札幌のオフ日は市場と温泉を巡る。



札幌のオフ日のレポを書こうと思いながらも1か月も放置していた。
9,10月はイレギュラーな出張やら何やらでなかなかハードだった、と忙しさを言い訳にする人は、何かにつけて忙しさを理由にしていることに気付くべきだろう。そう、私のことだ。

頭の中で文章を組み立てつつも、それをアウトプットする時間と気力がなかった。
それではいけない、と思いつつ、11月からはスケジュールを大幅に見直すこととした。

さて、1か月経っても脳裏にはあの北海道の景色が色鮮やかに甦る。
私はかつて新人研修を終えた着任日にいきなり出張する、という出張生活が義務付けられているようなビジネスマン生活を贈っているのだが、「出張のオフの日にレンタカーを借りる」というイベントは、この札幌出張が初であった。
たいてい地元の友人なり仲間なりに車を出してもらうことが多いし、1人で動くにしても電車、バス、タクシーを利用するものであった。

北海道と言えばレンタカーだろう、という安易な思い付きからホテル近くのレンタカー屋さんに駆け込んだ。北海道だからって馬力のいる車は要らないらしい。ふつうに1000CCのコンパクトカーで十分らしい。

お土産を買おうと二条市場へ行く。レンタカー屋さんで教えてもらった。魚介が安くていいと。
そして、大阪の家に送り返すべく、カニやらイクラやらを買い込む。頭では分かっていたが、イクラが店によって味が違うことをここで初体験した。

いざ、二条市場へ。

いざ、二条市場へ。

ある店で「僕の作ったイクラ、この店で食べられるよ」と細い通路を挟んだ向かいの小さな寿司屋を指さした。朝は食べないのでお腹が空いてるわけではなかったのだが、この素晴らしい提案を断る勇気は持ち合わせていない。

こぼれるイクラ。

こぼれるイクラ。

酒が飲めぬのは残念だが、3席しかないカウンターに座り、握りを頂く。→(結論)人生最高の味。

あまあま甘エビ

あまあま甘エビ

きっと嫁や子どもたち、そして、周りのグルメな仲間たちはきっとこの写真を見たら悶絶して呪いの呪文を唱えるだろう、という自信が芽生える逸品が続々出てくる。

とって返して、勢いでそのおじさんの店でイクラを追加し、ついでに毛ガニまで追加する。
罪悪感の分だけお土産は豪華になるのだ。

肉厚ほたて貝

肉厚ほたて貝

しかし、今日の目的はイクラではない。温泉である。
札幌から定山渓方面に車を進め、一番手前の方にある小金湯にて微かに硫黄の匂いがする柔らかいお湯に身を沈めると今日はもうここで終わってもいい、と言う気持ちにさせられる。

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小金湯

実はこのあと直接、丸駒に行くつもりだった。
しかし、札幌の参加者やフェイスブックの友人たちから「豊平峡はヤバい」と言う声を聞いていた。定山渓の向こうだから距離はある。行かなきゃ損する気になってガバッと風呂を出た。
滞在時間はものの15分程度である。

定山渓に向かう道はとても整備されている。途中からは工事中なのだが交通量も多いのだろう。
そして、さすがは北海道である。車の数が少なくなると自然と速度が上がる。一般道ではあるが、ふつうに80kmとかみんな出している。
だから、山々の美しい稜線や色づき始めた紅葉を眺める余裕もなくあっという間に豊平峡温泉に着いた。

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豊平峡温泉

何だか山小屋である。
「ネパール人が作るカレーが美味しいよ」というわけの分からんアドバイスの意味がものすごく分かってしまうほどに山小屋である。
実際、入口を入るとカレー臭が鼻を突く。食べてみたいが滞在する時間的余裕などないのである。
なんせ、ナビの計算によればここから丸駒温泉までは1時間50分もかかるのだ。その後のルートも考えればここにのんびりしている余裕などない。

