しながらのプロセスをなりました。
その結果、周りの人の協力もあって結婚することができ、かわいい赤ちゃんを授かることになりました。

皆さんにとって近づく怖れと恋の関係、参考になりましたでしょうか?


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