休日の夜は究極の一杯を楽しむ。でも、酒の話じゃあ、ありません!!


大阪のカウンセリングルームの近くに、珈琲の名店「ヒロコーヒー」の本店がある。先日オープン30周年を迎えた赤レンガのレトロな“喫茶店”には日時を問わずたくさんの人が訪れている。
この店の周辺の路駐はすべてこの店の客と言え、なぜか高級車が多いのも特長である。

その本店のすぐ近くに、コーヒー豆やらグッズをそろえているギャラリー店がある。
珈琲好きとしては見逃すことができない品揃えであり、ちょくちょく顔を出すうちに、いつしか元気で押しの強い、いかにも大阪のお姉ちゃんというスタッフに顔を覚えられてしまった。


先月、半期に一度の「半額セール」というのを開催していた。
珈琲好きにとっては非常に危険なイベントで、半額という言葉に負けていつも必要以上に買いすぎてしまい、自宅のみならず、カウンセリングルームにもマイ珈琲豆を完備するほどになってしまった。

今期はまだ自宅にもカウンセリングルームにも十分在庫があり、同じ轍を決して踏むまいと、顔を伏せて通り過ぎようとしたら、
「あ、どうも、いつもありがとうございます!!今日、半額ですよ!すごくいい豆入ってるんですよ。いかがですか?」
という例のお姉ちゃんの声が耳に届く。

他人の振りをするまもなく、お姉ちゃんの目はまっすぐ私を見つめており、すでに私が財布を広げたかのような満面の笑みにて店の中に誘おうとしている。

もし、これが梅田のお初天神辺りであれば軽く無視して通り過ぎるのであるが、ここは常日頃お世話になっている店であり、今後とも様々な恩恵を頂くであろう店であって、とても無下にはできない。

そこで、「まあ、少しだけにしよう・・・」と思いながらも入店する。
多くの場合、この妥協が悲劇を招くことは言うまでもない。

そもそもこの店は半額セールの日は店の外までダンボールやら珈琲豆の袋が積み上がっている状態で、販売店というよりは、さながら問屋店の様相を呈しており、入店というよりは買い付けのような気分になってしまう。
もちろん、この高揚感が悲劇を招くことも言うまでもない。

そうすると、そのお姉ちゃん、先ほどと露ほども代わらぬテンションで、
「なんと、今日はすごい豆があるんですよ。コピ・ルアックが2,3年ぶりに入ってきたんです!」
と私に告げるのである。

コピ・ルアック

知ってます?コピ・ルアックって。
原産地はインドネシア。
ジャコーネコが食べ、糞として排泄されたコーヒー豆をきれいに洗浄したグルメな珈琲である。
独特の香りを持つとされ、非常に希少で焙煎にも手間をかけるため、幻の珈琲豆と呼ばれることもあって、とても高価である。
(詳しくはWikipediaなどを参照されたい)

私も名前だけは耳にしたことがあるものの実際に口にしたこともない。
それに私の舌はそんな微妙な味を見分けるほどに優れていないので、今はまだ時期尚早という気がする。

しかし、すでにネギを背負った鴨を捕まえて満面の笑みを湛えるお姉ちゃんは「何グラムにしときます???」と迫ってくる。
断りきれずに「じゃあ、100グラムでいいですよ。持ち合わせないし」と心なし、普段以上の小声で答えると、
「ありがとうございます~~!!いつものようにお挽きしてよろしいですね?」
とレジ向こうの熟練のおばちゃんに合図を送っている。

※セールのとき、この店は戦場の如き忙しさになるので、レジも売り子も豆挽きも袋詰めも百戦錬磨の職人が担当している。

実はこの豆、半額なのに普段定価で購入するオーガニック珈琲の実に4,5倍の値段がする。
思わず気が遠くなったが、お姉ちゃんの押しと好奇心には勝てないものである。

さて、こうした悲劇に巻き込まれた旦那様が一様に体験するように、
「奥さんにどう言い訳しようか・・・」
と思いながら帰宅し、さりげなく冷蔵庫に入れておくと、案の定、「これなあに???」という声がキッチンから響いてくる。

一瞬心臓がドキッとするが、もし、うちの奥さんが珈琲好きでなければ、我が家は凄惨な処刑場となったに違いない。

しかし、幸いにして奥様は「やっぱり鉄瓶で淹れた珈琲は味がいい!美味しい!!」と、違いの分かる女を自認しており、案外あっさりと受け入れてくれたのは幸いである。

むしろ、無駄遣いを指摘されるよりも、私の不在時に100グラムしかない貴重な豆を消費される危険の方が大きかった。

さて、ここまでは先月の話である。

無事、今日まで生き残ってくれた豆を今日は気合を込めて、私なりの最高の飲み方にて淹れることにした。

豆はもちろんコピ・ルアックである。

これを南部鉄瓶にて沸騰させる。
水にも拘りたかったが、思いついたのが夜であったので、浄水器を通した水道水とする。
因みにこうした水も南部鉄瓶はまろやかで飲みやすい美味しい水へと変貌させてくれる。

煮えたぎる南部鉄瓶

これを以前、同じくヒロコーヒーのギャラリーにて、酔った勢いで購入したネルドリップにて淹れる。

秘儀!ネルドリップ

福岡でも東京でもカフェに出向くたびに、ネルに出会い、その味に感動しているので、この流れを引き継いだわけである。

しかし、このネル、とても管理が難しい。(ネル=布製のフィルター)
煮沸消毒してから使用するのは分かるが、その後は、水につけて冷蔵庫にて保存、しかも、その水は使用不使用に関わらず毎日交換しなければならない。

しかし、その分、ネルで淹れた珈琲はとてもまろやかで嫌な苦味がなく、非常に飲みやすく変貌する。

さて、その結果である・・・。

完成!

正直、私の舌はまだ値段分の味覚を見分けるほどには成長していなかった・・・。

が、豆・鉄瓶・ネルのプロセスは非常に珈琲をまろやかに、香り高く、そして、柔らかく仕上げてくれ、何倍でも飲んでしまえる。
普通ならば2、3杯飲めば気持ちも悪くなろうが、3杯飲んでもまだお替りしたくなるほどである。

本当のマニアにとっては、ドリップポットを使う、飲む直前に豆を挽く、など改善の余地を思いつくだろうが、この一杯はなかなか素晴らしい休日の、究極の一杯となったと思う。

こういうちょっとしたところでマニアの如く拘ってみるのはとても面白い。
気分がリフレッシュするだけでなく、また、新しい目標が生まれるのである。

近々再びギャラリーに赴き、例のお姉ちゃんが別の店舗で働いている隙にじっくりと気に入ったポットを吟味することにしよう。

 

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