人との距離感がうまく掴めない時に、無意識は他人に“母”を求めているのかも。



満たされているはずなのに、どこか寂しさ、孤独、不安、不満がある・・・。そんな心理的背景には幼少期に十分に母親からの愛情を受けていない、と思っている自分がいます。
無意識的ではありますが、恋人や友人に「母」を求めてしまっているので、どんなにいい関係を築いていてもどこか隙間を感じるのです。

私たちが人間関係を学ぶのはお母さんから。
子宮の中にいるときからその付き合いは始まり、誕生後も一番近い距離で接します。
だから、そこで「分離」や「拒絶」の体験をしてしまうと、とても大きな痛みを背負います。


さて、幼少期に十分にお母さんに甘えられなかったという体験を持つ方は、大人になってから人との距離感がうまく掴めずに悩むようになります。

※ただし、人との距離感が掴めない人はみんな、お母さんに甘えられなかった、というわけではありません。

ただ、この「甘えられた/甘えられない」というのも一つの感覚。
だから、周りの人から見れば「十分に甘えていた」けれど、自分としては「甘えていない」ということもありえます。

そして、甘えられなかったという経験は「母親探し」という行動に私たちを駆り立てます。
すなわち、心理的に「お母さんからの愛情を求め続ける」ことになるのです。

本当のお母さんからその愛情が欲しいのですが、一番近い距離感であるお母さんとの間に愛情が不足している(と感じている)ため、それ以外の人にまるでお母さんのような愛情を求めてしまいます。

その結果、人との適切な距離感が分からなくなります。

例えば、とても自分のことを愛してくれる恋人に出会ったとしても、その人が自分に与えてくれる愛情ではとても不十分である、と感じます。

また、仲のいい友達が出来たとしても、その関係に少し距離を感じ、寂しさを持ってしまいます。

“大人”としての自分は素敵な恋人で、素晴らしい友人であると認識し、感謝したいと思っているのですが、心が不満を訴えているのです。

そこで、よくよくその不満を見て行くと、恋人や友人に求めている愛情が本来お母さんからもらうべきものだったりするんですね。
恋人や友達をお母さんがわりにしたい自分がいるのです。

例えば、30歳になるAさんはいつもどこかに孤独感を感じていました。恋人ができても、友人とパーティを開いてもどこか満たされない思いが常にありました。
そんな自分のことをおかしいと思い、カウンセリングいらっしゃったのですが、そこからはお母さんから拒否・拒絶をされた過去が浮かび上がってきました。
(お母さんは病気がちで、十分に子どもの面倒を見られなかったのです。)

彼女はお母さんに求める愛情をずーっと探し求めていたので、恋人や友人の距離感では満足できなくなっていたのです。
逆に言えば、それくらい私たちが母親に求める愛情は強い、と言えるのです。

それに気付いたAさんは自分を見つめ直そうとお母さんとの関係に注目していきました。
子ども時代の、とても寂しかった自分、病気で寝ているお母さんをとても心配している自分、何とか一人でも楽しもうと頑張っていた頃の自分に出会っていきます
彼女の中にいる子どもの自分(インナーチャイルド)はいつも寂しそうで、でも、気丈に振舞っていました。
その子に笑顔が取り戻されていくとき、少しずつ周りとの関係性が変わり始めました。

今までも仲のいい友人はいたのですが、彼女たちとの間にあった見えない壁が気付けば無くなっていました。
だから、今まで以上に素直に、自然体で接することができるようになっていました。

また、結婚したい、という気持ちが強くなりました。
今までも「何となく」は思っていたのですが、早く自分の家庭を持ちたいという意欲が高まり、今の彼との関係をより一歩深めるところに意識を向けるようになっていました。

どこか満たされない感覚を持っている場合、もしかしたら、周りの人たちに「お母さん」を求め、期待してしまっているのかもしれません。
それは“大人の意識”からは非常識に見えることなので、まさか自分がそうだとは、とても気付きにくいものなのです。
大人になれば誰しもが「恋人はお母さんではない」「友達のBちゃんはお母さんではない」と認識しているからです。

だから、自分の心と向き合い、「え?恋人(友人)にお母さんを求めてたの!?」ということに気付けば、そこから新たな対処ができるのです。
その多くはAさんみたいに自分で自分を満たしていくことで解決できるでしょう。

そうすることでより他人との適切な距離感が取れるようになるのです。

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