神楽坂な夜。


ここ新宿区には2つのミシュラン3つ星のお店がある。どちらも神楽坂のお店で、店の前は何回も通ったことがあるが、まだ暖簾はくぐれぬ身分である。
いずれ、舌とタイミングが合った際にカウンターに座れるはずである。

さて、ミシュランガイドには載っていなくても素晴らしい店もたくさんある。
神楽坂はバーだけで7,80軒はあると言われ、ライバルは銀座であるとの言葉に相応しいクオリティと店の規模を誇る街である。
この4月に「きっと根本さんが好きだと思う」との知人の紹介により立ち寄って以来、彼女の予言通りどハマりし、定宿もここに定め、ローリング作戦という品のない戦略によりあちらこちらの店を探検している。

もともとこの街は芸妓さんが行き交う街であったのが、フランス人がたいそう気に入り、それゆえ、フランス/イタリア/スペインなどの店が軒を連ねる大人の飲食街となった。
その分、相対的に和食の店はあまり目立たないのであるが、名店は数知れず存在する。

行きつけのバーのマスターは30代前半という若人ながらカクテルの腕も相当確かな職人である。
その職人が「根本さん、きっとこの店、好きだと思いますよ」とお勧めしてくれた店にようやく来訪することができた。

そもそも非常な寂しがりやである私は意外と一人で街歩きをする機会が少ない。
セミナー後はスタッフを強引に引きずって自らの趣味の店に向かい、予定のない夜は暇そうな友人・知人・取引先を呼び出しては食事を共にする。
この日はたまたま予定がキャンセルとなりぽっかりと空いた日であった。
「珍しいな」と独りごちながら、じゃあ、あの店に行ける、とすぐに予約の電話を入れたのであった。

忘年会シーズン真っ只中のこの時期、しかも、金曜日とあれば人気店はほとんど予約など取れない。
独り身だから有利なはずでも、断られることは覚悟の上である。
「20:30まででしたら大丈夫です」との声に運命を感じたのは言うまでもない。

夕刻までのカウンセリングを終え、近くの銭湯にて東京流の熱いお湯に身を投じた足でその店に向かう。
飲みに出る前に銭湯で身を清めるのは個人的な作法であり、その後の時間を有効に過ごすためのシンプルな手法であると信じている。

出足の遅い神楽坂の街では18時台は大将を独り占めできる貴重な時間帯であった。
カウンターの末席に椅子を確保し、職人から伝え聞いた「お任せ」をオーダーする。
接待や格式ばった食事会でもあるまいに、ここでコースを頼むのは遠回りに違いないと信じる所以である。

大将がお勧めする日本酒を片手に久々に和の魅力を堪能した。
何を食べても、何を飲んでも安心できる上に、カウンターには私一人である。
あれやこれやと話をしつつ、絶品な料理に舌鼓を打つ。

正直、私の舌がこの料理に付いて言っているとは思えない。まだまだ分からないことだらけで勉強中の身である。
しかし、それでいても仕事が確かな料理は歓喜と共に一時の平安を届けてくれる。
昔であったらすっかり緊張して畏まっていた席で、のうのうと手酌をし、あれやこれやと大将と会話を続ける自分はすっかり大人になったもんだと感じ入る。
もっとも年の分だけ恥知らずとなり、料理人からすれば不作法な質問やら受け答えを繰り返しているのであろう。
そんな不躾な話に付き合ってくれる年下の大将は私なんかよりもずっと大人である。
聞けば16の齢から京都で修業を積み、赤坂や銀座の料亭で腕を磨いた本物の職人であった。

酒席のマナーをわきまえない40を過ぎたおっさんは杯も早ければ、食も早い。
約束の時間よりもずっと早く、大将が気持ちを込めた料理を平らげて満足げに店を後にした。
敢えて〆の食事を頼まなかったのは、この後、2軒目、3軒目に向かうことを計算してのことである。
しかし、本物の料理をいただいた後は、仮にまだ腹に余裕があったとしても、その辺の店の扉を開ける勇気を与えてはくれない。
ふらふらと本多横丁を歩きつつ、気持ちのいい酔い加減と満足した腹持ちを携えた私は大人しく宿へと向かうのであった。まだ20時に満たないという、この時間にも関わらず。
これは奇跡であると同時に、正しい大人の遊び方と心得た次第である。

宿に戻り、一息つきながら今日の幸せを振り返ることにした。(それがこのブログである(笑))


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付き出し。子持ち昆布とわさび菜、鮟肝。これだけで酒が進んでしまう。

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赤貝、しめ鯖、平目、のどくろの刺身。確かな仕事を感じられる逸品。

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のどぐろの焼きもの。癖がなく、あっさりとした甘みの肉汁(?)がたまらない。大根おろしが絶妙に旨い。

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兵庫・香住の蟹。なんて細かい仕事・・・。合わせ酢も絶妙で癖がなく、思わず飲み干してしまった。

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筍と蛤のお吸い物。これが濃厚なひやおろしの岐阜・だるま正宗に驚くほどに合う。

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鯛の酒盗。これまた塩加減が絶品。日本酒のための肴。

 

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