特別意識と、それを癒す承認と感謝の言葉について



誰もが自分を特別扱いしてほしいという願望を持っています。
だからラグジュアリーな空間ではそうした演出をいっぱいしてくれます。
リッツカールトンに行けば、到着するや否や「根本さま、お帰りなさいませ」で始まり、以後、何かと話しかけられるときには「根本さま・・・」です。
それに慣れるまではこそばゆいわけですが、ひとたび馴染んでしまうとある種の快楽で、つい名前を呼んでもらいたくてクラブラウンジをうろうろしてみたりもするのです(笑)

「あなただけに特別に案内します」
などと言われたら心がときめいてしまうように、特別扱いされると「自分は大切にされている」と感じ、自己重要性がとても満たされます。
逆に言えば、それだけ普段は「自分は必要なのかな?いてもいいのかな?」という不安をどこかに抱えている証拠なんですよね。

そして、その感覚が強いと自己主張が始まり、“特別意識”という状態が生まれます。


「私ってすごいでしょ?」
「俺ってこんなことできるんだよ。」

そんな「自慢」もその一つ。
「男って何ですぐに自慢したがるの?」という相談もたびたび受けるんですが、「そりゃあ、自信がないからですよ」と答えるのは、そんなわけからです。

しかし、まだ表面的な自慢は分かりやすいからいいのですが、これが潜在的なレベルになると「なんか嫌な奴」という存在になってしまいます。

明示的に主張してくるわけじゃないんだけど、なんか自分が特別扱いされて当然みたいな雰囲気を醸し出している・・・みたいな。
言葉の端々になんとなしに周りを見下していたり、自分を上げていたり、そんな表現がにじむ・・・みたいな。
周りの人のことを考えている発言をたくさんしてるんだけど、なんとなく最後は自分の利益を考えてる?・・・みたいな。

こういうのって頭のいい人に多いのかもしれないですが、表向き謙虚な分、「あれ?」と思わされることが多いのです。

本人も計算してやってる部分はあると思うのですが、一方で、無意識に出てしまうと自分でもまったく気づきません。

ただ、こういうパターンを持つ方は「なかなか人とうまく付き合えない」「親密な友達関係を作ることが苦手」「なぜか上の立場の人から可愛がられない」「ビジネスでは対等に付き合えてもプライベートでは対等な人がいない」などの状態になるようです。
そして、この問題の厄介なところはそんな状態であることに、本人が気付いていないことも多いってこと。

だから、この手の相談は第三者から寄せられることが多いです。
「うちの夫が・・・」
「僕の彼女が・・・」
「会社になんか苦手な人がいて・・・」
「よく衝突してしまう上司が・・・」
「うちの従業員でちょっと眼障りな・・・」

もちろん、ご本人が「人とうまく行かなくて」と相談にいらっしゃることもあります。
その場合、なぜかなあ?こんなにいい人なのになあ・・・などと思いながら話を伺っていくと、言葉の端々から「あれ?」という発言が出てくるので気付きます。
気付きますが、なかなか指摘しにくい、というのが難しいところですが・・・。

ので、その「特別意識」というところの背景にある「無価値感」とか「望まれていない気持ち」「居場所がない気持ち」の方にフォーカスを当てて行きます。

もちろん、「うちの夫が・・・」と相談に来られた奥さんにも同じ視点で言います。

なぜ、そんなに居場所が無かったの?
それだけ素晴らしいことをしているのに、なぜ、必要とされていないと感じてしまうの?
周りはあなたのことを認めていると思うんだけど、なぜそれを素直に受け取れないの?
そんなに頑張っているのに、なぜ、もっと頑張ろうとしてしまうの?

そうすると思春期に入るころの親子関係や、学校での人間関係などがその背景として浮かび上がってきます。

長男で頑張ってお母さんを支えていた。けど、お母さんは彼に頼っていたけど評価は弟の方が高かった。
精神的に弱いお母さんを支えてきた。しかし、お母さんが彼女を認めることはなかった。
気が付けば学校で一人浮いていることが多かった。友達がいないわけではないけれど、仲のいい友達は出来にくかった。
転校が多かったので表面上友達を作るのは得意だった。でも、どこか心の中に人を入れることは抵抗していたかもしれない。

もちろん、こういう背景があるから特別意識を持つわけではありません。

でも、そうしたちょっと切ない過去が心を占めていることもあります。そして、少しだけ自信があるんですね。
そうすると、今回紹介した「特別意識」な行動を取るようになるのです。

自己評価を高めましょう、とその本人には言います。
自分を褒めてあげること、周りの人の愛をちゃんと受け取ること、自分がやってきたことをちゃんと承認してあげること。

また、感謝して、たくさんほめてあげてください、とその周りの人には言います。
旦那さん、しばし天狗になるかもしれないけれど、それくらいはしゃあないか、と思って褒めてあげてくださいね。
奥さん、絶対受け取らないと思いますけど、気長に「すごいね。ありがとう」って言い続けてください。

承認、感謝の言葉は居場所を作ってくれる言葉です。

よくがんばったね。
よくやってるね。
すごいね。
尊敬するよ。
ありがとう。
いてくれて助かった。

そんな言葉を自分にたくさんかけてあげることで、居場所が作られていきます。

特別意識が強くなっちゃった人は、それだけ孤独や不安や寂しさを抱えています。
その言葉がどれくらいその気持ちを癒すか想像できますか?

でも、そんな言葉、私にだって言って欲しい・・・と思いませんか?僕も大いに思います(笑)

この特別意識、そんな特別なことではなく、誰の心の中にもあるからなんです。

そういう言葉を掛け合う関係性を作りたいですね。
そのためにも、まずは自分から実践してみませんか。

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