バウンダリー(心の境界線)について。



人との関係性において、人との距離感が分からず、つい入り込み過ぎてしまう、あるいは、距離を置きすぎてしまう、というパターンがある方。もしかしたら、バウンダリー(心の境界線)が分からない、という状態かもしれません。

通常、このバウンダリーは幼少期より、人との関係性の中で培われていきます。

子どもってすごく人との距離が近いんですね。
公園に行けば、順番を待ってる列が非常に密接しているし、水槽を覗く子供たちの密着度も異様に高いんですよね。
しかし、思春期を迎え、「個人」の概念がしっかりしてくると、自然と自分の領域(パーソナルスペース)を持つようになり、人との距離が開いていきます。


そして、気を許した相手、まだ気を許していない相手と付き合い方、距離感が変わっていくのです。
公園では初めて会った子ども同士がすぐに仲良くなって遊び始めるのですが、その親同士がすぐに仲良くなるかというと、そうは限らないですよね。

すなわち、思春期以降、人との距離感を自然と測るようになるのです。
そこでは、近づきたいけど近づけない、近づいて欲しくないけど近づかれた、といった経験が左右しますし、いわゆる「相性」や「気が合う/合わない」も大きな影響を及ぼします。

思春期「個」が明確になっていく(アイデンティティが確立されていく)ので、人との距離感が取れるようになり、バウンダリーが明確になっていく、という感じです。
(気が合う、相性がいい、という感覚も「個」が確立されて来るが故に意識できるものだと思います。)

ところが幼少期から親子関係に問題があったり、小学校時代にいじめにあったり、転校を繰り返していたり、大切な人を失う経験をしたりすると、このバウンダリーが分からなくなることが少なくありません。

例えば、過保護・過干渉や暴言・暴力などがあり、母子癒着状態だった場合。
バウンダリーをどれくらいきちんと設定しようが、お母さんはそこを強行突破して入り込んで来たんですね。そして、内なる世界をあれこれと破壊されたり、指示されたり、コントロールされてきました。
それが当たり前になってしまうと母子癒着状態となり、「自分」を持つことが難しくなります。(アイデンティティの喪失問題)
そして、それくらい近い距離ではバウンダリーは曖昧になり(というよりも存在しなくなり)、相手と自分との心理的区別が付かなくなります(これが癒着の状態です)。
それを他人に投影していくので、人との距離感がうまく掴めず、不用意に入り込み過ぎる(または極端に距離を取る、突然関係性を切ってしまう)状態を作ります。

機能不全家庭だったり、いじめや暴力の問題も、このバウンダリーが持てない状態に相当するケースが多いようです。

一方、転校を繰り返していたり、大切な人を突然失う経験を持つと、逆にバウンダリーが強固になり、人をハートの中に入れにくくなります。
幼少期のハートブレイクがきつくて、人との親密な関係を築きにくくなるのです。
表面的には人当りが良く、親しみやすい人なのに、ぐっと距離が近づくと冷たくなって距離を置かれてしまう・・・そんなパターンを持ちやすいです。
もちろん、人とどう付き合っていいのか分からない、何をしゃべっていいのか分からない、つい冷たく振舞ってしまう、という場合も多いでしょう。
これは大人になって大きなハートブレイクを体験した場合にも生まれることがあります。

ここでは典型的な例を紹介しましたが、みなさんもそういう経験を少なからず持ちませんか?
誰もがこの問題を持つものなんですよね。
逆に、「この人、距離の取り方が難しいな」と感じる人と出会ったことはありませんか?
その人はあなた以上にバウンダリーの問題を抱えているのかもしれません。

カウンセリングやグループセラピーでは、こうした事例を数多く扱います。1日に少なくても1回はこのテーマに触れると言ってもいいくらいですね。
職場の人間関係、友人や恋愛、夫婦、家族の関係性。様々なところにバウンダリーの問題は現れます。

大抵は子供時代の痛みを解放していくことから始め、お母さんや他人との関係で傷があればそれを癒して行くでしょう。
よく書いてるインナーチャイルドセラピーも効果的です。

そうしていくと、きちんとバウンダリーが明確になったり、柔らかくなったりしていきます。
また、グループセラピーではそこで出会った人同士、安全な環境の中で距離感を学んでいくこともできます。
そして、もちろん、最終的には社会の中でその経験を生かしていきます。

人との距離が楽に取れるようになった、とか、親密な友達ができた、とかの変化が出てくれば効果が実感しやすいでしょうね。でも、まずは、人がそんなに怖くないかな?とか、大丈夫な人もいる、という感覚から始まるでしょうか。

今日はインスピレーションに基づいて、ちょっと講座的なことを書いてみました。
参考になりましたら幸いです。
いつもありがとうございます。

心理学ミニ講座


あわせて読みたい