趣味。ハシゴ酒。


セミナーで「まあ、7軒ってのが基本でね。あちこちをハシゴするのが楽しいんですよ」なんて言うと、女子が大半を占めるその会場には「えーっ?信じられない!?」という空気が蔓延する。
もちろん、一部の酒をこよなく愛する参加者からはアンケートに「根本さん、ぜひ、それ、企画してください」とメッセージを残される。

以前、妻が久々に会った友人と自宅近くのビストロで店のオープンからクローズまでひたすらワインを飲みながら語らっていたことがあった。それでも「まだしゃべり足りない!」と興奮気味で帰ってきたのであるが、ちょうど同時間帯、我々男子の精鋭部隊は大阪・天満を舞台に7軒ハシゴをしており、その成果を自慢げに語ると「あんたたち、その何しゃべってるの?それが楽しいの?」と聞かれた。

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多くのご同輩が同じようなルールを共有していると思うが、「1軒1品1杯」が基本である。
それでも7軒回れば7杯は飲むことになるわけで、油断にかまけてこのルールを厳守しないと志半ばで朽ち果てることとなる。もちろん、それが悪いわけではなく途中でリタイアしたとしても、それはそれで楽しい酒である。

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1軒1品であるから、我々は本気になる。どうしたってその店の勝負の逸品を試してみたい。
我々は呑み助であると同時に、食い物も決して疎かにしない。
「ここはマグロがうまい。」
「ここではもつ焼きの盛り合わせだけにしとこか」
「ここの天ぷらはマジヤバいらしい」
「刺身がうまいから、盛り合わせもらって出よか」
「ちょっと落ち着きたくなったら、あそこのワインバーに寄ろう」

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そんな会話を店に入った途端に交わされる。
マグロがうまい店に入って絶品の赤身を食いながら、
「次どこ行く?何が食いたい?」
「うーん。俺は串カツかな?お前は?」
「せやな、串カツいいな、あの店いこか」

そしたら、口は串カツモードになる。
急ぎ杯を空にして「ごちそうさま!お愛想!」とカウンターの向こう側に叫ぶ。
そんな飲み方をしてるから2人で1,000円を切ることはざらであり、意外と経済的である。

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店に入ってものの15分で退出することも珍しくないが、お店の人も野暮なことは言わない。
立ち飲み屋などではそれがマナーか?というくらい客の回転は早い。

時には大将みずから「今、何軒目なん?今日は何軒くらい回るの?」って楽しそうに聞いてくれたり、あれやこれやと勧めてくるおばちゃんに「今日はいろいろと回りたいねん」というと「さよか」って言って「じゃあ、これだけ食っとき!」ってその日の一番のおすすめを持ってきてくれたりする。大阪でハシゴ酒をしていると、そんな人情によく出会う気がする。
黙って水を持ってきてくれるおばちゃんもいれば、「あんたらこれ食うた?」ってつまみをちょこっと出してくれる大将もいる。隣の席の人と仲良くなって肴を交換するのはマナーと言っていいくらい日常の光景である。

一杯飲んで店を出るなんて一見せわしないのであるが、たいてい数メートルも歩けば次の店があるし、しばらくぶらぶら歩けば酔い冷ましになるし、案外ハシゴ酒は泥酔しにくいのである(持論)。

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用心深い我々は行きたい店は事前に入念に調べ上げていくことが多い。
私が主催する際は10枚以上(すなわち10軒以上)の店の情報を印刷してきているし、この手の飲みが好きな仲間などは地図に細かい字で行くべき道を記してきていたりする。
その上、店の前に立って店構えを観察すればたいてい間違いはない。

もちろん、そうは言っても稀に外れを引くこともある。
でも、「安心してください。1杯だけですよ。」ということで、すぐに出てしまえばいい。
これもハシゴ酒の利点である。

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私も仲間たちもいい歳をしたオッサンがほとんどなので途中で疲れたら「座ろうか」と椅子のある店に入る。
そう、基本、立ち飲みの店を巡るわけである。
椅子に座ると妙に里心が付いてしまい、杯を重ねてしまうリスクが生まれるからである。

特に朝や昼から飲みに行くときなどは途中で「コーヒー休憩」や「銭湯休憩」、場合には「マッサージ休憩」が入ることもある。

かつてお口直しについスイーツなんぞに手を出したことがある。
腹が膨れてしまい、だいぶ戦意を削がれた。
これはコーヒー休憩の際によく起こるから注意が必要である。

銭湯休憩は泥酔客お断りなんて張り紙があるのだが、当然ながら止められたことはない。
ハシゴ酒愛好家にとってこの銭湯休憩はその後の戦線にバツグンの成果を上げてくれる優れものである。
水風呂があればなお素晴らしく、さらにその銭湯が温泉だった場合などは、それまでの数軒をチャラにしてしまうほどのリセット効果を持ち、のれんをくぐって飲み屋街に舞い戻る頃には心身ともに初期値に戻っているほどである。

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刺身から始まり、焼き物、おでん、天ぷら、串カツ(大阪)/もつ焼き(東京)、ワイン、ウナギなどを1軒1軒回っていくといい感じに出来上がってくる。
刺身、天ぷら、おでんあたりでは日本酒が入るので、その場合はものすごくいい調子になっている。

この辺になると連れの中には「食い物はそろそろいいから落ち着きたいわ」と言い出す奴がいる。もちろん、それが私であることも珍しくないが。

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手ごろな寿司屋があればそこに入り、食いたい奴は握りを、飲みたい奴は酒だけちびちび飲みながら今日の反省会を行う。
「あの店は良かった、めっちゃ当たりだった。」「あの店はがっつり攻めたくなった。」「意外とあの店はいまいちだった。」そんな他愛もない話をしながら、誰かが「そろそろ帰るわ」と言い出す。「そか。また飲もな」とちらほら勝手に家路をたどっていく。残った者でまたもう一軒バーなんぞに繰り出すものよし、「じゃ、解散しよか」って終電を気にしながら帰ってもよし。
男同士の飲みなんてたいていそんないい加減なものである。
翌朝、しっかりしてそうに見えて実は記憶を失っていた連れから「俺、勘定ちゃんと払ったっけ?」というLINEが届く。
こちらもあいまいな記憶をたどり「まあ、ええやん」という返信をし、「そういや、俺は払ったっけ?」と疑心暗鬼になるものである。

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「あんたたち、何しゃべってるわけ?」6時間以上も話し続けて飽きない妻からすれば、1軒30分以内に店を出る我々の行動は理解できないのであろう。
「話をしててもいちいち店を変わってたら話がぶつ切りになって落ち着かないでしょ?」という言い分は言われてみれば良くわかる。

酔客を乗せて自宅に向かう電車の中で「そういや俺ら、今日、何しゃべったっけ?」と振り返る。
酒で朦朧とした脳裏に蘇るのは「次どうする?」「今、いっぱい?3人、入れる?」「大将、今日のおすすめって何?」「お母さん、この大根、めっちゃうまいわ~」「ここめっちゃ当たりだわ~」程度である。
確かに幼子の様子や妻との関係、仕事の順調さなど、本来すべき話題はすっかり飛んでいるのであるが、しかし、我々にとってはむしろこれで十分おしゃべりした気分なのである。

※今回の写真と本文は全然関係ありません。

 

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