しかし、この温泉は素晴らしかった。
何が素晴らしいかって、山小屋を延々進んだ先にあるお風呂は湯船から溢れた湯の花が固まっていて歩くだけで足の裏が痛い。
源泉を樋を通して自然と温度を下げるので、源泉に近い湯は熱く、遠いところはぬるい。
このぬるい源泉などいくらでも入っていられるくらいの快適なお湯である。
露天風呂は無駄にでかい。もちろん、豊かな源泉があってことなのだが、こちらも熱め、ぬるめの2パターンが用意されている。
外は風が吹き荒れており、ぼーっと目を瞑っていると突然落ち葉に頬をはたかれるオプションまで付いている。
ここもまた朝からじっくり浸かりたい湯であった。
なんせ、1時間50分もかかるのである、早々に湯船を出て車に向かう。

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落ち葉が降り注ぐ道をドライブ

丸駒温泉までの道のりは一旦、札幌市街に近いところまで戻ってからVターンして、国道453号線を南下する。
しかし、この453号線沿いは紅葉が始まり、落ち葉をかき分け、高原のような白樺の林を見ながらのドライブである。
軽井沢で見た木々がここに超拡大版で存在してた。
しばらく走って気付いたことがある。それは同じ方向に向かって走る車が1台も見えないのである。
対抗車はたまに来る。といっても全部で4,5台程度だが。
しかし、追いついて来る車も、追いつく車もない道をひたすら30分以上走り続けたのである。
もちろん、道脇にお店はもちろん、民家もない。これぞ北海道!などと思っていたら、あっという間に道路のドン突きにある丸駒温泉についた。

ナビは1時間50分かかると言っていた。何かの間違いだろうか。丸駒に着いたとき、まだ50分も経っていなかった。
かつての経験を重ね合わせると、ナビが1時間50分と言った場合、1時間半程度に縮まることはあっても、半分以下になることはなかった。

次は空港なので、レンタカー屋さんまでの時間を調べると1時間20分と出る。
もし、その時間が本当ならばこの温泉には30分もいられない。しかし、もし、ここまでの道のり同様、ナビの半分で到着するなら1時間はゆっくり浸かれる。この先の道はけっこう街だから多少は時間がかかるかも・・・いや、ここは北海道だし、、、そんな想像を巡らせながら「日本秘湯を守る会」の提灯がぶら下がる温泉宿に足を踏み入れた。

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丸駒温泉

まさに秘境である。ここより先は建物どころか道がない。隣の家ははるかに先。
ここは内風呂も露天風呂も素晴らしい。支笏湖に面しているため、湖を眺めながらというよりも、湖と一体になりながらお湯に浸かることができる。
しかし、そのさらに奥にはこれぞ秘湯と言われるお湯が沸いている
たいへん珍しい足元湧き出し泉なのである。お風呂の水位は支笏湖の水位と連動しており、湧き出し、溢れたお湯は速やかに支笏湖に流れ込む仕組みである。そう、湖とリアルにつながっている温泉なのである。
感動した。誰もいないことをいいことに、天然の温水プールで泳いでも見た。支笏湖の寄せて返す波の音を聴きながら、本当に旅人になった気分になった。なんせ、湖の向こうにそびえる山の稜線はなかなか見ることのないシルエットをしている。

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紅葉が始まっていた丸駒温泉の庭。

風呂上りのひと時をアイスを食べながら眺めると、美しい庭の木々は紅葉を始めていた。
9月の下旬。大阪では涼しくなったとはいえ、夏日を記録していたこの日、支笏湖の最高気温は16℃であった。
外気は今シーズン初めて「涼しい」と感じるものであり、雨上がりの支笏湖には大きな虹がかかっていた。

大事を取り、早めに車に乗り込んで千歳空港に向かう。
14:30に着けば余裕と思いながら、どこで寿司を食い、何の土産を買おうか想像を膨らませてまっすぐの道を快適に走っていたら13:30に着いてしまった。北海道ではナビの時間計算は信じない方がいいらしい。

それにしても北海道はあれこれと心を広げる体験をさせてくれた。
ニシンやホッケの刺身、ホッケフライ始め、内地では食べられないものをたくさん頂いた。
素敵な出会いも多く、頻繁に通いたい衝動に駆られた。
そんな私に向かって「冬は寒いし、雪多いし、飛行機が飛ばないこともあるから雪が溶けた4月や桜の咲く5月がいいですよ」と提案してくれる奥深さにも感動した。
次はゴールデンウイーク明けに再訪する。スケジュール帳にはもう書き込んだ。


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