相手の気持ちを理解する、ということ。



私たちはつい自分の「基準」で解釈し、態度を決めます。しかし、その基準を手放すと、今までとは違った見方ができるようになるんです。
思春期に母親を失ったご主人のケースを例に、気持ちを理解する、寄り添う意味を考えます。

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いつも根本さんのブログを見て日々自分の心と向き合いながら拝見させて貰っています。
今日はわからないことがありメールしました。結婚して8年、子供が欲しくて話し合っているのですが、旦那は要らないの一点張りで私の意見に耳を貸してくれません。
旦那は家庭環境が悪くもう振り回されて行くのは嫌だといいます。思春期にお母さんが急に出ていってしまい家事やバイトをしてお父さんを助けてあげていたそうです。自分ばかりと責めた言い方をしていました。
でもお母さんを心配する優しさはあるので(冬タイヤが古いから買ってあげたり、お母さんの実家が遠いので出かけると心配しはたり)本当に子供欲しくてない理由は家庭環境のせいなのかな?とただ私に甘える事が出来ないからなのかな?と思ったり。
言ってる事が矛盾していてどう旦那と向き合いながら話し合いをしたらいいのかわからなくなってしまいました。どんな心理状態なのか教えて欲しいのでお願いします。
(Kさん)
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夫婦間でこうしたすれ違いが生まれると人生そのものに影響が出て来るので時にはかなり悩んでしまいますよね。
でも、Kさんのご夫婦は話し合いもできているようで、そこは素晴らしいところだと思います。
ただ、話を聞いていると「矛盾」してるように見えたりしますよね。
家庭・家族に振り回されるのは嫌だと言いながら、お母さんのことを心配する姿を見ると、「ん?ほんとうに家庭環境が原因?」って思ってしまいますよね~。

でも、ここで注意したいのは「矛盾」というのはあくまで「自分基準」ということなのです。
もちろん、その「自分基準」が「周りの人、日本人一般に当てはまること」であるケースもあります。
けれど、それは「彼基準」とは別である可能性がある、ということなのです。
すなわち、彼にとってはそれは「矛盾」ではないのかもしれません。
その視点を持つと、少し彼への見方を変えてあげることができるでしょう。

実はコミュニケーションのすれ違いって、意外と自分が当たり前のように思っている常識が原因であることも多いんですよね。
だから、他人の言動で「それっておかしいんじゃない?」って思った時は、「何が正しいか?私と相手とどっちが正しいのか?」を考えるのではなく、「相手はなぜそうするんだろう?お互いの常識が違うだけ?」と理解しようとする方がお互いの心理的距離を縮めることができるんですね。

さて、そんな彼の心理については「私に甘えることができないからなのかな?」と書いてくださっていましたが、かなり当てはまりそうですね!
ふだんから彼はそんな自立的な態度なのでしょうか?
そこにヒントがあるかもしれませんね。

思春期にお母さんに急に出て行かれてた息子ってどんな気持ちだと思われますか?
不安になったり、寂しくなったりしますよね。
でも、反抗期だったら「かえってせいせいしたわ」と強がるかもしれないですよね。
また、ある程度大きくなってるので自分のことはできますが、生活能力というと厳しいかもしれません。
お母さんのことは恨むでしょうか?

彼の態度を見るとそんな感じはしませんね。
恨んでいたら冬タイヤを買ってあげたりはしませんものね。
だから、お母さんへの愛情はまだまだ強いのかもしれないです。
とすると、お母さんが出て行ってしまったことで彼の中に罪悪感があるのかもしれないですね。
自分のせいでお母さんが出て行ったような、そんな思いが隠れているのかもしれません(本人はおそらく自覚していないんじゃないかと思いますが)。
その思いがあって、今もお母さんのことを心配なさるのかもしれません。

一方で、私たちは辛いことがあるとそこで「時計を止める」ということをします。
お母さんが出て行ったことが辛すぎるとき、彼の中で時計が止まるんです。
もちろん、心のある一部ですけどね。
そして、ずっとその時のままの気持ちを持ち続けるんですね。
思春期の男の子であれば、まだまだお母さんに甘えたい気持ちや葛藤は残っているでしょう。
つまり、思春期でまだ自立し切れていなくて、どこか、お母さんを求めている部分が残っているのでしょうか。

だとすると、彼が子どもを欲しがらない理由も見えて来ませんか。

だから、最後の方に書かれていた「ただ私に甘える事が出来ないからなのかな?」という一言は素晴らしい気付きだと思ったんです。
普段から彼は自立的な態度でKさんに甘えたりしないのでしょうか。

実はまた、もう一つ、そんな彼が怖れていることがあると思うんです。
それはKさんに去られるということ。

思春期に突然お母さんに去られた経験があるわけですから、もう二度とそんな思いはしたくないはずです。
だから、Kさんが去られることは彼にとって何よりも辛いことになるんです。
彼の普段の態度からそういうところって見えてこないでしょうか?

彼のそんな思いが子どもを拒む理由になっている可能性もあるのです。

願わくば、そういう彼の気持ちに寄り添ってあげて欲しいな、と思うのです。
もちろん、余裕のあるときだけで構いません。
Kさん自身の心のケアも大切ですから、無理はしないでくださいね。
余裕のある時に「自分基準」を手放して彼の話に共感してあげるだけで構いません。
1回30分でもいいですよ。彼専属のカウンセラーになったつもりで。
そうすると彼自身の気付きが加速すると同時に、Kさんへの信頼もより強くなると思うのです。

「こいつ、俺のこと、ほんまに好きやねんな。俺からは離れて行かへんのとちゃうかな。」
そんな信頼が築けたとき、きっと子どもを作ることに賛成してくれるようになるでしょう。
今までの経緯がありますから、そんなに時間はかからないと思いますよ。

彼のような痛みを持つ方は、家族を持つことへの抵抗と同時に強い憧れを持つことが多いんです。
彼のその怖れや痛みが解消していけば、とても子煩悩なパパに変身する可能性はものすごく高いと思うんですよね。
そんな希望と夢はぜひ持ってみてくださいね。

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